「マウンティング」をしてしまうのはなぜ?アドラーが解き明かす「劣等感」の正体と健全な力の使い方

「うちの子、もう九九が全部言えるの」「タワマンに住むことになったの」「海外旅行、年に3回は行かないとね」――SNSやママ友の集まりで、こんな「マウンティング」に遭遇したことはありませんか?あるいは、自分が無意識にマウンティングをしてしまい、後で後悔したことは?実は、この「マウンティング」の背景には、アドラー心理学が100年前から解き明かしてきた「劣等感」のメカニズムがあります。劣等感は悪いものではなく、むしろ人間の成長の原動力。しかし、使い方を間違えると、人間関係を破壊する「毒」になります。その正体と、健全な力の使い方とは?
私も「マウンティング」をしていた過去

正直に告白します。私自身、かつて「マウンティング」をしてしまう人間でした。
会社員時代、同僚とのランチで「最近、上司に褒められちゃって」「この案件、私がリードしてるんだよね」と、自分の成果を語ることが多かったです。そのときは「情報共有」のつもりでした。でも、ある日、いつも一緒にランチをしていた同僚が「今日は予定があるから」と断るようになりました。
最初は気づきませんでした。しかし、別の同僚から嗜(たしな)められて、ハッとしたのです。「私、マウンティングしてる…」と。
なぜ私は、同僚に自分の成功を誇示する必要があったのか。アドラー心理学を学んで、その理由が分かりました。それは、私自身の深い「劣等感」でした。
アドラーが解き明かした「劣等感」の正体

アドラーは、「すべての人間は劣等感を持っている」と断言しました。これは、ネガティブな意味ではありません。
人間は誰もが、生まれたときは無力な存在です。赤ちゃんは一人では何もできず、大人に頼るしかない。この「無力さ」の記憶が、人間の根底に「劣等感」として残るのです。
しかし、アドラーは「劣等感は悪いものではない」と言いました。むしろ、劣等感こそが、人間を成長させる原動力だと説いたのです。
劣等感のメカニズム:
①「今の自分」と「理想の自分」のギャップを感じる(劣等感)
②そのギャップを埋めようと努力する(優越性の追求)
③成長する
例えば、「英語が話せない」という劣等感があるから、英語を学ぼうとする。「運動が苦手」という劣等感があるから、トレーニングを始める。劣等感は、成長のエネルギーなのです。
問題は、この劣等感を「健全に」使うか、「不健全に」使うかです。
「劣等感」が「マウンティング」に変わる瞬間

アドラーは、劣等感の不健全な使い方として、「劣等コンプレックス」という概念を提示しました。
劣等コンプレックスとは: 劣等感を「努力して克服する」のではなく、「言い訳」や「他者攻撃」に使うこと。
そして、その一つの形が「優越コンプレックス」――つまり、「マウンティング」です。
マウンティングの心理メカニズム: ①本当は自分に自信がない(劣等感) ②その劣等感を認めたくない ③「私は他の人より上だ」と誇示することで、劣等感を隠そうとする
私が同僚に自慢話をしていたのも、まさにこれでした。当時、私は新しいプロジェクトを任されたものの、内心は不安でいっぱいでした。「本当に私にできるのかな」「失敗したらどうしよう」という劣等感を抱えていた。だから、「私は成功している」と見せつけることで、自分の不安を隠そうとしていたのです。
会社員時代の私は、常に「誰かと比較」していました。「あの人より私の方が成果を出している」「私の方が評価されている」と。しかし、どれだけ「上」に立とうとしても、心は満たされませんでした。なぜなら、比較には終わりがないからです。常に「もっと上」がいる。そして、自分より上の人を見つけると、また劣等感に苛まれる。この悪循環でした。
劣等感を「健全に」使う3つの方法
では、劣等感を健全に使うには、どうすればいいのか。私自身が実践して効果があった方法を3つご紹介します。
①劣等感を「認める」
まず、自分の劣等感を認めることです。「私は○○に劣等感を持っている」と、自分に正直になる。
私は、あるときノートに書き出しました。「私は、本当は自信がない」「失敗するのが怖い」「周りに劣っていると思われたくない」と。その瞬間、涙が出ました。そして、不思議なことに、心が軽くなったのです。
認めることは、弱さではありません。むしろ、自分と向き合う勇気です。アドラーは「自己受容」の重要性を説きましたが、それは「ありのままの自分を受け入れる」ことから始まります。
②「他者比較」ではなく「過去の自分」と比較する
アドラーは「他者との競争をやめよ」と説きました。人と比べるのではなく、「過去の自分」と比較するのです。
私は、毎晩寝る前に「今日、昨日の自分より成長できたことは?」と自問するようにしました。「新しいスキルを学んだ」「苦手な人に話しかけられた」「早起きできた」など、小さなことでいい。
すると、「他者より上か下か」ではなく、「自分は前に進んでいるか」に意識が変わりました。他人と比べて一喜一憂することが減り、心が安定したのです。
③劣等感を「貢献」のエネルギーに変える
アドラーは「優越性の追求」を否定していません。むしろ、「共同体のために貢献する」という形で優越性を追求せよと説きました。
私は考え方を変えました。「自分が上に立つ」ことではなく、「チームに貢献する」ことを目標にしたのです。
会社員時代の後半、私は後輩の指導を任されました。最初は「私の方ができる」という優越感がありました。しかし、あるとき、後輩が私の教え方で成長し、「ありがとうございます!」と笑顔で言ってくれた。その瞬間、「ああ、これが本当の喜びなんだ」と気づいたのです。
「自分が上に立つ」のではなく、「誰かの成長に貢献する」。この視点が、私の劣等感を健全なエネルギーに変えてくれました。
アドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と言いましたが、その多くは「比較」から生まれます。
マウンティングも、劣等感も、すべて「他者と比べる」ことから始まります。しかし、人生は競争ではありません。それぞれが、それぞれのペースで、それぞれの道を歩んでいる。
私が会社員時代に学んだ最大の教訓は、「劣等感は敵ではない。むしろ、自分を成長させてくれる味方だ」ということでした。
もし今、あなたが誰かと比べて苦しんでいるなら。もし、マウンティングをしてしまって後悔しているなら。まずは、自分の劣等感を認めてあげてください。「私は、本当はこう感じていたんだ」と。
その一歩が、あなたを「比較の地獄」から解放し、「自分らしく生きる」道へと導いてくれるはずです。
【著者プロフィール】 あい / アドラー心理学講師・著者 2児の母。アドラー心理学の実践で、たった3カ月で家族崩壊から家族円満へ変化。2024年起業。「思考のクセ診断」を開発し、100名以上の子育て・自己実現をサポート。関西・大阪万博登壇。国際アドラー心理学会(IAIP ASIA2026)日本代表。10カ月連続ベストセラー著書『アドラー流子育てやってみた』。Instagram: @ai_sensei_0310
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