メタバース聴覚障がい者コミュニティ『みみトモ。ランド』の挑戦「障がい者雇用の概念を変える」

高野 恵利那

高野 恵利那

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高野恵利那さんは、大学を卒業後に看護師として勤務。看護師のかたわら、自身の両耳中等度難聴による経験から「手帳を持っていない障がい者が安定した収入を得られる仕組みを作る」ことを目的とし、メタバース聴覚障がい者コミュニティ『みみトモ。ランド』を立ち上げました。自らの体験から、障がい者が不自由なく働く社会のために奮闘する高野さんに、立ち上げたきっかけや、今後のビジョンについて伺いました。

自身の経験から看護師を目指すことに

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私は幼稚園の時に難聴となって、小学校ではコミュニケーションの取り方がわからず、心を許した友人は一人もいませんでした。会話を十分に聞き取ることができず、相手が何に興味を持っていてどういった話し方をすれば興味を引くことができるのかが分からなかったため、何を話せば良いのか、どうやって話しかけるべきなのか分かりませんでした。

小学4年生の時にクラスメイトの親の葬式に参列し、「このままだと将来誰も自分のお葬式に並んでくれない寂しい大人になる」と危機感を覚えました。その思いから、6年生になってクラスメイトに話しかけてみたものの、なかなか会話は続きませんでした。

このままではこの先もずっと孤独のまま苦しい状態が続くと思い、、中学デビューを目指してまずは積極的に話しかけることを実践しました。しかし、急にコミュニケーション能力が上がるはずもなく、友達づくりに失敗して、時にはいじめられることもありました。

中学校3年生で初めて友達と呼べる存在ができ、嬉しかったのですが高校生になって今度は集団でのコミュニケーションの壁にぶつかりました。すべての会話が聞き取れる訳ではないため、話の半分以上は聞き取れないがゆえに愛想笑いをするしかなく、自分はここにいるはずなのに存在していないような感覚になって、孤独感と虚無感を感じるようになりました。

これらの経験から中学生の時に「将来は自分も障がいを抱えて困っている人の支援ができるポジションになりたい」と思い、一番身近にあった看護師を目指すようになりました。

しかし、看護師として働くなかで医療現場でさえも障がいによる差別や弊害があることを知りました。その一例として、前例のない疾患を抱えた患者の退院支援に苦戦し、満床のときであったため残業して仕事をするしかない状況で、以前勤めていた病院の師長から「仕事が出来ない人間に支払う残業代はない」と言われ悔しい思いをしました。

また、耳が聴こえにくいことで一人の医師には挨拶しても無視されるなど、存在を認識してもらえずコミュニケーションに苦労しました。

以上の経験から私は、病院にいる患者ではなく、退院してこの先長く障がいと向き合いながら働いて生活していく人の支援がしたいことに気づきました。どうすれば達成できるかと目標を常に更新しながら、色んな人との対話があって今の自分がいます。そして、現在はメタバースを活用した聴覚障がい者のコミュニティを立ち上げて運営をするに至っています。

メタバース聴覚障がい者コミュニティ『みみトモ。ランド』

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メタバース聴覚障がい者コミュニティ『みみトモ。ランド』の目的のひとつは、ピアカウンセリングの場にすることです。当事者同士で過去に抱えてきたモヤモヤや、消化しきれなかった思いを同じように話すことは、気持ちが楽になり、自分だけではないと感じることにつながり心のケアになります。

また、対策方法をお互いにシェアして前向きな気持ちになることもメリットです。その中に精神科看護師など専門職の視点も入れていくことで、他にはない支援にもつなげたいです。

これからの時代は、たとえばイヤホンで大音量の音楽をずっと聴き続けたり、大音響のライブ参加などが原因で、世界的に聴覚障がい者が増えていくと言われています。日本でも障がい者手帳はないけど、すでに難聴かもしれないと感じている人は、推計で1430万人いると言われています。

私たちの活動は、すでに障がい者として登録されている方々だけでなく、潜在的な障がいを抱える可能性のある人々にも対応し、支援を広げていくことを目指しています。

対策方法を知っている私たちの情報は、先駆者として将来的に伝えられる立場にあります。障がい者手帳の有無にかかわらず、コミュニティの場としてメタバース上でのやり取りを広げています。

メタバースは相手の顔が見えない空間ですが、チャットや音声の時には字幕を併用するなど、さまざまな方法で視覚情報による情報補償ができて、聞こえる人も聞こえない人も聞こえにくい人も、壁を感じずにコミュニケーションを取ることができます。

リアルな会話だとどうしても苦手な音域や話し方の人がいて、会話が聞き取れずに関係構築のきっかけすら掴めないこともあります。メタバース上ではそういった弊害がなく、仲良くなるきっかけづくりや、難聴者が苦手とする集団の会話もできます。

最近では予告がなくても、夜中の10時過ぎに自然と人が集まるまでになりました。ゲームもイベントもしていないのに集まる空間はまだ他にはないと思います。

メタバースの良い点は匿名性があり個人情報が守られつつも、さまざまなコミュニケーション方法によって情報に置いていかれず、アバターやギミックで自己表現も出来るところです。また、自分の好きなように空間づくりができるので、広告を置いて趣味の和を広げ、友達づくりの場としても活用できます。

障がい者雇用の概念を変えたい

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『みみトモ。ランド』の強みは、医療の最新情報が入ることです。私のつながりで、メディバースシティという3,000人のコミュニティ空間を持っている方がいます。

メディバースシティのメンバーの中には200人近くの医者が所属していて、専門の科をメタバース上で展開しています。一般の方も参加しやすい環境で、新しい医療情報を得やすいコミュニティとなっています。『みみトモ。ランド』の入り口をメディバースシティ内に設置していただけたことで、みみトモ。ユーザーであれば新しい医療情報を取得しやすい環境になっています。

その他には、聴覚障がい者向けのアプリの情報共有もしています。当事者にとって有用なだけではなく、みみトモ。に来てくれた健聴者にとっても有用な機能があるため、健聴者とも情報共有することで、その先に難聴者がいたときに生きやすい環境づくりにつながって欲しいと考えています。

今後の展望は、メタバース上で雇用を生み出すなど、Webスキルやメタバースに関連したスキルを身につけられる教育サービスをつくることで、視覚情報のある環境で働くことのできる当事者を増やしていきたいです。手帳の有無に関わらず、聴覚障がい者が働きやすい環境づくりをすることで障がい者雇用の概念を変えていきたいと考えています。

その先に聴覚障がいだけでなく、その他さまざまな障がいを抱えた方が平等に働ける世界の実現を目指しています。まだ誰も勝ちパターンを確立していない未知の領域ではありますが、チャレンジを続けていきたいと思います。

こちらのインタビューを受けてからさらに色々と進んでいるので、興味のある方は是非みみトモ。ランドを覗いてみてください。

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