田舎嫌いから一転、電波の届かない場所で古民家カフェをオープン!「くりから庵」経営者が語る自然に寄り添う薬膳の大切さ

原田 栄利子(はらだ えりこ)さんは、神戸で薬膳を教える一般社団法人 日本四季大学校の代表を務めておられます。2023年から丹波篠山市で「古民家カフェ&ギャラリーくりから庵」をオープンしたきっかけや薬膳の大切さ、薬膳を伝えていきたいという熱い想いについて語っていただきました。
古民家カフェの始まり

「古民家カフェ&ギャラリーくりから庵」を開いている古民家は20年ほど前に買っていたのですが、私自身は田舎に興味がなかったので、当時は買っても古民家には行きませんでした。主人はもともと陶芸をしたい人で、いずれ工房を持ちたいという想いはあったようです。
古民家を購入したものの、私も主人も忙しくてそのままになっていました。しかしコロナ禍で主人の手が空いて二人も歳をとってきて、古民家も何とかしないといけないと考えたときに、主人は建築関係の仕事で内装も詳しいので、たった一人で、約2年半かけてDIYで古民家を整えました。
私は虫が苦手なので、行く気は全くなかったのですが、実際に行ってみたら、そこは電波が届かない田舎で、とてもよく眠れたのです。最初は疲れているだけかと思っていましたが、薬膳で自然との調和を伝えていたこともあって、何回も行くうちに「これが自然の力なんだ」と痛感しました。
それまで都会で薬膳をお伝えしていましたが、「ちょっと違うかも」と思い始めました。篠山の地で知り合った農家さんに、いろいろなことを教わりながら、食の本質がわかっていなかったことが恥ずかしくなりました。
古民家は、全体が主人の作品です。それを観に来てほしい、癒されに集まれる場所にしたいとも思うようになり、地元野菜で、自分でできることからやってみようと薬膳ランチを提供し、主人の作品も展示した「古民家カフェ&ギャラリーくりから庵」を始めました。
私も大阪にはよく行きますし、野菜は百貨店で買うこともありますが、パワーのある地元野菜を都会の方にも味わってほしい、そう思うようになりました。
忙しい現代人こそ、季節:二十四節氣に合わせた旬のものを。

薬膳を始めたきっかけは、看護師の仕事をしていた頃に遡ります。若いときに病気で亡くなる方をたくさん見て、当時は受け止めきれない部分もたくさんありました。40代のとても感じのよい男性が「腰が痛い」と来院したら1週間後に肝臓に癌が見つかり、その後亡くなられたり…。
そんな臨床の場面を目の前にしながら、何か腑に落ちない気持ちをかかえながら仕事をしていましたが、そんなとき「未病先防」を治療のいちばんの目的とする中医学に出会ったのです。当時の一般の病院では、病名に合った薬剤での治療がメインでしたが、病気になる前に防ぐことができればすばらしいと思い、中医学に傾倒していきました。「天人合一」という、人も自然の一部なので、その成り立ちに合わせてこそ健康になれるという基本理念にも感動したのです。
中医学の治療は、鍼灸・生薬・薬膳と3つの方法があります。
私は日常の食事で未病を解決したいと思い、迷わず薬膳を学ぶことにしました。
「薬膳」は元々、中国で始まっているので、食事に「生薬」を入れるイメージが強いのですが、それでは、日本に住む私たちは続かないと感じ、身近にある旬の食材で和の薬膳をお伝えすることを決意し、一般社団法人日本四季大学校を立ち上げました。
日本の先人たちは、自然に感謝し、季節に添って理想的な暮らしをしていたように思います。現代は忙しいことや物流が発達し、季節感のない生活にどんどんなっているように思います。自然に合わせることとは、季節に合った暮らしをすること、それには、まず、季節の特徴、人の身体にあたえる影響などを知るべきだと、季節の暦である「二十四節氣」もお伝えしています。こちらでも、一つひとつの節氣の持つ意味や、そのときの養生などをお伝えできたらと思っています。
薬膳では「季節に合わせる」「旬のものを食べる」ことをもっとも大切にします。梅雨になると湿気があって、身体がだるくなったり胃腸が弱ったりということが起こりやすいので、梅雨の時期にはそれを解消するようなものが旬の食材として出てきます。湿気は胃腸に堪えるため消化に良いもの、たとえばトウモロコシや豆類などの食材です。また、湿気が入ると身体の巡りが悪くなり要らない水が溜まって身体の動きも悪くなるので、その場合は辛味、日本でいう「薬味」を加えると身体に良いとされています。昔の日本人が当たり前のように食べていたものや、やってきたことがまさに時期に合っていることを薬膳を通して知ることにもなりました。
便利な時代に、古民家カフェで自然や薬膳の素晴らしさを伝えていきたい

多忙な生活をする都市部の方は、一年中食べるものがあまり変わらないということもあるようで、季節の巡りとはほど遠い感じがしています。否定するわけではないのですが、たとえばコンビニは衛生的には安全で便利ですが、コンビニに売っているお茶には防腐のための措置がされています。私の小さい頃にはお茶を買って飲むという習慣がなくて、家で母がやかんで沸かしてくれたお茶を飲んでいました。お茶はぬるかったけれど添加物は入っていませんでした。飲み物の添加物なんて気にしないといわれる方もいますが、それを長年積み重ねると全然違ってくると思います。添加物に触れる機会も、昔に比べて増えてきているように思います。
世間には「時短」という言葉があふれています。手間がかかること、面倒なことはやらないなど、私も若いときは思うことがありましたが、便利になり過ぎて、日本人が大切にしていた自然への感謝もうすれているように思います。歳を重ねると、昔おじいちゃんおばあちゃんがやってきてくれたことが、どんなにありがたかったかが分かるようになる。そんな日本の文化を少しでも若い方々にお伝えしていきたいです。
日本は湿気の多い気候で、そのせいで胃腸を弱らせている方がとても多いです。そんな、暮らしの中で少しだけ気をつけるだけで体調が整う裏技などもお伝えしていきたいです。
丹波篠山という、自分にとって想定外の場所とご縁があって、大自然の中で暮らしておられる方々とも触れる機会ができて、とても勉強になっています。都会の暮らしの中で疲れている方にぜひ来ていただいて、自然のすばらしさや季節の巡りを感じ、薬膳を食し、養生のお話ができるようなイベントもどんどんやっていきたいです。