難聴で会話にストレスや悩みを抱えていた私のメタバースでの取り組み

高野 恵利那

高野 恵利那

2023.08.16
高野 恵利那

高野恵利那さんは、自らの聴覚障がい経験を元に、メタバース聴覚障がい者コミュニティ『みみトモ。ランド』を運営し、手帳のない障がい者が安定して収入を得ることを目指しています。コラム第1弾では、高野さんの歩んできた道のりや、目指すビジョンなどについて語っていただきました。

私にはあの子みたいにはできないから。
できない自分が苦しくて、情けない、でもそんな自分を知られたくはない。
みんなみたいに“普通”になれない自分がイヤだった。
これは過去の私が考えていたことです。

自分自身の中に自己肯定感という言葉がなかった私が、ワクセルさんとのご縁を機にコラム配信ができることになり非常にうれしく感じます。今回よりコラム配信を連載させていただけることになりましたので、まずは自己紹介をしていきたいと思います。

自己紹介では私自身の過去の難聴によるコミュニケーションでの困難感、『みみトモ。ランド』での取り組みの概要を伝えていきます。

難聴の私の自己紹介

改めまして、こんにちは。

私は両耳中等度難聴で看護師をしている高野恵利那です。現在「障がい者手帳がない障がい者の安定した収入を得られる仕組みを作る」を達成するためにメタバース(Spatial)を活用して、聴覚障がい者コミュニティ『みみトモ。ランド』を運営しています。

最終的にはメタバースやオンライン上で働き口を作ることで、障がいがあってもなくても健常者と同じ土俵で働くことができる、仕事やプライベートを充実できるだけのお給料がもらえる人を増やしたいと考えています。

私は5歳頃に中耳炎となり治療経過の中で改善されず、両耳とも軽度~中等度難聴になりました。小学校から大学生までずっと健聴者と同じ学校に通いました。補聴器は15歳の頃に購入し、授業や仕事、聞き取れない場面の時に使用しています。

場所にもよりますが、友達との会話や家では使用していません。常に補聴器をつけていると環境によっては雑音の方が補聴器に入ってしまい、外した方が聞き取れることもあるからです。

会話におけるストレスを抱えた過去

難聴になってから、私にとっての人生の課題「コミュニケーションとは何か」が始まりました。よく第一印象は大事だと言われますよね。確かに初対面での印象は良い方がその後の関係構築にプラスになることは間違いないと思います。

ですがそこから先、長期的な関係を構築するときには何が必要だと思いますか?

私は、会話力が必要だと考えます。

人は言葉でコミュニケーションを交わし、相互の情報を共有することができます。「お互いが得た情報から話が合いそうか?」「相手は自分に興味を持ってくれているのか?」などを判断し、もっと関係を深めたいと感じた時はより親密に関わっていきます。

ですが、私は会話のすべてを聞き取ることが難しいため、周囲と仲良くなりたくても周りの人たちは何に興味を持っていて、どう話すことで相手の興味を引けるのかが分かりませんでした。仲良くなるきっかけをつかめず、聞き取れないから曖昧な返事をしてしまうことでいつの間にか人との距離が離れてしまう…。そういった経験を積み重ねてきました。

そのため、小学校時代は友達と呼べる存在がおらず、小学校4年生の時に参加したお葬式の参列者を見て、「このままでは将来誰もお葬式に並んでくれなくなる寂しい大人になってしまう」と感じていました。

それを避けるために試行錯誤しながら中学生になってやっと積極的に声をかけに行くことが出来たのですが、失敗していじめにあった経験もあります。初めての友達が出来てからも集団でのコミュニケーションの壁にぶつかり、雰囲気に合わせて話の中身も分からずに笑顔でいたら、自分の存在意義が分からなくなりました。

孤独感やむなしさに包まれて、私は自分のことをつまらない人間だと思い、普通になりたいと常に考えていました。今では普通という概念すら自身で作り上げた虚像なのだと思っているので、私は私らしく生きていけたらそれで良いと考えています。

看護師を選んだ理由と難聴の私の社会での限界

コミュニケーションに悩みストレスを抱えていた経験から、中学生の時に同じように障がいを抱えて困っている方の支援がしたいと考え看護師を目指しました。いざ看護師になってみると医療従事者でさえ、聞き取りにくいことに対する理解が得られないことが多く、差別を受け、弊害を感じることもありました。

そこで私は病院の中にいる患者さんではなく、退院してからの生活が長い地域で生活している障がいを抱えた方の支援がしたいことに気づきました。異業種での転職活動もしましたがうまくいかず、手帳がない障がい者の転職活動の厳しさを知りました。

障がい者雇用枠での転職サービスは手帳がないと使えないですし、健常者と比べられてしまう状況では障がい者雇用率を達成するわけでもない私のようなグレーゾーンはなかなか企業側も雇いにくい現状があります。

転職活動の中で難聴者はうつ病の発症リスクがかなり高いことを知り、精神科看護師をしながら私自身の目的達成に向けて活動しようと決断しました。

まとめ

高野 恵利那

私は難聴のため言葉が聞き取りにくく、言語でのやりとりが不十分であったことから以前は人間関係の構築が難しかったです。社会人になってからも聞こえにくいことによる苦悩を抱えていて、そういった体験をする方が増えないように現在、目的達成のために活動をしています。

メタバースやオンライン上での雇用を生み出せるように、今後も様々な活動に取り組んでいこうと考えています。

次回以降のこちらのコラム配信では、運営メンバーの紹介や『みみトモ。ランド』での取り組みの詳細、難聴当事者のコミュニケーションにおける体験や対策方法などについて配信していきたいと思います。

みみトモ。ランド公式ホームページ:https://mimitomoland2023.my.canva.site/

みみトモ。ランド公式Twitter:@ERI77428

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