「能力減点法」と目的の接合で拓く、ゆとりある経営の未来

黒田 周兵

黒田 周兵

column_Kuroda Shyubei

ダンサーから転身し、マーケティングの世界で累計80億円以上の売上実績を築き上げてきた株式会社Black Trick代表の黒田周兵(くろだ しゅうべい)さん。数々の挫折を乗り越えて掴んだ本質的な経営観と、AI文明時代において心と時間に「ゆとり」を持つ事業戦略についてお話を伺いました。

どん底の挫折と恩師から学んだ「本物の経営」

私の原点はダンサーとしての活動にあります。有名アーティストのバックダンサーを務め、事務所のトップ2に上り詰めてミュージカルの主役も経験しましたが、当時の年収はわずか20万円でした。父の強い反対もあって芸能界を離れ、リラクゼーション店でセラピストとして働き始めたものの、当時は「月収」と「月商」の違いすら分かっていない状態でした。10時間店舗に待機しても集客が不安定で、過酷な重労働に対して年収は200万〜300万円にとどまり、将来への強い不安から独学でビジネスやマーケティングを学び始めました。

23歳から本格的に学びを深め、2013年に立ち上げたスクール事業ではFacebookマーケティングを駆使して翌年には年収1,200万円を達成しました。その後、縁あって化粧品や健康商品の営業に飛び込み、トップの成績を収めたことを機にマーケティングを任されることになります。広告予算50万円を投じて無料のアフィリエイトスクールを開講したところ、200人の受講生が集まり、そこから口コミとWeb販売の輪が拡大していきました。結果として2017年には1万人規模の組織へと成長し、3年累計で20億円を売り上げる実績を作ることができました。

しかし、急成長の絶頂期に大きな試練が訪れます。共同創業者に全財産を持ち逃げされ、そのわずか10日後に父が心筋梗塞で急逝したのです。資金も住まいも家族も一瞬で失い、心身ともに限界を迎えた私は実家で半年間の療養生活を余儀なくされました。

そんな絶望の淵から立ち上がるきっかけをくれたのは、信頼する先輩からの「才能はあるが人脈が悪かった」という率直な指摘と、東証一部上場企業の会長との出会いでした。会長のもとで新規事業の相談役を務めながら、半年間にわたって徹底的に事業の教えを受けました。「マーケティングは上手いが経営が甘い」「ザルなマネタイズでは一時的に稼げても長続きしない」と、痛烈なフィードバックをいただきながら長期的に生き残る本物の経営観を叩き込まれたことが、現在の私の礎となっています。

逆算思考の「能力減点法」と共通点を接合するアライアンス

見出し1画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_黒田周兵_逆転思想

大きな挫折を乗り越えて立ち上げたのが、株式会社Black Trickです。SNS上での安易な情報や詐欺まがいの手法に惑わされず、やる気のある人が空回りしない環境を作りたいという思いから、マーケティングや経営学の本質、そしてAIを活用した資産構築の思考法を伝えています。

私が事業をスピーディーに形にする際、常にベースとしているのが「能力減点法」という独自のアプローチです。これは、目指す目標に対して必要な合格基準値を最初から「成績表」のように可視化し、不足している要素を逆算して特定していく思考法です。

たとえばプロダンサーを目指すなら「最低限ターンが2周できること」「体幹の軸がブレないこと」といった必須の合格ラインが存在します。ビジネスも同様で、目標とする年商規模や事業モデルに必要なスキルセットを先に洗い出し、現在の自分に足りない科目を冷静に見極めます。自分で伸ばせる部分は一気に集中して習得し、苦手な分野や時間のかかる要素は得意な人へ任せる。東大受験は一人で挑まなければなりませんが、ビジネスや自己実現はチームプレイで勝ってよい世界です。根性論に頼るのではなく、必要な基準を満たすための合理的な選択を積み重ねています。

また、周囲を巻き込んで事業を加速させるためには、相手の進みたい方向と自分が進みたい方向の共通点を強制的に見出して接合する「アライアンス思考」を徹底しています。相手のビジョンが実現することが、結果として自分の利益や自由な時間の創出にもつながる設計を組む。相手の成長ステージに合わせて役割を渡し合い、互いの強みを掛け合わせることで、一人では到達できないスピードと規模で価値を生み出し続けています。

AI文明の波に乗り、心とお金にゆとりある経営者を増やす

見出し2画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_黒田周兵_ゆとりのある経営者

これからの時代を見据えたとき、日本全体が「AI文明」の大きな波に乗り遅れないことが極めて重要だと考えています。かつてのIT化の波で生じた遅れを繰り返さず、特に中小企業や個人事業主こそがAIという強力なレバレッジを味方につけるべきです。

私が目指しているのは、心とお金の両面に「ゆとり」を持つ経営者を増やすことです。多くの個人事業主や経営者が、毎日アポイントに追われ、自らの身体を動かし続ける労働集約型の働き方から抜け出せずにいます。しかし、本来の経営とは目の前の作業に忙殺されることではなく、先を見据えて思考を深め、仕組みを育てることにあります。

AIをはじめとするテクノロジーを活用して業務や資産形成を仕組み化できれば、無駄な労働から解放され、思考と判断のための十分な余白が生まれます。この数年間は、テクノロジーを味方につけて一気に飛躍できる大きな変革期です。机上の空論ではなく、本質的な経営力とツールの力を融合させ、時間にも心にもゆとりのある豊かな事業者を一人でも多く輩出していきます。