「税務署は見ている。」の著者“おかん税理士“の~調査官目線を知って経営に活かそう!~vol.4

飯田 真弓

飯田 真弓

2022.09.26
アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_飯田真弓さん_税務TAX

 ワクセルコラボレーターで元国税調査官の“おかん税理士”こと飯田真弓さんに学ぶ、税務の知識。連載コラム第4回は、「税務調査の最盛期はいつなのか?」というテーマです。年間のスケジュールにもとづきながら分かりやすく解説していただきました。

秋は税務調査の季節?!

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_飯田真弓さん_税務TAX

ワクセルのコラムをご覧になっている皆さん。

こんにちは。国税勤務26年、元国税調査官“おかん税理士“の飯田真弓です。

猛暑日が続いた夏が終わり、朝夕は凌ぎやすくなってきました。そろそろ秋ですね。秋と言えば、スポーツの秋、読書の秋、行楽の秋、食欲の秋、などなど。何をするのにも適しているこの季節。税務署で働く調査官たちにとっては、“税務調査の秋“という感じでしょうか。

「えっ?それって、どういうことなん?」

と、言う声が聞こえてきそうですね。経営者のみなさんにむけて、税務調査について、講演やセミナーでお話をさせていただくと、

「税務調査って、いつが最盛期なんですか?」

という質問をよく受けます。そんなわけで、今回は、税務調査の最盛期はいつなのか。税務署の一年間の仕事の流れを確認しながら、見ていきたいと思います。

税務署の事務年度

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_飯田真弓さん_ひらめき

まずは、税務調査を行う国税局や税務署の事務年度を確認しておきましょう。

フリーランスの方が、確定申告をする場合、1月1日~12月31日をひと区切りとして決算を組むということはご存知かと思います。“暦年“と言ったりもするのですが、暦通り、1月1日から始まって12月31日に終わるということが決められています。

一方で、法人の場合は、独自で事務年度を決めることができます。一般的に官公庁の事務年度は、4月1日~3月31日です。一般の法人も4月1日〜3月31日が多いかと思います。でも、税務署や国税局に関連する組織は、7月1日から6月30日が事務年度なんです。

その理由として、3月には国税の大きなイベントである確定申告があり、その時期に事務処理があるため、事務年度の時期をずらしたのだと言われています。税務署や国税局は定期異動が7月にあり、新メンバーが顔を揃えると税務調査の準備に入ります。

私が国税の世界に入った頃は、クールビズという言葉もなく、定期異動で新たに赴任することになった税務署に挨拶に行く職員は、暑いのにスーツに身を包んでいました。暑い中、昼間、黒い上着を手に汗を拭き拭き電車で移動している人をみかけると、国税の人間だと一目でわかりました。国税の世界では、一年の仕事を隠語で区切っています。 

7月〜12月は、数字のまま、ナナジュウニ。

1月1日〜2月15日までは、確定申告に入るまでの時期なので、確申前(カクシンマエ)。

2月16日〜3月15日の確定申告の時期を、確申期(カクシンキ)。

3月16日〜3月31日までは、確定申告の期限の後という意味から、期限後(キゲンゴ)。

4月1日〜6月末までは、数字のままヨンロク。

税務署のことを会社と言ったり、税務署長のことをお父さんと言ったり、統括官のことを課長と呼んだり…。地域によって若干の違いはあると思うのてすが、日常の会話の中から、一般の人に税務署や国税局で働いていることを知られないように、先輩から、職場を出て会話をする際は、隠語を使うように教えられました。

では、順を追って、その時期にどんな仕事をしているのか、書いていきましょう。

税務調査の年間スケジュール

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_飯田真弓さん_スケジュール

まずは、ナナジュウニ。定期異動があって、新しいメンバーになり、税務調査の対象となる事案も洗い替えとなります。どの調査官もあらたな気持ちで仕事に取り組もうという気持ちになるんですね。

税務調査に集中できるのは、確定申告以外の時期で、ナナジュウニとヨンロク。ナナジュウニは、6ヶ月ありますが、ヨンロクは3ヶ月の半分です。時期が長いことと、12月までに、進捗状況を報告しないといけないなどの理由から、前倒しで、ナナジュウニに、高額悪質な案件に着手することが、多くなります。

次に、1月1日〜2月15日までのカクシンマエ。本来、確定申告は、2月16日〜3月15日なのですが、サラリーマンの方などの還付申告は、年が明けると受け付けることになっているので、その業務に追われることになります。

2月16日〜3月15日は、言わずと知れた確定申告、カクシンキで、国税局や税務署の中で、個人課税部門では、ほとんど税務署は行われません。所轄の税務署でも法人の場合や、国税局の査察部門などは、確定申告に関係なく税務調査で動いている部署もあります。

3月いっぱいは、消費税の確定申告書の受け付けもあり、まだ、税務調査のモードには入りません。4月に入って、ゴールデンウィークの前くらいから、ぼちぼち、税務調査の事前通知がなされる感じでしょうか。

実際に税務調査に行くのが、ゴールデンウィーク明けになるとすると、実質、ヨンロクは、5月と6月の2ヶ月しか税務調査できないという感じなのです。

税務署は3年泳がす

見出し4画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_飯田真弓さん_足跡

いかがでしょうか。9月から10月にかけてスタートするナナジュウニの時期に税務署から税務調査の連絡があった場合、本気の事案の場合が多いでしょう。税理士さんと顧問契約している場合、税務調査の連絡は、その税理士さんのところに電話がかかってくると思います。

税理士さんに頼まず、確定申告書を提出し続けて、「かれこれ、3年になるなぁ」というような方。そろそろ、税務署から、電話があるかもしれませんね。知らない番号から、着信があったら、無碍にせず、どこからの電話か確認して、税務署からだったら、折り返し電話をして、税務調査の連絡かどうか確認しましょう。税務署は3年泳がせてますからね。御用心あれ。

「税務調査の秋」な~んて言葉はありませんが、9月から10月にかけて、税務調査の連絡が入ったら、不正を働いていて多額の追加の税金を見込んでいる納税者と思われている証拠かも知れません。

「これってどうなんだろうって思いながらやってたことがやっぱりダメで、それが見つかったのかも…」

そんなことにならないように、少しでも不安に思うことがある時は、○○コンサルタントではなく、税理士の資格を持った人に相談することをお勧めしておきますね。