Claude Codeが広げる経営者の「考える時間」格差

株式会社コミクス

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2026.11.05
column_COMIX Inc

「忙しい」と言わなくなって8カ月。株式会社コミクス代表・鈴木章裕(すずき あきひろ)さんは、自分の時間の67%が「鈴木でなくてもできる作業」だと知り、Claude Codeで年間660時間を取り戻した。考える時間の差は、なぜ指数関数的に広がるのか。

時間の67%は「僕でなくていい」

見出し1画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_株式会社コミクス_ぼくでなくていい

「忙しい」という言葉を使わなくなって、もう8カ月になる。

以前の僕は毎日「忙しい」と言っていた。朝イチからメール対応、合間に提案書のチェック、午後に商談2本、夜に議事録整理。気づけば22時。「戦略を考える時間が足りない」と思いながら、何も変えられなかった。

変わり始めたのは、雑務の総量を計測してからだ。ある週、自分が1週間でやったことを、作業名と所要時間だけ書き出してみた。難しいことは何もしていない。それでも、出てきた数字に驚いた。「鈴木でなくてもできること」が全体の67%を占めていたのだ。僕の時間の3分の2が、代替可能な作業に使われていた。「鈴木だからこそやる意味がある仕事」は、33%しかなかった。

毎日22時まで働いて、本当に自分がやるべき仕事は3分の1。残りは、別の誰か、または別の何かが担える可能性があった。

同じころ、経営者仲間を見ていて気づいたことがある。Claude Codeを使い込んでいる人は「最近、考える時間が増えた」と言い、使っていない人は「最近、余裕がなくて」と言う。ある会食で同業の経営者に「戦略を考える時間が増えた」と話したら、怪訝な顔をされた。「うちは社員10人いるけど、僕が全部見ないといけない。AIを入れる余裕はないよ」。

このセリフは痛いほどわかる。1年前の僕も同じだった。だが「余裕がないからAIを入れられない」は、「お金がないから投資できない」と同じ構造の罠だ。余裕を待っていたら、永遠に余裕は来ない。余裕は、仕組みが作る。

年間660時間をスキル化する

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最初に手をつけたのは「時間泥棒」のリストアップだった。1週間分のカレンダーと作業ログを並べ、「これは本当に僕がやる必要があるか」を一つひとつ問い直した。

提案書の初稿作成が週3〜4時間、クライアントへのメール返信の下書きが週2〜3時間、商談後の議事録整理が週2時間、月次支援レポートのフォーマット合わせが月4時間、採用書類の初期スクリーニングが月3時間。合計すると月に約55時間、年間660時間が「こなす作業」に消えていた。平日250日として、1日2.6時間である。

上位3つ、提案書初稿、メール返信ドラフト、議事録整理をClaude Codeのスキルにした。提案書スキルには「相手の課題感を相手の言葉で冒頭に置く」「効果は数字付きで示す」「1センテンス40字以内」「『豊富な』などの曖昧語は禁止」といったルールまで書き込んだ。最初の版は「鈴木らしくない」部分が多かったが、週2回ペースで修正を重ね、3週間で90点の初稿が出るようになった。

メール返信スキルでは、過去2年分の送信メール約1,000通をClaude Codeに読ませ、「この人の文体的特徴を10項目にまとめて」と頼んだ。「冒頭に必ず相手の状況への言及を入れる」「数字は必ず具体的にする」「謝罪メールは謝罪、原因、対応策の3段構成」。自分でも気づいていなかった癖が言語化されて出てきた。

ただし、ここで終わってはいけない。660時間が返ってくるのではなく、「660時間をどう使うか」という問いが生まれるだけだからだ。時間の空白は、意図しなければまた別の雑務で埋まる。だから僕は、解放される時間の使い道を先に決め、カレンダーにブロックした。火曜午前2時間の「経営思考タイム」、第3金曜午後の「競合・市場分析タイム」、月・木夕方30分の「スタッフとの1on1」。この8カ月、この枠を別の作業に使ったことは一度もない。

差はなぜ指数関数的に広がるか

見出し3画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_株式会社コミクス_差はなぜ広がる

思考タイムを始めた最初の1カ月は、正直「何を考えればいいか」がわからなかった。頭がまだ「こなすモード」から抜けていなかったのだ。そこで、商談状況、業界の動き、社内の課題、中期目標との乖離を渡し、「今週考えるべきテーマを3つ、理由を1行添えて出して」と頼むプロンプトを作った。テーマ設定から入るだけで、思考の質は大きく変わった。

さらに、自分の考えを200字で書いて「私が見落としている視点から、反論を3つ出して」と投げる。一人で広げ、AIとの対話で検証する。この往復が、判断の精度を上げてくれた。

変化は数字にも出た。「今日中に決めないと」と情報不足のまま判断することが週3〜4回あったのが、「来週の思考タイムまで保留する」という選択肢を持てるようになり、焦りによる誤判断はほぼゼロになった。2年以上「やりたいが時間がない」と止まっていた新規サービスも、2025年秋に着想から4カ月で立ち上げた。スタッフとの1on1が週2回30分で安定し、問題の早期発見もできるようになった。

では、なぜ差が指数関数的なのか。雑務を渡した経営者は戦略思考の時間が増え、意思決定の精度が上がり、成長速度が上がる。速度が上がればより良い機会が見え、また戦略を考える必要が生まれる。これが一つ目の複利だ。もうひとつ、スキル自体が使うほど育つという複利がある。スキルを使っていない経営者は毎回ゼロから考え、使っている経営者は毎回「前回より良い状態」から考える。1年後に10%、3年後に30〜40%、5年後には50%以上の差になりうる。

怖いのは、「今日は差がついていない」と思っている間に、差が静かに積み上がっていることだ。見えたときには、取り戻しにくい規模になっている。

必要なのはエンジニアリングの知識ではなく、自分の仕事を言語化しようとする意志だけだ。最初の1カ月は、たった一つのスキルでいい。まずは今日、10分だけ時間をとって、自分の「時間泥棒リスト」を書き出してほしい。それが、差が生まれる起点になる。

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