日本におけるクラシック音楽文化について~Vol.2 業界の問題点①~
現在、神奈川フィルをはじめとしたプロのオーケストラや吹奏楽で活躍中の興津諒(おきつりょう)さん。音楽と、行政や他業種大手企業との連携による業界の市場拡大と新規顧客の拡大、文化の定着に向け、全国を巻き込んだプロジェクトに企画やアドバイザーとして多数関わっています。今回は、クラシック音楽業界の問題点を取り上げていただきます。
プロ団体団員とフリーランス、そして国内における文化の未定着
まず問題点に挙げたいのが、プロの団員とフリーランスについてです。プロの団体のオーディションでは、奏者が少ないと言われているファゴットでも1席を30〜120人が競い合います。単純に30〜120倍の倍率です。
この入団までの壁の高さと、入団してからの稼働数の多さが要因の一つですが、入団してしまうと以下に申し上げる大きな意味での活動の熱量が少なくなってしまうことが多いように思います(勿論、皆様大変な熱量を持って精神を使い果たしながら日々仕事をしています。ですが今回お伝えしたいのは演奏以外の部分です)
それに比べフリーランスは、自己プロデュースにより仕事を作らないと生きていくだけの経済力を得られないので、そこを頑張っている方も多いのですが、その多くが上手く実らないのが現状です。これは経済的な知識、ホームページの作り方、個人の売り方などを音大が何も教えてくれない所にあります。
なぜ教えてくれないのか。先生方もまた、教えてもらっていないので確かなことが分からない場合が多い、またはそんなことは自分で探し求めてくれ、ということかと思います。そしてこの100年以上に渡り、この部分を誰も今まで追求や伝達をしてこなかったことが、今も後遺症として色濃く現れているのだと思っています。
過去にも多くのレジェンドがおりますが彼らもまた若い奏者に対して、技術ばかりを伝えて自己プロデュース力についてなかなか発信をしてこなかったり、子ども達を含む聴衆に対して文化の定着の鍵となる知識を撒かなかったりしたことが、今の悲劇を生み出していると考えています。
気づいたのなら行動を
本当はオーケストラが日本に入ってきた時点で確立しなければならなかったことでした。しかし恐らくですが、音楽が文化として定着しているヨーロッパで学んだ方々が文化のない日本にそのままの形で輸入し、オーケストラの格式とヨーロッパの伝統を大事にしてきてしまったことが大きな原因の一つだと思います。
そして未だにその部分も残っています。土地が変わればやり方を変えなければならないということに気付かなければならない。気付いても自分には出来ないと思ったり、自分がやらなくても誰かが…と思ったりすることも多いと思います。
しかし気付けたのなら行動をしなければならない、そう思うのです。業界に関わらずこれに賛同して下さる方の人数が多ければ多いほど世の中を変える力になるはずです。
中途半端に定着した伝統や、人々の認識を今から変えるのはかなり難しいのですが、だからこそ、もう一度皆が力を合わせて発信し続けなければならないと考えています。それには音楽業界のみならず、多くの方のご協力が必要であると共に、他の業界においても同じことが言えるのではないかと考えております。
次回も引き続き、クラシック音楽業界の問題点について綴らせていただけたらと思います。ご興味を持って下さる方が一人でもいらして下さいましたらとても嬉しいです。引き続きご一読いただけましたら幸いでございます!