毎月のように「出資してください」と言われる資産型経営者が教える、本当は怖い出資の話

資産型経営やAI資産型経営を提唱する黒田周兵(くろだ しゅうべい)さんは、無借金・無料集客を中心に累計80億円規模の売上構築に携わってきました。株式会社Black Trick会長兼相談役として、日々複数の事業者から資金や経営参加を含む出資の相談を受けているといいます。今回は、「出資してください」という言葉の裏にある本当の意味と、出資を受ける前に経営者が理解しておくべきことについて綴っていただきました。
「出資してください」の裏にあるもう一つの要求

「私たちの事業へ出資してください」
「資金だけでなく、事業のリーダーにもなってください」
この二つを同時に言われたとき、僕は思いました。
それは、お金を払わせながら働かせるということではないか。
もちろん、出資者が経営へ参加するケースはあります。
投資家が株主として助言したり、取締役として経営に関与したり、営業先や提携先を紹介したりすることもあります。
しかし、それは出資者が自分の意思で、リターンを見込んで経営へ参加する話です。
資金を出してもらい、さらに営業、企画、開発、組織づくりまで任せようとするなら、出資を受ける側は一体何を担うのでしょうか。
最近は、「出資」という言葉が、あまりにも軽く使われているように感じます。
出資を、
- 返済しなくてよいお金
- 夢を応援してもらう制度
- お金持ちから受け取る支援金
- 自分たちが活動を続けるためのお小遣い
のように捉えている人もいます。
しかし、出資は寄付でも融資でもありません。
出資とは、会社や事業の将来価値を差し出す代わりに、資金や資産を受け取る行為です。
そして多くの場合、株式を渡すことは、利益を受け取る権利だけでなく、会社の重要な意思決定へ関与する議決権を渡すことにもつながります。株式会社では、原則として保有株式数に応じて株主総会の議決権や配当を受ける権利が与えられます。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
出資は「返さなくてよい借金」ではない

融資と出資には、明確な違いがあります。
融資は、借りたお金を利息とともに返済する資金調達です。
一方、株式による出資は、原則として会社が出資金を返済する必要はありません。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
この部分だけを見ると、出資の方が魅力的に見えます。
返済がない。
毎月の資金繰りが楽になる。
事業が失敗しても、借金として残らない。
しかし、返済しなくてよい代わりに、株式を渡します。
株式とは、会社の一部です。
将来、会社が10億円、100億円の価値になったときも、その一部は出資者のものになります。
さらに、持株比率や契約内容によっては、経営者が重要事項を自分だけで決められなくなる可能性があります。
出資を受けるということは、単に銀行口座へお金が入ることではありません。
将来の利益と、経営の意思決定権の一部を、現在のお金と交換する行為です。
中小企業支援機関の解説でも、出資を受ける場合は株式価額や企業価値を検討し、意思決定権や利益分配を受ける権利の一部を差し出す点を理解する必要があるとされています。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
融資を受けられないから、出資を求めるのか

僕自身、毎月のように「出資してほしい」と相談されます。
しかし、多くの場合、ビジョンはあっても、実現するための計画がありません。
誰の、どのような問題を解決するのか。
市場規模はどれくらいあるのか。
競合と何が違うのか。
なぜ顧客が購入するのか。
いくら使い、いつまでに、どの程度の売上をつくるのか。
資金が尽きた場合はどうするのか。
こうした問いへの答えがないまま、
「世の中を変えたい」
「この事業には可能性がある」
「お金さえあれば成功できる」
と話します。
僕が厳しいと感じるのは、事業の可能性がまだ証明されていないことではありません。
新規事業に不確実性があるのは当然です。
問題は、不確実性を減らす努力をしていないことです。
顧客へ聞いていない。
小さく販売していない。
競合を調べていない。
収支計画をつくっていない。
融資へ申し込むための事業計画すら整理していない。
それでも活動を続けるためのお金は欲しい。
さらに、返済義務は負いたくない。
その結果として「出資してください」という言葉が出てくるのであれば、それは資金調達というより、
事業のリスクを他人へ移し、自分は活動を続けたい
という相談に近くなります。
金融機関の融資審査では、返済能力だけでなく、事業の収益性や事業計画も重視されます。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
融資を受けられなかったことだけで、事業に価値がないとは言えません。
銀行融資には向かないものの、急成長の可能性がある事業もあります。出資は、銀行が融資しにくいハイリスクな企業へ資金を入れ、その分、大きなリターンを狙う仕組みでもあります。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
ただし、融資にも通らず、売上もなく、顧客からの反応もなく、実現計画もないのであれば、出資者は何を根拠に投資判断をすればよいのでしょうか。
「出資してください」は、経営権を渡す提案でもある

