元OSK千原輝子|「売る」より先に、相手を見る提案力

千原 輝子

千原 輝子

2026.10.13
見出し1画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_千原輝子_聞くことから

元OSK日本歌劇団で舞台に立ち、現在は女性起業家の魅せ方と在り方を支える千原輝子(ちはら てるこ)さん。自分の商品への思いが強いほど、つい「伝えなければ」と説明ばかりになってしまうことがあります。千原さん自身も、相手を思うあまり強引に動かそうとした経験があったそうです。そこから気づいたのは、よい提案は「話す力」だけでは生まれないということです。

伝えたいのに、伝わらなかった

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私はOSK日本歌劇団で舞台に立ち、姿勢、歩き方、発声、表情などを通して、自分の思いを観客へ届ける世界で生きてきました。

スポットライトを浴びる気持ちよさと、舞台に立ち続ける怖さ。その両方を経験する中で、覚悟と積み重ねた経験が、自分の表現を支えてくれることを学びました。現在「覚悟と経験を、正しく、品よく世の中に伝える」ことを大切にしている原点でもあります。ところが、舞台を離れた後の私は、社会の中で自分をどう表現すればよいのか分からなくなりました。

芸の世界しか知らず、経営や一般社会の仕組みも分からない。プロとして舞台に立ってきた経験さえ、「世の中では役に立たないのではないか」と感じ、落ち込んだ時期もありました。 その後、社会の仕組みを一つずつ学び、舞台で培った発想力や諦めない姿勢を評価してくださる方との出会いもありました。

それでも、次に立ちはだかったのが「伝えること」の壁でした。

頭の中には「こうしたらもっと良くなる」というイメージがあるのに、言葉にできない。相手の悩みを聞いていても、解決まで導けない。成果を急ぐあまり、クライアントを強引に動かそうとしてしまったこともあります。相手のためを思っているつもりでも、自分の思いばかりが先に立てば、相手が本当に必要としているものが見えなくなる。

この失敗は、今の私にとって大切な学びになっています。

提案は「聞くこと」から始まる

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転機になったのは、自分にとって当たり前だった経験が、実は大きな財産だと気づいたことでした。

私にとって、姿勢を整えること、声を届けること、人前で表現することは日常でした。しかし、それは舞台人生の中で長い時間をかけて積み重ねてきたものです。

自分の長所を捉え直せるようになると、人の話を聞けば聞くほど、その人自身がまだ気づいていない長所にも目が向くようになりました。プロフィールでも、この気づきが仕事の方向性を定める転機になったと振り返っています。私は、ここに「提案」の本質があると思っています。

自分の商品を説明することから始めるのではなく、まず相手を見る。

何に困っているのか。
何を大切にしているのか。
どんな未来を望んでいるのか。

そして、自分の商品や経験の中に、その人の役に立てるものがあるなら、そこで初めて提案する。

自分の思いを一方的にぶつけるのではなく、相手の話を受け取った上で、自分が提供できる価値と結びつけていくのです。

現在の活動でも、姿勢や発声、表情などの外側の表現だけではなく、自分自身を知る時間を大切にしています。

香りを嗅いだときに浮かぶ感覚や言葉も、まだ整理されていない思いや価値観を見つめるための対話の糸口として取り入れています。

自分を理解できていなければ、「何とか買ってもらわなければ」と自分の都合が前に出やすくなります。

反対に、自分の価値や役割を理解できれば、目の前の人に本当に必要なのかを考える余裕が生まれます。

相手を見る余裕が、品格になる

見出し2画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_千原輝子_品格になる

30代の女性起業家や個人事業主の中には、自分の商品への思いが強いからこそ、商談になると説明に夢中になってしまう方もいます。

「これだけ良い商品なのだから、分かってほしい」

その気持ちは決して悪いものではありません。

けれど、相手が知りたいことと、自分が伝えたいことが同じとは限りません。

私は、ビジネスで大切な品格とは、きれいな服を着たり、丁寧な言葉を使ったりすることだけではないと考えています。

自分の価値を大切にしながら、同じように相手の考えや選択も尊重できること。

必要な人には自信を持って提案する。今は必要ではない人には、無理に押さない。

その判断ができることも、仕事をする人の品格ではないでしょうか。

そして、その余裕を支えるのが「自分の軸」です。

私は何を大切にしているのか。
誰のためにこの仕事をしているのか。
自分には何ができて、何ができないのか。

そこが明確になるほど、相手の反応に振り回されるのではなく、相手の話そのものを聞きやすくなります。

私自身、舞台に立つことだけを夢見ていた頃には、会社を立ち上げる未来を想像していませんでした。それでも、知らない世界へ踏み出し、弱点を知り、自分の強みを見つけることで、現在の仕事へつながってきました。
だからこそ、今後も、自分の魅力や経験をきちんと理解しながら、目の前の人にも誠実に向き合える女性を増やしていきたいと思っています。

もし商談で「どう説明したら買ってもらえるだろう」と考えているなら、一度、問いを変えてみてください。

「この人は、今何を必要としているのだろう」

そしてもう一つ、

「私は、そのために何を届けられるだろう」

提案とは、商品を押し出すことではなく、相手と自分の間にある接点を見つけること。

相手を見る余裕が生まれたとき、あなたの言葉は、もっと自然に相手へ届き始めるのではないでしょうか。

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