ウルトラファインバブルでSDGsに貢献。ジェンダーギャップを乗り越え「日本人女性のロールモデルになりたい」

伊藤 夏美

伊藤 夏美

2023.02.27
アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム _ 伊藤 夏美さん_

ウォーターデザインジャパン社の共同創業者である伊藤夏美さんは、SDGsに貢献するウルトラファインバブルの事業を展開しています。幼少期から海外に触れてきた経験から、「日本と海外の架け橋になる」と、さまざまなことにチャレンジしています。本コラムでは、これまで伊藤さんが感じてきた日本と海外のギャップや、これからの展望について伺いました。

スタートアップ企業でさまざまなことを経験

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 伊藤 夏美さん_

私はウォーターデザインジャパン社の共同創業者としてPR・海外展開を担当しています。取り扱っている製品を日本だけでなく、海外でも展開して広めていくために日々活動しています。

これまでの経歴としては、8〜12歳まで父の仕事の関係で台湾に住んでいて、中学から日本に帰ってきました。大学は日本ではなくアメリカのペンシルバニアの大学に留学し、経営と美術を専攻していました。

大学でアートの活動をしていた頃、言語の壁をなくす翻訳機の動画をFacebook内で見つけました。Apple製品のようにかっこいい魅せ方をしていたのでとても印象に残ったのです。その企業に入りたいと思って問い合わせをしたのですが、タイミングが合わなくて面接には至ることなく連絡が途絶えてしまいました。

その会社は日本企業だったので、帰国したときに意を決してアポイントも取らずに社長に会いに行きましたが、門前払いをされてしまって結局は社長に会えず。諦めずにもう1度メールを送ったら、しつこく連絡をしたのが功を奏したのか、なんとか面談にこぎつけました。

彼らはスタートアップで新卒採用の経験がなく、まずはインターンとして働かせてもらえることに。社長を見つけては少しでも話を聞こうという前のめりな行動が気に入られ、入社3日目くらいで新しいプロモーション動画の作成や、海外出張を命じられたりするようになりました。

働き始めて1年くらいで、英語圏の市場展開のために上司と共にサンフランシスコへ。デジタルマーケティング、コンテンツ制作、海外展開、カスタマーサポートなど、商品ローンチからその後のマーケティング全般の業務をやらせてもらいました。

日本と海外の中間にいる自分だからできること

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 伊藤 夏美さん_

いろんな人と話していると、「日本市場はガラパゴスで、外資系の企業が日本に入るのは難しい」「日本の技術は世界で評価されているけど、ビジネス転換は弱い」などと言われていました。

私は幼少期から、日本にいると日本人には見られず、海外に行くと日本人と言われるような中間の人間だったので、それならば日本と海外の架け橋になれると思ったのです。日本人というバックグラウンドを生かしながら、日本のすばらしい技術を海外に持っていきたいと考えるようになりました。

その後、トルコの外資系スタートアップの会社にヘッドハンティングされて1年ほど働いた後にフリーランスとして独立。いろんな人とネットワーキングをしましたが、そこではグローバルに適応できる技術を手がけているような人には巡り会えませんでした。だったら自分でやろうと思い、そこから起業することに興味を持ちました。

さまざまなところに出向くなかで、今一緒に会社を経営している弊社の代表と出会い、仕事を請けるようになりました。依頼のなかのにあったのがウルトラファインバブルの動画作成。「これは面白そう」と思ったので、ウルトラファインバブルについて詳しく勉強しました。そこから、ウォーターデザインジャパンをみんなで登記して、技術展開の本格的な活動を始めたのが経緯です。

ウルトラファインバブルでSDGsに貢献

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 伊藤 夏美さん_犬シャンプー

ウルトラファインバブルは現在、洗浄目的で使われることが大半です。日本は水質が良くて水資源が豊富ですが、海外では「水の戦争」が起こると言われるくらい貴重な資源なのです。汚れた水を循環して使えるようにするために薬品を入れますが、薬品を入れすぎると循環させる機械の寿命が短くなります。

私たちが扱っている製品はノズルで、水の中に元々含まれている空気成分をノズルに通すことによってナノ化し、「ウルトラファインバブル」と言われるナノサイズの微細な泡を発生させます。泡が汚れの下まで入り込み、汚れを剥離することによってメンテナンスコストの削減などに繋がっています。

この技術が本当に使われるべき場所を世界中で探し、そこへアプローチしています。そして将来的には、全世界の全建物にウルトラファインバブルを入れたいと思っています。実現するにはものすごくパワーが必要なので、正直私が生きている間でかなうかわかりません。

そこで技術自体の認知度を上げるために、BtoC向けの犬用シャンプーのブランドをローンチしようと動いています。犬のシャンプーは海外展開しやすいので、ゆくゆくは海外に持っていきたいと考えています。シャンプーなどの日用品は必ず使うものなので、新しい分野でこの技術を使ってもらえる状態にして、最終的に人が使うものも出していきたいと計画しています。

良い技術だけど、売り方を考えた方が良いものは日本にはたくさんあります。ビジネスとして技術展開をうまくやらなければいけません。良いものを持っていても風呂敷を広げているだけでは売れないので、コネクションなどの戦略が必要になると思います。

ペット市場は伸びているし、マーケティング的にも面白そうなことができそうなので、これをきっかけに日本の技術を海外に展開していきます。

チャレンジし続けることで女性のロールモデルになる

見出し4画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 伊藤 夏美さん_

人生は1回きりなので、私はやりたいことがあったら何でもやった方が良いと常に思っています。日本には「チャレンジして失敗したら終わり」という文化がありますよね。海外では1回失敗している起業家に対しては高い価値がつくと言われています。

なぜなら、1回失敗してそこから学びがあったなら、もう1回やったらもっと上にいけるはずと思われているので、失敗している起業家は評価が高くなるというのが向こうの考えです。どちらかと言うと私のマインドは海外寄りですね。

それと、日本ではジェンダーギャップをすごく感じています。1社目のときの上司が女性の方で、彼女が私の最初のロールモデルでした。ステージが上がれば上がるほど、自分が関わっている人が変わっていきます。

しかし、上に行けば行くほど、日本は女性の代表やロールモデルになっている人は少なくなっているように感じます。だから、若い子や学生のロールモデルに、私がなることを決めて、日々仕事に励んでいます。

今はサステナブルやSDGsがすごく注目を集めていて、SDGsに興味を持っていると言うと意識高いと思われますが、私にしてみたら普通のことです。私たちがやっているのは、「このノズルをつけていれば、誰でも勝手にSDGsに貢献している」という状態を創り上げることです。

ウルトラファインバブルはそれが実現できる技術だと思っているので、今年は特に力を入れてがんばっていきたいと思っています。