プランは後回しでいい!未経験からIT×飲食の二刀流経営者になった生存戦略

清水 大輔

清水 大輔

column_top_shimizu-daisuke.jpg

IT関連事業(DX推進、品質保証)の経営に加え、新宿にて「ほどよい酒BAR」をプロデュースする清水大輔(しみず だいすけ)さん。全くの異業種である二刀流ビジネスを軽やかに展開する清水さんに、起業にいたる意外すぎるバックボーンや、これからの時代を生き抜くための等身大の生存戦略を伺いました。

きっかけは学習塾での先生の一言

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_清水大輔さん_学習塾.jpg

私の起業の原点をめちゃくちゃ遡ると、中学3年生の時の学習塾での経験に行き着きます。当時、塾の女性塾長から、なぜか突然「あなたは将来社長になる」と言われたんです。

当時の私は「へえ、なんか言ってるな」くらいに、深く考えもしないまま「のほんほん」と受け止めていただけでした。しかし、その何気ない一言は、明確な根拠がないまま「自分はいつか社長になるんだ」という漠然とした自己イメージとして、私の頭の片隅に残り続けることになります。未来のきっかけというのは、これくらいの手軽さや安心感で始まっていいのだと、今振り返ると思います。

その後、大学で語学を学び、IT系の会社へ就職することになりますが、入社前の社長面談の時には「3年から5年以内には会社を辞めて、独立します」と言い切っていました。当時は何で起業するかも全く決まっていなかったのですが(笑)、とにかく口に出し、自分のなかで「独立」という種を育て続けていたのです。

完璧な計画を立ててから宣言する「有言実行」ではなく、まずは言葉が先にあって、後から環境が追いついてくる。言い続けることの力を信じていたからこそ、2020年のコロナ禍という大きな変化の波が来たときに、チャンスを掴むことができました。

コロナ禍で、地元の宮崎の生産者さんたちが「催事に出られなくて販路がない」と困っているリアルな声を聞いたとき、ずっと口にし続けていた「独立」のイメージとパズルのピースのように結びつきました。「それならみんなが登録できるECサイト(箱)を作って販路の一助になろう」と、一気に一歩を踏み出すことができたのです。

「最悪、就職し直せばいい」という失敗への向き合い方

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_清水大輔さん_起業戦略.jpg

コロナ禍という大逆境のなかでの独立でしたが、不思議と怖さや不安はありませんでした。当時は20代半ばでしたし、周りからも「まだ若い」と言われていたので、「最悪コケたら、またどこかの会社に就職してやり直せばいいや」とシンプルに考えていたからです。

失敗を過度に恐れて動けなくなってしまう人は多いですが、「若さ」はそれだけで、何度でも打席に立てるという最強の資産であり、最大のセーフティネットです。最悪のシナリオを「また就職すればいいだけ」と自分の中で定義し直してしまえば、挑戦へのハードルはグッと下がります。

そうしてスタートしたIT事業では、大手と同じ土俵で戦うのではなく、「ちっちゃい組織」だからこその強みを活かしています。大手の競合企業だと対応に時間がかかってしまうようなニッチな課題を、僕たちは持ち前のフットワークの軽さで「スピーディーに、ちょこちょこと」解決していく。このスピード感と小回りの良さが、スタートアップの企業さんや同業者の方々から高く評価していただける独自の強みになっています。

未経験から飲食店経営へ、「ほどよい酒BAR」誕生秘話

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_清水大輔さん_飲食店.jpg

また、3年ほど前に前職のつながりから「新宿の物件が空くから、飲食をやらないか」とお声がけをいただいたときも、この「ちっちゃい組織の生存戦略」を徹底しました。

私は飲食の経験が全くありません。そこで最初からすべてを自分で背負い込もうとせず、現場のオペレーションや料理の運営は「板さん(プロ)」を雇ってお任せし、自分は得意な「お金の管理(数字)」に専念する形を取りました。ITにはなかった「食品ロス」や「賞味期限」といった在庫リスクの壁には直面しましたが、自分の役割を明確に分担したことで、未経験の異業種でもリスクを最小限に抑えながら軌道に乗せることができたのです。

新宿の歌舞伎町の手前という、大手チェーンの居酒屋がひしめく激戦区のなかで、私たちの飲食店が生き残るために選んだのは「激戦区の隙間」を突くコンセプト設計でした。お店は最大12席ほど。ガヤガヤしたチェーン店とは一線を画す「1人でもふらっと入りやすい落ち着いた空間」にし、さらに「0軒目の酒BAR」という明確な利用動機を作りました。19時からの本番の会食や打ち合わせに向かう前に、サクッと1200円くらいでビールを1杯引っ掛け、少しだけ気持ちよくなってから本番に向かってもらう。このユニークなコンセプトが、大手には真似できない独自の立ち位置を確立させています。

店名の「ほどよい酒BAR」自体にも、実はちょっとした遊び心を仕込んでいます。酔う一歩手前の、心地よい「ほろよい」感覚を表す言葉を、あえて「ほどよい」ともじらせてもらったんです。ベロベロに酔っ払う手前の、ちょうどいい塩梅というか、程よく気持ちよくなれる感覚でお酒を楽しんでもらいたい。そんな想いを店名に込めています。

日本の魅力を世界へ届け、関わる人みんなが幸せになる会社に

見出し4画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_清水大輔さん_会社.jpg

今後の展望として、プロデュースしているこのお店を「日本が誇る素晴らしい生産者さんのものを世界へ発信できる場」にしていきたいという強い想いがあります。

最初は私の地元である宮崎縛りでスタートしましたが、世界から見れば「日本の食や価値」には凄まじいブランド力があります。海外の方から見ても、お酒だけでなく食べ物への興味関心は非常に高い。だからこそ、力としては微力かもしれませんが、日本中の一生物を作っていらっしゃる方々の「発信の場」としての役割を、この新宿の箱から大きく広げていきたいです。

ただ、そうは言っても、無理に会社を拡大して上場を目指すような大げさな成功を求めているわけではありません。現在の従業員は10人ほどですが、将来的に増えたとしても20〜30人規模の小じんまりとした組織でいいと思っています。

それよりも、私を信じて関わってくれているスタッフや、その先にいる家族、友達がみんな幸せになる組織にしたい。みんながお金の心配を過度にすることなく、やりたい時にやりたい挑戦ができる「心と環境の余裕」を持てる会社にすることの方が、私にとっては遥かに大切な価値観です。

これからも「ちっちゃい組織」だからこそのフットワークの軽さを武器に、日本各地の生産者さんの魅力を世界へ届けていきたい。関わる人みんなが心と環境に余裕を持てる会社であり続けることが、私にとって一番の目標です。

著者をもっと知りたい方はこちら