男装くん
Tiktoker
イベント企画
シンガーソングライター
育児系エンターテイメントパフォーマー

SNSの総フォロワー数が約90万人のコスプレイヤー『男装くん』の連載コラム第9弾です。何度アカウントを作り直しても、再生数は300回程度。頑張っているのに、なぜか誰にも見てもらえない。そんなSNS初期の試行錯誤の中で、私はあることに気づきました。「きっと、何者でもない私には興味がない」。だったら、自分を見てもらおうとするのではなく、すでに人が集まっている世界に自分を置いてみよう。そこで出会ったのが、大好きだったキャラクター「マイキー」でした。

何度アカウントを作り直しても、結果は同じでした。
100回程度しか再生されない。
よくても300回ほど。
コメントはほとんどつかない。
ハッシュタグを変えてみる。
投稿時間を変えてみる。
テロップを変えてみる。
流行っている音源を使ってみる。
それでも、全然伸びない。
何度も挑戦して、何度もアカウントを作り直して。
気づけば5回以上は繰り返していました。
そして、ある時ふと思ったのです。
「きっと、何者でもない私には興味がないんだ。」
芸能人でもない。
有名人でもない。
特別な実績があるわけでもない。
そんな私が、
「今日はこんなことをしました」
「これを食べました」
「私はこんな人間です」
と発信したところで、誰が見たいんだろう。
そこで、考え方を変えました。
「私を見て!」と自分を押しつけるのではなく、すでに人が集まっている場所に、自分を置いてみたらどうだろう?
当時は、今ほどSNSについて詳しいわけではありません。
でも、伸びている動画をひたすら見ているうちに、少しずつ見えてきたものがありました。

ちょうど私は、30歳を過ぎて初めてアニメにハマっていました。
『鬼滅の刃』
『進撃の巨人』
『呪術廻戦』
そして『東京リベンジャーズ』。
今までほとんどアニメを見てこなかった反動なのか、もう完全に夢中でした。
だからTikTokやYouTubeでも、自然とアニメ関連の動画を見るようになりました。
特に気になったのが、コスプレイヤーや、海外の人が日本のアニメを見てリアクションする動画、そしてオタ活を楽しんでいる人たちの動画でした。
そこで、改めて気づいたことがあります。
「日本のアニメって、こんなに世界中の人が見てるんだ。」
日本の作品なのに、海外の人たちまで夢中になっている。
そして、好きな作品について話している人たちは、本当に楽しそうでした。
「これなら、日本だけじゃなく海外の人にも見てもらえるかもしれない。」
「アニメが好きな人たちなら、好きなキャラクターを見たいんじゃないか?」
そんなことを考えるようになりました。
そこで、当時私が一番ハマっていた『東京リベンジャーズ』を思い浮かべました。
私が一番好きだったキャラクター。
それが――
マイキーでした。
「……マイキー、やってみようかな。」
ふと思ったのです。
もちろん、この時点ではまだコスプレイヤーになろうなんて考えていません。
衣装の作り方も分からない。
本格的なメイクもできない。
そもそもコスプレの知識なんてほとんどありません。
でも、偶然にもマイキーは
身長もほぼ同じ。
たれ目なところも少し似ている。
しかも、当時は主治医から肌への負担を考えてメイクを控えるように言われていたので、濃いメイクをしなくても近づけられるキャラクターの方が都合がよかった。
「もしかして、なれるんじゃない?」
そう思いました。

さっそく病室を見渡しました。
使えそうなものはないか。
持っていたウィッグ。
メイク道具。
病室に置いていた服。
足りないものは、病院内のコンビニで探しました。
「これ使えるかも。」
「これなら近づけられるかな?」
病室の中で、ひとつひとつ試していきました。
もちろん、本格的なコスプレイヤーのような衣装があるわけではありません。
でも、限られた環境の中でできることを考えるのが、なんだか楽しくなってきました。
そして、鏡を見てみる。
「……あれ?」
思っていたより、近い。
「結構マイキーっぽくない?」
自分で作っておきながら、ちょっとテンションが上がりました。
何度もアカウントを作り直して、
何度投稿しても伸びなくて、
体力も精神力もかなり削られていた頃。
それでも、この時だけは少しワクワクしていました。
「これなら、今までとは違うかもしれない。」
私は、自分自身を見てもらおうとすることをやめました。
代わりに、みんながすでに興味を持っている世界に、自分が入っていく。
それが、私が初めて見つけたSNSの攻略法でした。
そして病室の中で、私はマイキーを作りました。
この時はまだ知りませんでした。
この病室で生まれた一人のキャラクターが、後に私の人生を大きく変えることになるなんて。
そして――
ここまで何度も作っては消してきたSNSアカウントに、私はもう一度だけ賭けてみることにしました。
これを最後の挑戦にしよう。
そう決めて、私は新しいアカウントを作りました。
その名前は――
「男装くん」
次回、いよいよ「男装くん」として、最初の一本を投稿します。
病室で作った、たった一本の動画。
果たして、その反応は――。