元OSK千原輝子|価格に迷わない女性起業家の「在り方」
元OSK日本歌劇団で舞台に立ち、現在は女性起業家の「魅せ方」と「在り方」を支える千原輝子(ちはら てるこ)さんの連載コラム第6回です。自分の商品には価値があると思っていても、いざ価格を伝える場面になると自信が揺らぐ——。千原さん自身も、舞台を離れた後、「自分の経験にどんな価値があるのか」を見失った時期がありました。高い価格を堂々と伝えるために必要なのは、強い営業トークだけではありません。
自分の価値を見失った経験

OSK日本歌劇団の舞台では、立ち姿、歩き方、声、表情、目線まで、すべてが表現の一部です。
スポットライトを浴びる気持ちよさと同時に、「失敗できない」という怖さもあります。それでも舞台に立ち続ける中で、私は一つのことを学びました。
人前に堂々と立つためには、自分が積み重ねてきたものを、自分自身が信じていなければならないということです。
舞台で磨いてきた姿勢や発声は、きれいに見せるためだけの技術ではありませんでした。自分が届けたいものを、相手へ正しく、品よく伝えるための土台だったのです。
ところが舞台を離れたとき、その自信は一度大きく揺らぎました。
芸の世界しか知らなかった私は、経営はもちろん、一般社会の常識や仕組みにも戸惑いました。プロとして舞台に立ってきたのに、社会では自分の経験をどう役立てればいいのか分からない。「自分の人生は無駄だったのではないか」と落ち込んだこともあります。
今振り返ると、この経験は、価格を口にするときに不安になる女性起業家の気持ちと、どこか重なります。
自分自身が「私の経験には価値がある」と思えていなければ、その迷いは声や表情、姿勢にも表れてしまうからです。
価格の前に、自分を知る

舞台を離れた後、私は社会の仕組みを一つずつ学びました。
舞台で培った発想力や諦めない姿勢を評価してくれる経営者との出会いもあり、少しずつ「自分にも役割がある」と感じられるようになります。
しかし、その後には「成果と数字」という新たな壁が待っていました。
頭の中では「こうすればよくなる」と分かっているのに、それを言葉にできない。成果を急ぐあまり、相手を強引に動かそうとしてしまったこともありました。プロフィールでも、当時は伝え方や導き方が未熟だったと振り返っています。
そんな経験を経て気づいたのが、「自分にとって当たり前にできることほど、価値に気づきにくい」ということでした。
長年の舞台経験で身につけた立ち方、歩き方、発声、表情。私には当たり前でも、それは何年も積み重ねてきた経験です。自分の長所を捉え直すようになってから、人と話していても、その人自身がまだ価値だと思っていない強みが見えるようになりました。
これは、商品やサービスの価格を考えるときにも大切な視点だと考えています。
価格だけを見て、「高いと思われたらどうしよう」と考えると、不安は大きくなります。
けれど、その商品が生まれるまでに、どんな経験を積み、何を学び、何を考え、誰のために提供しているのか。そこまで自分自身が理解していれば、価格は単なる数字ではなくなります。
現在、私は姿勢や発声、表情といった外側の表現だけでなく、香りを嗅いだときに浮かぶ感覚や言葉を対話の糸口にしながら、自分の価値観や思いを見つめる時間も大切にしています。
外側だけを堂々と見せるのではなく、「私はなぜこの仕事をしているのか」という内側と一致させる。そのことが、自分らしい伝え方につながると考えているからです。
堂々と伝えることも品格

女性起業家の中には、サービスへの思いは強いのに、価格を伝える瞬間になると「私がこんな金額をいただいていいのだろうか」と迷う方もいます。
だからといって、無理に強気になる必要はありません。
私が目指しているのは、金額を大きく見せることでも、押し切って契約してもらうことでもありません。
大切なのは、自分の仕事の価値を理解し、相手に必要な内容をきちんと説明した上で、価格も同じように落ち着いて伝えることです。
そして、決めるのは相手です。
舞台でも、自分だけが目立てばよいわけではありません。相手役がいて、共演者がいて、観客がいる。その場全体を感じながら、自分の役割を果たします。
ビジネスも同じだと私は考えています。
自分を安く扱わない。一方で、相手に無理をさせない。
自分の価値を認めながら、相手の選択も尊重する。そのバランスこそ、私が伝えたい「品格のある仕事」の在り方です。
私自身、舞台に立つことだけを夢見ていた頃には、自分が会社を立ち上げる未来を想像していませんでした。けれど、知らない世界へ踏み出し、弱点を知り、自分の強みを見つけ直すことで、これまでの経験を仕事につなげてきました。
だから今、価格を伝えることに迷っている方にも、一度立ち止まって考えてほしいのです。
「いくらなら売れるだろう」だけではなく、
「私は、この仕事を通して何を届けたいのだろう」
「ここまでに、どんな経験を積み重ねてきたのだろう」
「目の前の人に、どんな価値を提供したいのだろう」
そこが自分の中でつながったとき、姿勢も、声も、言葉も変わっていきます。
高単価の商品を堂々と提示するということは、強く売り込むことではありません。
自分が歩んできた道と、提供している価値を自分自身が認め、その価格を誠実に伝えること。
自分を安く扱わず、相手の選択も尊重する。
私は、そんな女性起業家が増えていくことを願っています。
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