出資を求める人の中には、
「お金だけ出してください。事業内容には口を出さないでください」
と考えている人もいます。
しかし、これは出資者側から見ると不自然です。
出資者は、貸付金のように元本が返ってくる保証を持ちません。
事業が失敗すれば、出資した資金を失う可能性があります。
だからこそ、株式を持ち、会社の重要事項へ意見を述べたり、経営状況を確認したりします。
株主が持つ代表的な権利の一つが、経営の意思決定へ関与する議決権です。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
もちろん、出資を受けた瞬間に必ず会社を乗っ取られるわけではありません。
経営への影響は、
- 何%の株式を渡すか
- 議決権の有無
- 種類株式の内容
- 取締役を指名できるか
- 株主間契約
- 重要事項の承認条件
によって変わります。
それでも、普通株式を渡すのであれば、少なくとも会社の所有権と意思決定権の一部を渡しているという認識は必要です。
出資を受けるとは、
お金をもらうことではなく、会社を分けることです。
返済不要という言葉だけを見て、将来の会社価値や経営権を安く渡してしまえば、事業が成功した後に後悔します。
逆に、出資者へ何の権限も与えず、利益も期待できず、経営情報も開示しないのであれば、出資者側が投資する理由がありません。
お金を出し、経営し、働くなら、誰の事業なのか

僕が最も違和感を覚えるのは、
「出資してください」
「経営も教えてください」
「営業も手伝ってください」
「事業のリーダーもしてください」
「開発もしてください」
と、すべてを同じ人へ求めるケースです。
資金を出す。
事業計画をつくる。
商品をつくる。
顧客を集める。
チームを動かす。
そのすべてを出資者が行うのであれば、事業を持ち込んだ人の役割は何でしょうか。
アイデアを思いついたことだけで、会社の大半を保有し続けるのでしょうか。
事業は、アイデアだけでは成立しません。
市場調査、商品設計、資金調達、開発、営業、採用、契約、顧客対応、改善を積み重ねて初めて形になります。
だから僕は、「出資して、リーダーもしてください」と言われたとき、
それなら僕が自分で事業をつくった方が早い
と考えます。
出資者に労働や経営参加を求めること自体が悪いわけではありません。
事業会社や投資家が、資金だけでなく、知識、営業網、人材、信用を提供することもあります。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
ただし、その場合は、出資者を単なる支援者ではなく、共同創業者や経営パートナーとして扱う必要があります。
株式比率、報酬、役割、権限、知的財産、撤退条件まで、相応の条件を提示するべきです。
僕にとって「出資してください」は危険信号である
僕は時々、
「出資してください」という言葉は、国からも運からも見放されました、という宣言に聞こえる
と表現します。
かなり強い言葉です。
もちろん、すべての出資希望者に当てはまるわけではありません。
出資によって世界的な企業へ成長した会社は数多くあります。
本来の出資は、優れた事業へ資金を集中させ、成長速度を高めるための仕組みです。
僕が問題視しているのは、
- 顧客から選ばれていない
- 金融機関からも評価されていない
- 自己資金も投入していない
- 事業計画もない
- 検証もしていない
- それでも活動費だけは欲しい
という状態で使われる「出資してください」です。
顧客からお金をもらえない。
金融機関から融資を受けられない。
自分でもリスクを負いたくない。
それでも他人にはリスクを負ってほしい。
この状態なら、出資を求める前に、事業そのものを見直すべきです。
本当に出資を受けたいなら、最低限示すべきもの
出資者が見ているのは、夢の大きさだけではありません。
少なくとも、次の内容を説明する必要があります。
顧客
誰が、何に困っているのか。
解決策
なぜ、その商品やサービスで解決できるのか。
市場
十分な需要があるのか。
優位性
既存の商品ではなく、自社が選ばれる理由は何か。
実績
顧客の反応、予約、売上、利用者数など、どの程度の検証が済んでいるか。
収益構造
どこで売上が発生し、どの程度の利益が残るか。
資金使途
集めたお金を何に使い、どの成果をつくるか。
経営体制
誰が、何を担当し、最後まで責任を持つか。
出資者のリターン
株式、配当、売却益など、何を期待できるのか。
経営権
株式と議決権をどの程度渡すのか。
公的な起業支援情報でも、出資を受ける場合は融資以上に事業計画書の作り込みが重要とされています。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
出資者は、困っている人を救済するためだけにお金を出すわけではありません。
将来、お金や社会的価値が増える可能性があるから、現在の資金を投じます。
出資を受ける前に、まず自分が出資しているか

