会社役員、大学院講師、そして花火師!経験と人がつながる生き方

岡田 慶子

岡田 慶子

2026.10.25
column_Okada Keiko

「パラレル活動家」として多角的な視点を持つ岡田慶子(おかだ けいこ)さんの連載コラム第24回です。今回岡田さんが紹介するのは、会社役員、大学院講師、そして花火師として活動する長谷川徹(はせがわ とおる)さん。その時々の選択や学び、人との出会いが、思いがけない形で次の仕事や活動につながっています。多彩な活動を続ける長谷川さんの歩みから、自分らしいキャリアを育むヒントを探ります。

先に差し出されたのは、花火師の名刺

見出し1画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_岡田 慶子_花火師の名刺

知人に紹介されて長谷川徹さんと初めて会った、15年以上前の名刺交換の出来事が、強く印象に残っています。会社員と聞いていたのに、差し出されたのは“花火師”と書かれたもの。

もう一枚が出てくるかと思えば、幾度も催促して別れ際に(しぶしぶ、という感じで笑)渡してくれたのが、企業名の入った名刺でした。

聞けば、学生時代のバイト先のオーナーとの縁が続いており、その方の活動の一環である花火の打ち上げに参画し、その後ずっと活動しているというのです。つまり、彼にとっては、会社に入る前から続けていた“花火師”の名刺を先に出すのが当然と言わんばかり。当時の私には、そんな初対面がとても新鮮でした。

その後、長谷川さんが実際に打ち上げるという花火大会に誘われ、友人と何度か見に行きました。長谷川さんが担うのは、花火をつくることではなく、打ち上げること。「プライベート花火大会」と銘打ったそのイベントは、有志数十人による非公開の催しで、観客は招待制です。聞けば、彼らは夏の賞与をぶち込んで開催してくれているとのこと。彼らの活動への情熱にも、仕掛け花火や尺玉まである豪華な花火を河原でゆったりと見せてもらえることにも、感動しきりでした。

見出し2画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_岡田 慶子_ツーショット

その後も仕事でご一緒する機会はなかったものの、互いに転職などで環境が変わるタイミングで連絡をとりあったり。振り返れば、15年以上のお付き合いです。

そんな長谷川さんは、コロナ禍の少し前から仕事の都合などで花火の活動から少し離れていましたが、今年になって「久しぶりにやります!」との連絡をいただき、友人に声をかけて久しぶりの会場へ向かいました。混雑のない河原にビニールシートを敷いて、真上に上がる大きな花火に、改めて感動。

その後、近況を報告し合おうと、現在お勤めの会社を訪ねました。
じっくりお話を伺い、長谷川さんの仕事や学びの歩みに改めて触れることができました。

「好き」だけでは選ばなかった

見出し3画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_岡田 慶子_好きだけでは選ばなかった

長谷川さんは、好きだった物理を学ぶため都内の大学に進みます。ところが、実際の授業は想像していたものと違い、大学を離れることに。その後、「好きなこと」よりも「自分が続けられること」に取り組むことのほうが重要だと考え、子どもの頃から親しんでいたコンピューターを学ぶ道を選びます。専門学校を経て大学に入り直し、社会人になったのは20代半ばでした。

最初から目指す職業や将来像を絞り込んでいたわけではなく、学生時代のインターンをはじめ、その時々に関心の向く方向へ、また期待を寄せて声をかけてもらった仕事へとキャリアを進めます。人事コンサルティング、事業開発、投資、会社経営、組織づくり…なかなか興味深い変遷です。

出会った頃は、事業会社での新規事業開発や投資事業に携わっていました。その後、数十人の会社の社長を任されたときには、経営やマネジメントを学ぼうと社会人大学院へ。必要だと思ったことを、その都度学び、実際の仕事で試していく行動力には尊敬の念しかありません。ベンチャー企業へ転職すると聞いたときにも、役職や安定性よりも、事業の新規性や発展性、メンバーとの成長を重視する判断基準に強く共感したことを覚えています。

後からつながる経験と人

見出し4画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_岡田 慶子_後から繋がる

長谷川さんが、お話の終盤で強調したのは、「Connecting the dots」。これは、Appleの共同創業者、スティーブ・ジョブズの言葉として有名ですが、その時には意味やつながりが見えなくても、振り返ると、かつての経験が今につながっているということ。私も大切にしている考え方です。

さらに「いま、目の前にある仕事に愚直に向かい合っていこう」というメッセージ。先の見通しが立たなくても、今取り組んでいることが、後の仕事や経験につながっていく。必要を感じるたびに学び、その学びを仕事で試してきた長谷川さんの歩みと重なります。

また、長谷川さんが共感する「計画的偶発性理論」も、ただ偶然を待つという話ではありません。新しいことに関心を持ち、選択肢を閉ざさず、結果が不確かでも動いてみる。その行動が、次の思いがけない機会を生み出していくという考え方で、ここにも大きな共感がありました。

続いて林真理子さんの『野心のすすめ』にあった、「やったことへの後悔は日々小さくなり、やらなかったことへの後悔は日々大きくなる」という話が出たときにはニヤリ。私の本棚にもある一冊だったからです。目の前のことに力を尽くすこと、新しい機会に踏み出すこと。その両方を大切にしてきた姿勢が、長谷川さんの多彩な経験を今につないでいるように感じました。

最後に、「今なぜここにいるのか」という現職に至るお話がありました。

かつて経営に参画していた会社が別の企業の傘下に入り、長谷川さんはその会社を離れました。部下だった人たちも、それぞれ別の職場へ。数年後、そのうちの一人から「また一緒に仕事をしましょう」と連絡があり、他の仲間も少しずつ集まって、再び一緒に働いているというのです。

この話をするとき、普段はクールに見える長谷川さんが瞳を潤ませていたのも印象的でした。

人が力を発揮するにはどうしたらよいか。人事や経営の仕事を通じて、学び、考え、実践してきた長谷川さん。そのもとで働いた人たちが、もう一度一緒に働きたいと声をかけ、再びチームができていく。かつての部下から、改めて上司として迎えられるというのは、なんとすごいことでしょう。ともに働いてきた人たちからの信頼が、そこに表れているのだと感じました。

実は今回の花火大会で、長谷川さんが打ち上げるときだけ、ひときわ大きな歓声が上がっていました。後で聞くと、その仲間たちだったのです。

仕事をともにする人たちが、花火師としての長谷川さんにも声援を送っている。仕事の場を離れても慕われる姿に、人とどう向き合い、どんな関係を築いてきたのか、その一端を見た気がしました。

静かに続く、いくつもの活動

見出し5画像嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_岡田 慶子_続く活動

私が「パラレル活動家」として紹介したいのは、活動を大きく広げ、目立つ人ばかりではありません。長谷川さんは、どちらかといえば静かな人です。それでも新しいことを学び、人とともに仕事をし、自分で選んだ道を進む熱に溢れた方です。

現在は企業の取締役として働く一方、大学院のビジネスデザイン研究科で講師も務めています。そして花火師としての活動に加え、フィナンシェなどの焼き菓子づくりも得意だったはず。

15年以上前、先に差し出された花火師の名刺。そこから、仕事の話なども語り合う間柄へ。そして今回、仕事や学びの歩みをじっくり聞く機会をいただきました。この先には、どんなご縁がつながっていくのか……楽しみです。

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