海辺の安心・安全を守る『渚の交番』が青島の海から宮崎を元気にする
「海の安心・安全を守り、誰でも楽しめる海づくりをする」ことを目的とした渚の交番プロジェクトが日本財団により進行中です。現在全国13か所に拠点がありますが、その中でも最初に設置された『青島渚の交番(宮崎県宮崎市)』は宮崎観光の活性化に貢献しています。今回は青島渚の交番の交番長である小玉順規(こだままさき)さんに、その歴史や今後の展望を伺いました。
海辺を守るだけでなく、交流を提供する
2009年に「海辺の安心、安全、海のつながりを大切にしたコミュニティスペースをつくろう」という思いのもと、渚の交番プロジェクトが発足しました。背景には水難事故の増加や観光客の減少があり、「海辺の安心安全を守っていこう」というコンセプトでスタートしました。
その中で第1号となったのが、宮崎県の『青島渚の交番』です。青島はマリンスポーツが盛んであり、砂浜、岩場、川、山といった多様な地形があることから選ばれました。
街や海のパトロールはもちろん、小学校や中学校でライフガードの講習会をやるなど、海辺で安全に過ごすための情報発信も継続しています。その結果、渚の交番ができてから水難事故は明らかに減ってきています。
青島は海と山がとてもきれいで、食事も美味しいため移住してくる人が人口の2割ほどを占めています。また海外からの観光客も多く、多様性に富んだ地域です。そのため、渚の交番では地域住民と移住者、海外からの観光客が交流できる場を提供しています。
現地食材を使ったワークショップや、マリンスポーツを体験できるイベントなどさまざまなイベントを開催しています。老若男女問わず、多くの人が楽しみながら交流されています。
安全な海辺をスポーツの入り口にしたい
私自身は、元々アスレチックトレーナーとしてスポーツを教えていました。その中で、科学的なトレーニングも大切ですが、五感を刺激するトレーニングも必要だと実感しています。
そのため、海辺でトレーニングをすることもあります。ブラジルのサッカー選手は柔らかいボールタッチを得意とする人が多いですが、これは砂浜でサッカーを練習していたからこそ身に付くものです。
海辺の安全を守り続けることで、たくさんの人がスポーツを気軽に楽しめるようになり、多くの人がスポーツに取り組むきっかけになればと思っています。
渚の交番の活動を行うにあたって、大切にしていることは「情熱、思いやり、創意工夫」です。中でも「創意工夫」は宮崎の観光に携わる人間にとって特別な言葉です。
宮崎の観光をつくった岩切章太郎の言葉に「心配するな、工夫せよ」というものがあります。これが宮崎観光のDNAとなっていて、「お金がなくても何かできるんじゃないか」「失敗したときこそ、ほかの方法はないか」と工夫することで、何でも乗り越えられると思っています。
青島の海から宮崎を元気にしていく
思いやりのある、アットホームな空気をつくるうえで一番大切にしていることは「快(かい)の笑い」です。「快の笑い」とは、赤ちゃんが初めてお母さんのおっぱいを飲んだ時に出る笑顔のことで、 社交辞令ではなく嬉しい時や楽しい時に出る笑いのことを指します。
みなさんが楽しくなる場をつくることが、渚の交番の発展につながると信じています。そして母なる海からとって「海(かい)の笑い」にしていければと思っています。
これからも我々は青島の海の安心・安全を守り、綺麗なビーチを保っていきます。住民はもちろん観光客も安心して過ごせて、青島の海で多世代の方々が砂遊びやビーチスポーツ、マリンスポーツを楽しんでいる光景が理想です。
「海から宮崎を元気にしていく」をモットーに、これからも尽力していきます。
渚の交番プロジェクト
https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/policeoffice