教育やソーシャルビジネスを通じて希望を与える「世界ヒーロー」の活動の源泉とは

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト

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NPO法人なかよし学園プロジェクトは、途上国の教育支援活動を行いながら、日本で生み出されたモノを世界に教材として届け、日本の学校と繋げる「世界とつながる学びプロジェクト」をはじめとするあらゆる教育支援活動をおこなっています。代表の中村雄一(なかむら ゆういち)さんに、プロジェクトを始めたきっかけやプロジェクトへの熱い想いを語っていただきました。

やろうと思えば教科書に載っている人に出逢うこともできる

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_なかよし学園プロジェクト_教科書に載っている人

私の職業としては、「全教科を教える教師」をしています。最初に勤めたのが、学校をドロップアウトした子たちがくるような通信制高校でした。通信制高校にはいじめた側の子やいじめられた側の子、鑑別所や少年院、心療内科に通っているような子どもたちもいて、9時〜17時の勤務でそのような子たちを社会に戻そうと指導しました。

他の時間で予備校や家庭教師で東大や早稲田といった大学志望の子を教えたりしていたのですが、この偏差値をつける指導を通信制高校のほうでやってみたところ、少年院出身の子が青学に受かったのです。

そこで、子どもたちの教育は子どもたち本人にも原因がありますが、半分は先生の教え方が原因なのでは、と思いました。この子たちに面白く教えられたら変わるのではないか、といろいろ教えてみたら、勉強が面白くなって大学に行きたいと思う子が増えたのです。

なかよし学園プロジェクトは、東日本大震災をきっかけに「勉強をできない環境にいる勉強したい子たちを教えたい」と思って始めたプロジェクトです。プロジェクトで最初に訪れたのがカンボジアでした。

カンボジアは戦争の影響で地雷が多く埋められていて、現地で本物を自分の目で見たうえで地雷について日本で教えたいと言ったら、現地でも「授業してほしい」と頼まれるようになりました。その後、日本の英語の教科書で紹介していた、一人で5万個の地雷除去活動をおこなっているアキ・ラーと知り合い、彼の家に泊めてもらって一緒に地雷の除去活動をしたりするようになったのです。

テレビで見るような有名人にはこれまでも会っているのですが、教科書に載っている人として教えていた人間に会えることってすごい!と思いました。やろうと思ったらできるんだ、と思えたのが、今の活動の原点ですね。

カンボジアを含め、世界10カ国で活動する中で、死にかけたことも何回かありますが、そのすべてをネタにするのも僕の可愛いところ(笑)。必ず仲間が傍にいて、助けてくれたりしたおかげで生き延びています。なぜ助けてもらえるのかというと、僕がその国の子供たちに教えているから。

子供たちに対して授業をするというのは未来の種を投資していると捉えられていて、命がけでそれをやっていることが、地元の人にも受け入れられているのだと思います。この活動は14年続けていますが、よくやってきたと思います。

教育を通じ、戦争で辛い思いをしている人たちを笑顔に

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_なかよし学園プロジェクト_人たちを笑顔に

年末年始はカンボジアの難民キャンプで活動していました。難民キャンプには急に戦争が起きて爆撃を受けた人たちが逃げてきているのですが、教材も何も無いところで日本の子どもたちが制作したおもちゃや竹トンボで授業を行い、「竹トンボはなぜ空を飛べるのか」を教えたり、学校もなく親にも構ってもらえない子どもたちに授業をすることが、子どもたちの学びを止めない平和活動になります。

中には寂しそうな顔で無言で袖を引っ張って来る子もいて、何百人といるそういう子供たちが、日本の児童・生徒が制作したおもちゃに夢中になることでやっと見せてくれた笑顔を見ると、「自分が現地にいき届け、繋げることができて良かった」という気持ちになります。

日本では勉強というと良い点数をとることに集中してしまいがちですが、世界では教育で笑顔を与えることができます。紙飛行機で遊ぶ楽しさを知ってもらったり、児童生徒が制作したものを使って、難民キャンプで授業を行いながら、クリスマスパーティーを企画したりするととても喜んでもらえます。絶対にサンタが来ない地域にサンタが来るのですから。

戦争というのは、逃げる途中の道端で赤ちゃんを産み、難民キャンプで不安な中で子育てをスタートする。そういうことが起きます。笑うことができなくなってしまう中で、教育によってこの人たちを笑顔にさせられるなら行く必要がある、それが僕の原動力です。

また、南スーダンでは、僕のような異国の強面で大きい人が行くと皆びっくりしてしまうのですが、そういうときにビッグスマイルを見せると、「なんだこれは」と興味を持ってくれる。「なんか可愛いな」と思って皆もやってくれるのです。皆が「なんだこれは」と引っかかって思いっきり笑えば、平和がくる。ビッグスマイルは世界を平和にするひとつの武器だと思ってやっています。

