「本当に美味しい」を届けるために!原木栽培に心血を注ぐキノコ農家の矜持

宮西 真也

宮西 真也

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京都市の豊かな里山に居を構え、希少な原木栽培キノコを手がける株式会社百里衆(おざとしゅう)。その代表、宮西真也(みやにし しんや)さんが掲げるブランド「京茸(きょうたけ)」は、単なる農産物を超え、里山と人を結ぶ架け橋としての役割を担っています。偶然の出会いから始まったキノコ栽培が、なぜ一生を賭ける事業となったのか。原木栽培へのこだわりと、その先に見据える未来を伺いました。

ブランド「京茸」の原点:予期せぬ出会いから、真摯な使命へ

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_宮西真也_京茸発足

「里山の次世代を創造し、人と自然を繋ぐ」。これが株式会社百里衆の揺るがないテーマです。しかし、私とキノコの出会いは意外にも「受動的」なものでした。

前職は京都市の森林公園の指定管理者。施設内の条例でキノコ狩り体験が定められていたため、前任者から引き継ぐ形でしいたけ、まいたけ、霊芝(れいし)の栽培を任されたのです。当初は興味も縁もありませんでしたが、遠方から足を運んでくださるお客様に、一つでも多くの美味しいキノコを持ち帰ってもらいたい。その一心で、未経験ながら独学で研究を重ねました。

転機は2023年春、公園の閉園でした。土地の運用権をめぐる競合に敗れ、一時は職を失う状況に。しかし、その時背中を押したのは「宮西さんのキノコが欲しい」と言ってくださるお客様の存在でした。10年かけて積み上げた知識と、待っていてくれる人の声。それを無下にはできないと考え、自らの手で事業として再出発することを決意したのです。

「菌床とは別物」——管理の難しさを超える、圧倒的な食味の魅力

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_宮西真也_原木栽培の魅力

私たちのこだわりは、一貫して「原木栽培」にあります。木の生命力を直接キノコに宿らせるこの手法は、現代主流の菌床栽培とは香り、食感、そして食べた時のインパクトが段違いです。もし菌床栽培しか選べないとしたら、私はキノコ農家を辞める。それほどまでに、原木栽培がもたらす美味しさには確信を持っています。

原木栽培の真髄は、いかにキノコを休ませるかという「休息の管理」にあります。人間と同様、オフシーズンの過ごし方が収穫期のパフォーマンスを左右するのです。昨今の激しい気候変動の中、発生量を安定させるには繊細な技術が求められます。

独立後の2年間は、理想とする働き方としいたけの健康状態が噛み合わず、もどかしい思いもしました。今もまだ道半ばですが、「本当にこのキノコを求めている人」を満足させるために、日々原木と向き合い続けています。

右肩下がりの業界を変え、次世代の森を育むサイクルを

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_宮西真也_フランチャイズのように

現在、キノコ業界は担い手の高齢化やナラ枯れなどの病害虫被害により、深刻な衰退局面にあります。将来、原木しいたけ農家として生き残れるのは、自ら山に入り、木を調達できる者だけになるかもしれません。

だからこそ、私たちは「森づくり」から自分たちで手がけています。木を伐り、その跡にどんぐりを植え、苗木を育てる。10年、20年という歳月をかけて森を循環させるサイクルを、自社で体現しようとしています。

さらに今後は、生産拠点の維持が難しくなった高齢農家の方々と連携し、私たちの技術や管理体制を共有する仕組みづくりも構想しています。この活動が全国に広がれば、キノコ農家が存続するだけでなく、山が守られ、生態系へのプラスの影響も生まれます。

庭先で大切に育てられてきた原木栽培の文化と、現代のマッチング。その難しさは承知の上ですが、里山の風景と美味しいキノコを次世代へ繋ぐため、私たちは挑戦を続けていきます。

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