日本におけるクラシック音楽文化について ~Vol.5 文化の確立と定着「当たり前」に向けて~
現在、神奈川フィルをはじめとしたプロのオーケストラや吹奏楽で活躍中の興津諒(おきつりょう)さん。音楽と、行政や他業種大手企業との連携による業界の市場拡大と新規顧客の拡大、文化の定着に向け、全国を巻き込んだプロジェクトに企画やアドバイザーとして多数関わっています。最終回となる今回のコラムでは、クラシック音楽文化を「当たり前」にするために、というテーマでお話いただきました。
今回がコラムの最終回です!更に広げていかなくてはならない活動と、まとめについてお話をさせていただきます!
文化の確立と定着〜当たり前、に向けて〜
様々な団体が情操教育の為のアウトリーチという形で色々な学校での演奏を行っておりますが、聴かせるだけで論理的にどこが面白いかを説くことは現状ありません。難しい言葉を用いたとしても子供を侮らず、論理的にどこが芸術的でそれの何が面白いのかを説いていくべきだと考えております。
自分自身、幼少の頃には意味が分からなかった言葉や話が、大人になってから意味が分かりスッキリするという経験が数え切れないくらいあるので、皆さんも少なからずご経験があるのではないでしょうか。
それを音楽にも置き換える事で、将来の種を蒔いていかなければならないと思いますし、それが教育だと思っています。聴いてくれていた子供たちが歳を重ね、理解をしてくれた時に初めて本当の意味でのお客様が生まれ、国内における文化の定着が始まるのだと思っています。
特にヨーロッパでは文化として定着し、お客様も年齢問わず芸術についてよく理解しており、レジャーと言っていい程日常の一部となっています。子供でも、曲を聴かせたら誰の何という曲と答えられるのが一つの例でしょう。
これは我々にしたら日常に密接に無いので「すごい」という感覚になった方もいるのではないでしょうか。しかし、これはその国々では「当たり前」なのです。そしてこれが「定着」している状態だと思います。
スタッフや関わる全ての人まで賞賛される世の中に
そういう事があるので聴く方も真剣で厳しく、マナーについても厳しいです。その方々の前で生半可なパフォーマンスは出来ないので、演奏水準も自然と高くなります。そうすると、オーケストラで演奏する事自体が凄いと言う事になり、更にはオーケストラに絡む仕事をする事自体が凄いとなっていき、ステージスタッフまでもが尊敬される対象となります。
現にヨーロッパでは奏者は憧れの的であり、ステージスタッフもまた憧れの的となっており、給料一つにおいてもそれは顕著です。そこまで国民の価値観を育てる事により経済効果も生まれ、その先には業界に投資する意味が生まれ、世界中の投資家の方々にも注目して頂けたり、国も見ずにはいられない業界となるはずです。
私はそれの実現の一歩として多岐に渡る活動をしておりますが、同業界、他業界におきましても賛同して下さる方が沢山出てきてくださる事を日々、切に願っております。
それが普通の感覚となる日はまだまだ遠く、生きている内に出来るとも思っていませんが、芸術を入り口に日本が少しでも世界と肩を並べられる国になるよう、これからも多方面への働きかけをして尽力して参りたいと思います。
読んで下さった皆様、どうかご協力をお願いいたします!そして大変長い文を最後まで読んでくださり、本当に本当にありがとうございます!今後とも何卒よろしくお願いいたします!