学びについて②

永松 茂久

永松 茂久

2022.05.20

本コラムでは、ベストセラー作家・永松茂久さんから見た、社会においてすばらしい結果を出す人の共通点を2回に分けてお話します。前編のコラムでは、子供が社会に出て自立していくにあたって大切なことをお伝えしました。今回の後編では、「具体的にどんな勉強をしておくと社会で役に立つのか」についてお話します。

そもそも勉強をしたほうがいいのか?

学歴社会の限界

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いまこうして著者という仕事をしていますが、実は私の会社は人財育成(あえて財としている)の会社です。正確にいうと、人財と呼ばれる人を育成するための事業の一環として、本を書いているというのが正しいでしょう。

これまで、たこ焼き屋から飲食店経営という実業の世界で経験したことをもとにして、出版や講演、経営のコンサルティングやプロデュース業をやっているのです。講演だけでなく、実際にいろんな会社に行って、社内の仕組みの再構築や、モチベーションアップなどの現場にこれまでたくさん触れてきたことで、確信していることがあります。

それは社会に出てからの生きる力と学歴はほとんど関連していないということです。これはある意味一生懸命勉強してきた人からしたら否定したくなるかもしれませんが、いったん聞いてください。

勉強する意味を考えたことはありますか?

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矛盾するようですが、「勉強しなくていいのか?」と聞かれると、私は即座に「それは絶対にしたほうがいい」と答えます。

しかし、私の言う勉強は学校でいう英語、数学、理科、社会、国語といった主要5教科のことではありません。コミュニケーションや考え方といった人間に関することや、仕事に直結する専門分野のことです。5教科の中で1つだけ「これはやっておいたほうがいい」とあげるとすれば国語でしょうか。

なぜ多くの人が勉強したがらないのでしょうか?

その1番の原因は、「なんのためにやるのか意味がわからない」ことだと思います。例えば因数分解や物理など、そうした難解なものが社会に出てなんの役に立つのかまったく意味が分からないからやりたくないのです。仕事でも、なんのための作業なのか分からないことに対してモチベーションが上がらないのと同じように、意味が分からないことに一生懸命になるのは難しいでしょう。

逆に意味がわかれば人のモチベーションは一気に上がります。将来医者になってたくさんの人を救うと決めた人には、物理や数学をする意味が見えます。東大に行って官僚を目指すのなら、5教科すべてに精通することに大きな意味を持てます。

しかし、進む道が美容師だったり、料理人だったり、どこから考えても将来において使いそうにないものに対して意味を見つけろと言っても、それは問題を解きこなすことより難しいでしょう。意味が分からないことに対してやる気が出ないのは至って普通のことなのです。

それでも一生懸命やっている人のモチベーションを探してみたときに、「いい学校に行かないと将来がダメになる」という、世間一般に流れる強迫観念に対しての言いなりになっている以外の理由が私には見つかりません。

必要なのは学歴ではなく学ぶ意識

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私はおそらくあなたより社会経験が長く、仕事の特性上、実際に社会においてすばらしい結果を出す人をたくさん見てきましたし、お手伝いをしてきた中から大成功する人もたくさん見てきました。その人たちはすべてが高学歴の人ではありませんでした。高卒だったり、高校に行っていない人もたくさんいました。

しかし、うまくいったのにはある共通点があります。それは「学歴をあてにせず、社会に出てから学んだ人である」ということです。社会に出ると、明確な仕事につきます。そしてその仕事仕事によって、それぞれが持った必要な知識がある。ここにまとを絞って学ぶのです。そうすることでただなんとなく仕事をしている人たちの群れから頭1つ抜きん出ます。

社会に出てから勉強すべきこと。

1つ目は「その仕事における専門知識」です。

これは自分の仕事に当てはめて考えてください。

そして2つ目が人間学です。

社会はいろんな人間で構成されています。若い人からお年寄りまで、いろんな世代で作られているのが、学生と全く違ったところでしょう。周りの人に好かれるか、嫌われるかで、社会生活は180度違ったものになります。そこで必要なものは、コミュニケーション能力だったり、礼儀だったり気遣いだったりという、人間の気持ちをつかむ力です。

にもかかわらず、この人間学はほとんどと言っていいほど学生時代に学べる場所がありません。現に自分が生きている会社や組織にはいろんな考えの人が存在するというのにもかかわらず、です。こうした生き方の知恵も、学ばないままぶっつけ本番でいくと、苦労することは目に見えている。だからこそ人間学を学ぶ必要があるのです。

そして3つ目。

先ほど5教科の中で、いま流行りの英語ではなく、あえて「国語」を挙げました。海外に行って違う国の人と交流できることはすばらしいことです。しかし、その前に日本人である私たちは、日本語を使って人と交流する。相手の言葉を理解したり、相手の意図を汲み取ります。そのときに一番必要なのが、国語。まずはここが基本じゃないでしょうか。

そしてこの人間学や日本語を学ぶのに一番手っ取り早いのが、本を読むことです。

ですから私は、いまこうして人財育成の仕事をする中で、本に一番の軸を置いています。それが人間学であれ、専門知識であれ、社会に出て本を読む習慣を持つと恐ろしいほど役に立つのです。

専門知識を学ぶ。人間学を学ぶ。本を読む。この実学の3点セットを習慣化すれば、必ず社会において役に立ちます。いろんな人を見てきた中で、私はそう確信しています。

社会に出た後に、本当に大切になってくるのは、「学歴」ではなく、「学ぶ意識」なのです