僕が出資相談を受けるときに確認したいのは、
あなた自身は、その事業へ何を出資したのか
ということです。
現金。
時間。
技術。
顧客。
営業力。
知的財産。
信用。
退路を断つ必要はありません。
ただし、自分はほとんどリスクを負わず、他人のお金だけで夢を実現しようとする姿勢では、信頼を得にくいでしょう。
出資とは、誰かから返済不要のお金を受け取る制度ではありません。
事業の将来を共同で所有し、リスクとリターンを分け合う契約です。
そのため、出資者に対して、
「お金をください」
「口は出さないでください」
「経営は手伝ってください」
を同時に求めることはできません。
出資は、成功したときに最も重くなる

融資は、返済が終われば関係も一区切りつきます。
しかし、株式は、会社が成長するほど価値が上がります。
創業時に資金が苦しかったため、安い評価額で大きな株式比率を渡した。
その後、会社が大きくなり、経営者自身の持株比率が小さくなった。
新しい投資判断をするたびに、株主の同意が必要になった。
出資の怖さは、失敗したときだけではありません。
成功したときに、渡したものの大きさへ気づくことです。
だからこそ、出資を受ける前に、
- 本当に今、出資が必要なのか
- 融資ではいけないのか
- 売上から成長できないのか
- 小さく検証できないのか
- どれだけの株式を渡すのか
- その相手と長期間仕事ができるのか
を考える必要があります。
出資は、苦しい会社を延命するためのお小遣いではありません。
成功する可能性のある事業を、より大きく、より速く成長させるための資本です。
そして、その資本を受け取る代わりに、経営者は会社の未来の一部を差し出します。
「出資してください」と言う前に、自分が何を求め、何を渡すのかを理解する。
それが、本来の出資の出発点だと僕は考えています。
著者プロフィール案
黒田周兵(くろだ・しゅうべい)
資産型経営・AI資産型経営の提唱者。株式会社Black Trick会長兼相談役、作家、マーケター。
無借金・無料集客を中心に累計80億円規模の売上構築に携わり、現在はAI、アプリ、コンテンツ、ブランド、営業導線、顧客データなど、会社に残る経営資産を形成する事業モデルを研究・実践している。
複数の事業者から資金・開発・経営参加を含む出資相談を受ける中で、出資と融資、共同経営、無償支援が混同されている現状に問題意識を持つ。