貧しい、学校がない、といろいろな辛さを持っている場所だからこそ、笑顔の価値を伝える、笑顔をつくるきっかけをつくるのが大切だと思っています。

14年続けてきた教育支援活動とソーシャルビジネス

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_なかよし学園プロジェクト_14年続けてきた

僕らの第一の活動としては、世界の教育支援活動です。14年間で10か国で活動する団体になりました。最初は計算や文字の読み書きといった基本的なことが中心だったのですが、3年目くらいには「少年兵の更生をやってほしい」と言われました。

日本でも少年兵に教えた経験はありませんでしたが、モノを壊すことしか知らない人たちにはモノをつくることを教える、モノをつくる楽しさを教えるしかないと思い、ミニ四駆を使いました。僕のビッグスマイルで大抵の人は笑ってくれるのですが、10年の活動の中で少年兵の彼らだけがメンチを切ってきたので、通信制高校の頃を思い出してワクワクしちゃいましたね。

「これつくろうぜ」と無言でミニ四駆の部品を渡したら、彼らはわけがわからないながらも車を作っていくのです。1、2週間前までは戦場を駆け回っていた彼らが、完成したミニ四駆に電池を入れて動いた途端にビクッとして、とても可愛いなと思ってしまいました。

彼らも笑顔になって、今は本物の車を直して生計を立てています。僕たちは自動車学校も作り、自動車の整備を教えられるようにもしました。彼らはもう少年兵になることはありません。そういうきっかけを与えるのが教育なので、世界に対してきっかけを与える活動をしています。

第二の活動が、日本教育の活動支援です。世界に対して教材を届けることをしていたことが国連に認められて、最近国連でスピーチをする機会をいただきました。社会科の教師である僕にとって国連は教えるものだったのに、そこに行ってスピーチすることになるなんてとても面白いと思いました。

同時に、僕のようないち教師がスピーチするリソースを日本に向けたらどうなるのだろう、と思い、日本中の教材を集めて「日本の生徒や先生はすごい」ということを伝えていくことをしています。

たとえば、特別支援学校には支援を受ける側の生徒たちがいます。一方的に支援を受けるだけではなく、支援をする側になってみませんか、という視点から、広島の特別支援学校の生徒たちで教材をつくることを提案しました。

彼らは難民キャンプのような材料がないところで教えられるものとして、福笑いを教材として編み出しました。支援学校の子供たちとつくった福笑いの授業をおこなって、難民キャンプの子どもたちが喜ぶ姿を見て彼らも喜ぶ。世界の壁を無くす活動です。

第三の活動がソーシャルビジネスです。商品をつくって販売しているのですが、そのひとつが「金継ぎHEROネクタイ」です。もともとはエリザベス女王のお城に招待されたときに晴れの場で付けられるネクタイを自社でつくろうと、世界を象徴するネクタイをつくろうと思ったのがきっかけでした。

金継ぎというのは、金箔で陶磁器を繋ぐ手法です。日本人は壊れてもまた直して美しくする、そうした日本の伝統を、「金継ぎネクタイ」を通じて伝えていくのです。人間は不完全だけど、不完全な人同士が繋がることで新しい美になる、そういう活動をしています。

壱岐島の未利用魚を使用したふりかけをつくる「なかよしふりかけ」プロジェクトもあります。壱岐の島の小学生や地元の漁港・地域の方と一緒に商品を開発しました。こちらは、日本郵便での販売や壱岐の島のふるさと納税として販売します。1つ売れると、1つを世界に届ける、「1Buy 1Gift」の形で世界に届けていく、そうしたソーシャルビジネスもおこなっています。

「No hope」の日本の子供たちに希望を

見出し4画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_なかよし学園プロジェクト_教師の役割

僕は決して優れた経営者ではないので、全部後手後手なのです。ふりかけも面白いね、とつくってみたら日本郵便の方が興味を持ってくださって、といった感じで。

僕自身は勉強は好きですが、教材などにお金をかけられなくて勉強に飢えていたので、世界で勉強したくてもできない環境にいる人たちの気持ちはとてもよくわかります。僕は大学に5つ入学した経験があって、ただの勉強馬鹿だと思われるのですが、「勉強したらやれることがもっと増える」というのが僕個人の原点にあります。

僕の仕事は「結局何をやっているのかわからない」と言われてしまって、それは強みであり弱みでもありました。ただ教育をやってきた人間がすぐビジネスをできる訳がないので、慶應に入学して2年経営学を学んだのです。

ドラッカーの著書の中で、「ボランティアであってもどうやってマネタイズするかを考えるのがNPOだ」という話があります。日本人的感覚としてはこれまで「良いことをしていればお金が入って来るよね」と思っていたのですが、実際はあまり入ってこない(笑)。自分たちの活動とビジネスの活動を掛け合わせなければと思ったときに、勉強って必要なのだなと改めて実感しました。

僕は英語の免許を持っている英語教師でもあるんですが、今の日本は小学校から英語を勉強できる環境が整っているのでレベルも高い。他の国ではなかなかここまでやってくれることは無いのですが、それでも他国の子供たちは観光客や近所の人から学ぶことで話せています。

