「演じることで仕事を楽しくする」教師&俳優がたどり着いた教育者の在り方とは

松下 隼司

松下 隼司

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大阪府立の小学校教諭をされている松下隼司(まつした じゅんじ)さん。劇団俳優をしていたという異例な経歴の持ち主です。そんな松下さんに小学校の先生になろうと思ったきっかけや仕事をする上でのこだわり、今後の展望を伺いました。

母の影響で小学校の先生を目指す

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_松下隼司_小学校の先生

中学生の頃には小学校の先生になりたいと思っていました。母は特別支援学校の教員をしていて、毎年お正月になると母の元に100通近くの年賀状が届きます。当時の教え子はもちろん卒業した生徒からも年賀状が来ていたのを見て、慕われていて良い仕事だなと感じていました。私が小学生の時は母の学校の夏休みのプール開放に行って、その小学校の子どもたちと遊んでいたんです。いつも『オカン』と呼んでいる母が子どもたちから先生と言われている姿を見て、かっこいいなと思ったのが先生を目指すきっかけですね。

高校生の時に『みにくいアヒルの子』というテレビドラマが人気で、不器用ながらも体当たりで生徒と向き合う教師役の俳優・岸谷五郎さんを観て先生っていいなと感動したことを覚えています。

教師になりたいという気持ちを持って大学に進学したのですが、大学では実際の小学校での授業の進め方や生徒との関わり方を学ぶのではなく、心理学やフランス語などを学んでいました。実践的なことを学べないと迷いが生じて、教師になりたいのではなくて教師役を演じてみたいだけなのかと思うこともありましたね。そこで、大学2年生のときに劇団に入り、29歳までの10年間演劇活動をしていたんです。24歳で教員になり、24歳から29歳までは仕事をしながら劇団員として舞台に立っていて、教師よりも夢を追っている劇団員の方がかっこいいなと思っていました。

29歳で読んだ教育関係の書籍に、真剣に準備して子どもたちと向き合った授業は舞台に匹敵すると書かれていたんです。そこから本気で授業の進め方や子どもとの関わり方を勉強しようと思いました。学べば学ぶほど本当にその通りで、教師の仕事がお芝居よりもおもしろいと気づいたんです。舞台俳優は台本を読み込んでから1、2カ月にわたって稽古をして、稽古の通りに舞台で演じます。授業は台本のような教科書があって流れを考えるけれど、子どもの反応によって話す内容を変えていきます。その場で臨機応変に授業を進めていくのはコンテンポラリーダンスのようで楽しいなと思うようになりましたね。そう思った29歳で劇団を辞めて、週4〜5日は夜に区民センターに行き、先生同士で授業の勉強会をしていました。

教師の仕事に開眼してから仕事の進め方が激変!

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_松下隼司_教師の仕事に開眼して

小学校の授業では教科書を必ず扱わないといけません。小学6年生の国語の教科書に、「イースター島にはなぜ森林がないのか」という説明文があります。私が24歳の教師になりたての頃だったら、教科書を開いて「今からこの説明文を読み取っていくよ」と言って音読してから意味を調べるという指導書通りに授業を進めていたのですが、それだと子どもたちが顔を上げてくれません。子どもたちにとってはおもしろくない。教師の仕事の魅力に気づいてからは、どうやったら子どもたちが顔を上げてくれるのかを考えておもしろくする工夫を始めました。この説明文の例で言うと、文の意味から入るのではなくてイラストや写真から入ってイースター島はこんなところだと興味を持つこととおもしろくなってくるのではないでしょうか。

若い頃は小学校の休み時間に子どもたちと仲良くなろうと、人気のゲームの話をしたり、レクリエーションをしたりしていたんです。仕事に目覚めてからは、子どもたちが学校で過ごす時間のほとんどは授業なのだから授業が楽しかったら学校生活は楽しくなると思うようになって、私も仕事が楽しくなりました。先生から子どもへの一方通行の関係だったのが、子ども同士の関わりが深まるようにアシストするのがおもしろくなりましたね。

小学校には校則と呼ばれるルールがありますが、我々教師ですら疑問に思うルールがいくつかあるんです。たとえば、授業は1コマ45分ですが、授業中に黒板にチョークで書かれた文字や図を消してはいけないという決まりがあります。45分間の授業の流れがわかるように黒板は消してはダメだというのです。消せないので小さな文字で書くことになると多くの文字が書かれている状態になるので、どこの話をしているのか混乱してしまう子どももいます。このルールが子どものためになっているのかなと思うんです。そこで、私は必要な情報だけを中央に大きく書くようにしました。

演劇経験を活かして教育現場をより楽しく働ける場所にしたい

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_松下隼司_演劇経験を活かして

現在47歳なのですが、46歳で劇団にまた入りました。『コンチャン劇団』というとてもおもしろい劇団なんです。2024年12月にできた新しい劇団なのですが、団長が有名俳優の近藤芳正さんで、近藤さんの名前から劇団名が付いています。普通の劇団ではなくて、演劇的手法をどう教育に活かすかを演劇で体現していて、公演を目的としていません。所属しているのは俳優もいますが、小中高校や大学の先生もいます。

私は29歳で教師という仕事の楽しさに気づきましたが、もっと早く演劇から離れて教師の仕事に全力を注げばよかったなと後悔していたのですが、40歳を過ぎた頃から演劇活動で学んだことは無駄ではなかったなと思うようになりました。演じるということで辛い人間関係を和らげる術を学びましたね。演劇的手法が周りや自分を傷つけない働き方に活かせるということを広めていきたいです。

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