自分の価値。

ストレッチトレーナーに転身し、全国No.1の指名を誇った和嶋俊光(わじま としみつ)さんの連載コラム第5弾です。会社を辞めて独立したものの、お客様が一人もいなかったという苦しいスタートから、自分自身の”価値”をどう定めていったのか、その道のりを綴って頂きました。
独立のきっかけ

独立した理由は、お金だった。
もっと稼ぎたかった。
有名になりたかった。
トップアスリートを担当したかった。
いつか井上尚弥選手のストレッチを担当したい。
そんな夢があった。だから会社を辞めた。
個人事業主になった。
でも、現実は甘くなかった、お客様は一人もいなかった。
正確に言えば、一人も連れていかなかった。
独立すると、前の職場のお客様に声をかける人もいる。
でも僕は、それをしなかった。
前のお客様を連れて独立するなら、僕は独立する意味がないと思っていた。
自分の力だけで勝負したかった。
だから本当にゼロからのスタートだった。
収入もない。
本気で日雇いのアルバイトを探そうと思ったこともある。
メディアにも出たり、アスリートのサポートもした。
でも、それでお客様が増えるわけじゃない。
アスリートはケアにお金をかけられるほどお金持ちではない。
結局、ボランティアのようになることも多かった。
思い描いていた独立とは、まるで違っていた。
値段という悩み

そこで、次に悩んだのが値段だった。
ストレッチはいくらが適正なんだろう?無形サービスだから比較できない。
だから前職の料金を参考にしてみて値段を上げたり下げたりしてみた。
サブスクもやってみた
思いつくことは全部試した。
ある人は「高いですね」と言う。
でも逆に“こんなメニュー、誰が頼むんだろう?”
そう思って作った高額メニューを指さして、「これ、安いね!」と言う人もいた。
その瞬間、わかった。
相場なんて、どうでもいい。
お客様全員が納得する値段なんて存在しない。
だったら、僕が納得できる値段にしよう。
僕がお客様だったら、僕のストレッチをいくらで受けたいと思うだろう?
その答えが、今の料金になった。
もちろん、値段を決めたから成功した。
そんな単純な話じゃない。
振り返れば、運が良かっただけなのかもしれない。
でも、不思議だった。
景色が変わった、決めたのは値段じゃない

自分で価値を決めてから、少しずつ景色が変わっていった。
出会う人が変わった。
今まで出会うことのなかった経営者の方々とご縁をいただくようになった。
そのご縁が、新しいご縁を運んできてくれた。
結果として、昔から夢だったトップアスリートを担当する機会も増えていった。
あれほど追いかけていた景色が、気づけば向こうからやってきた。
あの時、僕が決めたのは値段じゃない。
自分の価値だった。
だから今でも、値段は相場では決めない。
僕がお客様だったら、僕にいくら払いたいと思うか。
その答えが、今の料金。