日本人は学ぶ環境が整っているのに、多くの人が話せない。僕は他の国の人に「日本人が英語が苦手なのは発音が恥ずかしいと思っているからだ」と伝えています。東ティモールで日本の観光客にガイドをしている人たちに勉強を教えているのですが、彼らの日本語の発音はそれほど綺麗ではありません。しかし一生懸命伝えていれば、発音は気にならないのです。

また、日本で勉強が好きな人はほとんどいません。海外で「勉強が好きな人」と聞くと大半が手を上げます。日本の場合は半分が生徒のせい、半分が教師のせいと言えるでしょう。評価の軸が点数や偏差値になってしまっているのも要因だと思います。

スポーツでも同じです。日本ではスポーツができてもプロになれなければ意味がない、といった価値観になりがちです。僕もスポーツ一本だったのが、肘を壊してしまって勉強にシフトしたのでわかるのですが、この日本の現状って辛いなと思います。プロになるかならないかの軸しかない。僕たち教師は、そこに道をつくってあげるべきなのです。

今は大学の推薦入試も全体の40%ほどに増えています。18歳までに何をやってきたのか、誰を喜ばせてきたのかが評価基準になりつつある。たとえばアフリカの子どもたちに野球を教える経験を経て大学に受かって、そこで培った経験を教育者の道やコミュニティ活動に活かしていく。野球だけでやってきたことが全然無駄にならない、そういうことを教えてあげる塾、平和塾を作っています。

平和塾の2割くらいは不登校の子たちもいます。世界で勝負をさせて、その実績で自分たちも大学入試に受かり、人生を切り拓くための力を身につけます。「やっても無駄なことは何もない」ということを伝えていく活動です。

基本は誰かを応援したい。頑張りたくても頑張れない人たちを応援したい、という気持ちがあります。世界の人たちには、日本人は皆タワマンに住んでいる富裕層だと思われているのですよ。実際はそうじゃないよと伝えているのですが。

一方で日本人は自殺者が多いと話すととても驚かれます。何でこんなに豊かな国で自ら命を絶ってしまうのか、と。子供の自殺が多い責任のひとつは大人にあって、ひとつの答えとして「希望がない=No hope」なのだと僕は伝えています。

たとえばふりかけのプロジェクトは、自分が描いたふりかけのラベルが南スーダンに届いて、現地の人たちを笑顔にする。そういうのが希望になるのではないかと思っています。日本では心無いことを言われてしまった子供たちが、他の国では「あなたに会えて幸せだ」と言われる。

そういった話を聞くと、不登校の子供たちの親はとても喜びます。いじめられた子たちは転校したとしても何かしらつきまといます。だから世界で活躍してもらおうと。どうやったら日本の子たちに希望を持たせてあげられるかという点に焦点を当てています。

誰もがヒーローになれる平和な世の中にしていきたい

見出し5画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_なかよし学園プロジェクト_誰もがヒーロー

シリアや南スーダンのような国に行くと、「平和を教えてくれたHERO」と言ってもらえます。まさか自分が、40歳を超えてヒーローと呼ばれる日が来ると思わないじゃないですか。ですが実際にヒーローになれている。僕は特別な人間ではないので、僕がなれたということは、誰でもヒーローになれます。平和に繋げることができれば誰でもヒーローになれる。

先生や生徒を他国に連れて行くと、「これまでやってきたことは間違いじゃなかった」と希望になるのです。常に戦争や災害で辛い状況が生まれている中で、皆がヒーローになれる世の中にするのが僕のビジョン。世の中の課題を面白く、皆が笑顔になれる解決策を出せる人たちがヒーローだと思っています。

敵を倒さなくてもヒーローになれる。その定義のもと、難しい場所に行けるというツールを使って多くの日本人と世界をつなぐことが僕にできることです。僕と出逢った人は皆ヒーローになれる。「まだヒーローじゃないんですか?」と言われるような世界になれば、それはすごく平和なのだろうなと思います。

「あなたの教材を世界に届けるとしたらどの教材を届けますか」「何をつくって送りますか」と聞かれて「おもちゃで子供たちの悲しみを笑顔に変えたい」と思ったときに、そんなことができるわけないと思っているかもしれませんが、できるのです。

自分が寄付したものがひとりひとりに届いて、その結果が返ってくることはなかなかありません。自分が出した教材が誰に届くのか、寄付がひとりひとりに届いてその写真が返ることはなかなか無い。その写真ひとつひとつを撮って「届いたよ」ときちんと伝えること。大きな組織だと難しいですが、僕らは小さな組織なのでそれができます。

子供たちがつくったお米を他国に届けたとき、「君たちが育てたお米がこれだよ」と伝えられる。これはとても希望になると思うので、これをやることが僕らの教育活動なんだというのが最大のビジョンです。このビジョンを持ってすれば、皆が世界の平和に興味を持つし敷居が下がる。やってみたいと思えるようになります。

今できることをやって平和を作っていこう、と訴えかけていくのが、なかよし学園のこれからの姿だと思います。