セキュリティは「ITの話」だと思っていたけれど、実は「経営判断の話」だった

ITエンジニアとしてAI×仕事術を探求する鈴木孝幸さんの連載コラムです。「セキュリティは難しそう」と後回しにしていませんか?実は技術の問題以上に、日々の経営判断が守りの鍵を握っています。マイクロ法人や個人事業主こそ知っておきたい、リスクを「投資」でコントロールする思考法を紐解きます。
「セキュリティって大事なのはわかるけど、正直よくわからない」
「専門家に任せているから、自分が細かく考えなくてもいい気がする」
個人事業主や立ち上げて間もないマイクロ法人の経営者の友人が多く、このような話をよく聞きます。
パスワード、サーバー、ウイルス、クラウド…
言葉を聞くだけで「ITの世界だな」と思う気持ちはわかります。
でも、ここ数年のセキュリティ事故を見ていると、
多くの場合、「技術の失敗」ではなく、「判断の積み重ねの結果」だということを感じます。
セキュリティは「お金をかけて買うもの」

まず、少し現実的な話から。
セキュリティは注意していれば守れるものではありません。
お金をかけて買うものだと思います。
2025年も企業規模を問わず、サイバー攻撃や情報漏えいのニュースがいくつもあったと思います。
あとから理由を見ていくと、
・忙しくて点検を後回しにしていた
・定期的な見直しをしていなかった
・「そこまでやらなくても大丈夫だろう」と判断した
こうした、ごく普通の意思決定が原因になっているケースが多いと感じます。
事故が起きてから支払うコストは、
・業務が止まることによる損失
・顧客や取引先への説明・対応
・信頼を取り戻すための時間とお金を含めると、事前にかける対策費用を大きく上回ることが珍しくありません!
セキュリティは、完璧を目指すためのものではなく、被害を「この範囲に抑える」ための投資だと思っています。
家の防犯で考えると、実はとてもわかりやすい

少し話を身近な例に置き換えてみます。
セキュリティは、家の防犯とよく似ています。たとえば、
1️⃣ 普通の鍵をひとつ付ける
2️⃣ ディンプルキーに変える
3️⃣ オートロックにする
4️⃣ 警備会社のサービスに加入する
5️⃣ 専属のシークレットサービスを雇う
これを見て、「自分の家は5️⃣までをやるのが正解だ」と思う人は、この記事の読者には、ほどんど居ないと思います。
一人暮らしの家と、責任を抱える経営者の自宅、あるいは国家機密を抱える政治家では、守り方が違って当たり前です。
大切なのは、
・何を守りたいのか
・どんなリスクがあるのか
・どこまでお金をかけるのか
これを自分で決めるというのはイメージができると思います。情報セキュリティも構造は同じと考えます。
セキュリティのスタートは「どこまでやるか」を決めること
セキュリティ対策というと、「何を入れたらいいか」という話になりがちです。でも本当は、その前にやることがあります。
最初に決めるべきなのは、「どこまでやるか」です。
・絶対に守りたいものは何か
・どのリスクは受け入れるのか
・どこから先は致命的なのか
事故のあとに、「そこまで想定していなかった」いうことを何度か見聞きしました。
これは、技術の問題というよりも、経営判断をしていなかった結果だと思います。
マイクロ法人は狙われているのか

ここ数年で立ち上がった、年商1,000万〜5,000万円ほどのマイクロ法人の友人が結構多いのですが、「小さい会社だし、狙われないのでは?」という声をよく聞きます。
実際、名指しで狙われる確率はかなり低いと思います。
狙われるのは上場企業や行政、金融機関などでしょう。
しかし、問題はそこではありません。
一部の攻撃は、
・無差別
・自動化
・相手を選ばない
という傾向にあるといわれています。
狙われるというより、網にかかるかどうかといえばわかりやすいかと思います。
マイクロ法人は、
・IT専任者がいない
・初期設定のまま運用しがち
・セキュリティ投資が後回しになりやすい
という理由から、「当たったときに弱い」状態になりがちです。
現状を測る指標
個人的には、セキュリティの現状は下記の視点で考えると整理しやすいと思っています。
狙われる確率 × 突破される確率 × 被害の大きさ(インパクト)
マイクロ法人の場合、
・狙われる確率:きわめて低いがゼロではない(無差別攻撃には晒されている)
・突破される確率:高くなりやすい
・被害の大きさ:顧客情報の流出や資産の喪失等につながる場合は大きくなります
何も考えていなければ、「そこまで狙われていないが、網にかかれば突破されやすい」という状態に陥っていりやすいと思います。
また、被害の大きさという観点で言えば、メインの決済口座が乗っ取られたら終わりです。
マイクロ法人が講じるセキュリティの現実解

個人や立ち上げ間もない法人では、セキュリティコストはどうしても後回しになります。
大前提、ウイルス対策ソフトは導入しましょう。
次にパスワード管理についてです。
例えば「パスワードを複雑にして使い回さない」など、世に言うに対策をするに越したことはありませんが、正直、すべてを完璧に分けるのは現実的ではありません。
だからこそ、突破されたら本当に困るところ例えば…
・管理画面
・メインで使用するメール
・決済や会計に関わるアカウント
ここだけは、かなり複雑な別のパスワードにするというのでも有効打となりえます。
そして、もうひとつ「パスワードはいずれ突破されるもの」という前提を持っておくと良いと思います。
ですので、二段階認証(多要素認証)は最低限入れましょう!
これは強固な対策というより、いまの時代の「基本装備」に近い感覚です。
(注)「二段階認証を入れたから安心」という固定観念は危ないので気をつけましょう。
自分たちは「何を扱っているのか」
セキュリティの重さは、会社の規模より扱っている情報の中身で決まります。知識を持っておくことは大切です。
ありがちな例を挙げると、、
・個人情報を扱っているか
→1,000件以上の個人情報が漏えいすると、個人情報保護委員会への報告義務があります。
・クレジットカード情報を自社で保持していないか
→保持する場合は、PCI DSSという、クレジットカード会員情報の保護を目的とした、国際的なセキュリティ基準を満たす必要があります。
・マイナンバーを収集・保管していないか
→意図していなかったとしても、収集した身分証明書類にマイナンバーが含まれているとマイナンバー法に抵触する可能性があります。
今、どのような情報を持っているかを説明できるか。
というのが大切です。
最後に:セキュリティは経営判断であり、投資です
セキュリティは、ITの話に見えて実はとても経営らしいテーマです。
・お金をどこに使うか
・何を守ると決めるか
・安心しすぎない仕組みを持てているか
完璧である必要はありません。
でも、「考えているかどうか」で結果は変わります。
セキュリティはITの話ではなく、最終的には設備投資と同じようにお金をかけるべき領域だという意識改革が重要な一歩なのだと思います。
この記事が、ITの専門家でない経営者等の皆さまが、少しでもセキュリティ意識を高め、身近な方と議論をするきっかけになれば嬉しいです。
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