自分を信じて戦う空手選手が世界一にこだわる理由とは?

空手歴25年を超える森 優太(もり ゆうた)さん。小学生で全国優勝を果たすも、学生時代は伸び悩む日々を経験。しかし「世界一」の夢を諦めず、現在は日本代表として世界選手権や国民スポーツ大会で頂点を目指しています。本コラムでは、寸止め空手の奥深い魅力や、恐怖心を打ち破るメンタルの保ち方、今後の抱負を伺いました。
「世界一になりたい」という夢を胸にオリンピックを目指す

空手を始めたのは5歳のころ。兄が習っていたので、道場に付いて行っていたら、そのままいつの間にか私も空手を始めることになりました。現在32歳で今も空手を続けているので27年ほど続けていることになりますね。母の影響と、漫画『SLAM DUNK』の影響で、バスケットボールをプレーするのも観戦するのも大好きです。
小学2年生のときに小学生の空手全国大会で優勝しました。そこから小学校、中学校、高校と全国大会に出場しても目立った記録を残すことはできなかったんです。大学のときに日本代表に選出され、大きな成績を出せるようになったのは最近のことですね。2021年の世界選手権で3位、2023年の全日本選手権で2位、2022・2023年の国民体育大会成年組手重量級で優勝(連覇)も果たしました。
芳しくない成績の学生時代も空手を続けてこられたのは小学生のころから世界一になりたいという夢があったからです。高校までは世界と触れるという経験はできませんでしたが、日本代表に入って世界と戦う先輩方を見ていて、世界で戦いたいという思いが強くなりました。大学在学中に、東京オリンピックで空手が正式種目として採用されることが決まりました。そこからオリンピック出場を目指しましたが、選考レースで結果を出せず代表には選ばれませんでした。その後、空手はオリンピックの種目から外れましたが、『世界一』という目標を掲げて今も空手に励んでいますね。
スピード感あふれる間合いとダイナミックな技の競い合いから目が離せない

空手にはさまざまな種類があるのですが、私たちは『寸止め空手(伝統派空手)』と呼ばれる競技スポーツです。よく聞く『極真空手』とはルールもまったく異なり、競技に特化しています。その中でも『形(かた)』と『組手(くみて)』の二つに分かれます。『形』はひとりで演武して技の美しさや強さ、キレの良さを競い合うものです。日本は『形』が強くて魅力的な競技なのですが、私たちが取り組んでいるのは『組手』で、こちらは対峙して戦う中で、相手を倒すのではなく時間内にポイントを取り合います。格闘技の一種でテコンドーに近いかもしれません。技は相手を倒すためではなく、倒すつもりで向かいながらコントロールして戦わないといけないのが難しくもあり、おもしろいところでもあります。格闘技の中でも、相手との間合いが遠いところから一気に相手に向かって踏み込むスピード感やダイナミックな技が見どころですね。空手を見たことがない人が試合を見ると早すぎて技が見えないほどのスピードが一番の魅力です。
空手はスポーツ化が進んでいるとはいえ、あくまで『武道』なので私が大切にしているのは『礼節』です。『礼に始まり、礼に終わる』という武道の精神にあるように、相手に敬意を払うことを大事にしています。トップ選手になるとそういった礼節を大切にしている方が多いと感じます。
空手の組手競技は恐怖心と戦わなくてはいけません。どれだけ自分のことを理解しているか、恐怖心にどう立ち向かうかが問われると思います。どの競技でも恐怖心というものはあると思うのですが、これまで積み上げてきた自信が恐怖心を上回ると試合のときに吹っ切れて勝負に出られるんですよね。私はやってきたことを出せば絶対にポイントを取れる、相手が誰であろうと勝てる、残り何秒であっても必ずポイントを取れると自分に言い聞かせています。自分に迷いがあると判断が鈍って、実力を発揮できないので、メンタルトレーナーの方と話して自分ができると思い込ませています。
個人・団体ともに世界選手権優勝がみんなへの恩返し

2020年に開催予定だった東京オリンピックは新型コロナウイルスの感染拡大を理由に翌年2021年に延期。その後に開催された世界選手権で出場のチャンスが巡ってきて、3位という結果を残すことができました。当時、私の先輩や同世代の選手には、このオリンピックに出場できた選手も、出場できなかった選手も、引退する人が多かったです。でも、私はもっとできると思っていたし、そのときにまだ目標を達成できていなかったので、目標をオリンピック出場から世界選手権へと切り替えました。オリンピック選手のサポートをさせていただいた経験も自分の糧にしながら、自分自身の目標達成に向かって練習を重ねていたことが世界選手権で3位という結果に繋がったのではないでしょうか。
2024年から青森県競技力向上対策本部に所属しています。今年2026年に青森県で国民スポーツ大会が開催されるので、所属先から出場して青森県の総合優勝をするというのが直近の目標です。6月にインドネシアで行われたアジア選手権の団体のメンバーとして出場し、結果は3位でした。この結果は個人的にもチームとしても悔しいものでした。日本は世界一を取れる実力はあると思っています。先述の国民スポーツ大会の後の11月に団体戦の世界選手権があるので、メンバーとして選ばれて、日本チームで世界一を獲得に貢献したいです。来年には、個人戦の世界選手権が控えているので、出場権を獲得するために、国際大会で結果を出し続け、みなさんに恩返しができたらと思っています。