自身の闘病生活をきっかけに、患者さん用Wi-Fiを全国の病院に普及させる

元フジテレビアナウンサーで、現在はフリーアナウンサーとして活躍されている笠井信輔(かさいしんすけ)さんにインタビューさせていただきました。

笠井さんは、2021年3月に最終回を迎えたフジテレビの長寿番組「とくダネ!」で、2019年までなんと20年間レギュラーを務められていました。

現在はフリーアナウンサーに転身されております。

2019年12月には自身が悪性リンパ腫に罹患していることを公表、闘病生活をブログで発信しながら治療を受けられ、2020年6月に完全寛解されています。

入院時には、患者がオンライン面会などに使用できるWi-Fiが病院にないことに驚き、「#病室WiFi協議会」という活動を通じて、病院への患者用Wi-Fiの設置を推進されています。
今回はワクセルコラボレーターの渋沢一葉(しぶさわいよ)氏、ワクセル総合プロデューサーの住谷知厚(すみたにともひろ)をインタビュアーに、、フリーへの転身や癌との闘病生活を通して、笠井さんが世の中に伝えたいことをお聞かせいただきました。ぜひ最後までご覧ください。

現場で活躍することへこだわるためにフリーアナウンサーへ!

住谷:本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、なぜフジテレビを退社し、フリーアナウンサーになろうと思ったのでしょうか?

笠井:フジテレビに所属していた32年半は、ほとんど生放送の帯番組の司会を担当していました。とても居心地よく働かせていただきましたが、年月が経つと自分の立ち位置も変わってきます。

わたしは「とくダネ!」という番組を放送開始から、小倉智昭(おぐらともあき)アナウンサーと一緒に20年間やってきました。そのなかで、若手アナウンサーの加入などもあり、最終的に自分の出番が減ってきたのです。

わたしは喋ることが好きなのですが、取材やリポートの仕事は減り、部下の指導などを任されることが増えてきました。このままフジテレビにいては、自分の望む活躍はできないのだな、と強く感じました。

自分の限界は自分で見極める必要があると思い、慣れ親しんだフジテレビを離れる決意をしました。同時に、フジテレビの外にはまだ自分を必要としている人がいると思い、フリーランスの道を選びました。

渋沢:「現場に出たい!」という気持ちがとても強いんですね。

笠井:現場が大好きなので、現場に出続けることにはこだわっていました。とはいっても、準備万端で独立したわけではなかったので、清水の舞台から飛び降りるような気持ちでしたね。

最近は、元日本テレビの羽鳥アナウンサーや福澤アナウンサーのように、フリーランスとして活躍する男性アナウンサーも増えています。

しかし、フジテレビは定年まで局に残る人が多く、独立するには勇気が必要でした。「定年まで残れば、退職金を満額もらえるのにもったいない」と言ってくれる人もいましたが、自分自身がアナウンサーとして活躍できる残りの時間を考えての選択でした。

渋沢:奥様は独立することに対してどのような反応でしたか?

笠井:賛成はしてくれました。ただ「もう5年早ければもっと勢いのあるタイミングでよかったのに。5年遅かったわね」とも言われました。さらに、小倉さんにも「5年遅かったね」と同じことを言われたんです。

5年前は「とくダネ!」の喋りの半分ほどを任されていて、たしかに脂がのっている時期でしたが、これだけ仕事を任してもらっているなかで、独立という選択肢は頭にありませんでした。

しかし、客観的にみると独立に絶好のタイミングだったようです。この経験で、人からの見え方と、自分の感情が入った見え方はまったく違うんだなと感じました。

奥様は「ママアナ」の先駆的存在

渋沢:奥様とはどのように出会ったのですか?

笠井:アナウンサーの専門学校で同じクラスだったんです。そこから一緒に就職活動しているうちに仲良くなり、お付き合いしました。

一言で言うと ”リクルートナンパ” ですね(笑)まわりの人からは就活中に何やってるんだと非難されました。

住谷:いやー、女子アナウンサーと結婚するのは男性の夢です!

笠井:奥さんは結婚した当時は報道記者だったので、正確には女子アナと結婚したわけではないんですよ(笑)

うちの奥さんは少し変わっていて、結婚して子供が生まれてから女子アナになったんです。

いまは子供がいるアナウンサー、いわゆる「ママアナ」はたくさんいます。しかし、当時は妊娠した時点で他部署へ移動するのが当たり前だったので、ある意味先駆的な存在でした。

渋沢:子育てと仕事の両立は大変でしたか?

笠井:奥さんはとても苦労していました。奥さんとわたしの両親も手伝いに来てくれて、そのおかげでどうにかやってこれました。

「革新」と「柔軟な変化」が長続きする秘訣

住谷:フジテレビに入社してから「とくダネ!」がスタートするまでは、どのような仕事をされていたんですか?

笠井:ワイドショーのアナウンサーとして働いていました。「めざましテレビ」にも1年半くらい出ていました。あとは、夕方のニュースのメインキャスター、朝のワイドショーの司会などをやらせていただきました。

住谷:なぜ「とくダネ!」は20年以上続いたと思いますか?我々もワクセルを長く繁栄させて、よりよい社会をつくりたいと考えていて、ぜひ長く続くコツをうかがいたいです。

笠井:まずは、新しいタイプの情報番組をつくったことですね。従来の番組はリポーターとキャスター、評論家がサロン的に話しながら番組をまわしていました。

それに対し、今では一般的となった「大きなボードを入れてプレゼンテーションする」スタイルを導入したのが「とくダネ!」でした。

渋沢:いまの情報番組の先駆け的な存在だったんですね。

笠井:ボードやテレビに映した映像をつかったプレゼンテーションがとても好評で、ほかの番組もどんどんマネするようになり、気づけば一つのスタンダードになっていました。こうして老舗的な存在になったことは大きな要因だと思います。

そして、マンネリ化したときはキャスティングを変更したり、内容を変えたりして乗り越えてきました。社会情勢に合わせて、柔軟性をもって番組を変えてきましたし、ときにはプロデューサーが変わることで番組を変化させることもありました。

なかでも一番大きな変化があったのは、5~6年前にインターネットに詳しい方がプロデューサーになったときでした。

「とくダネ!」はもともと新聞や雑誌から情報収集していたのですが、Yahoo!ニュースの人気ニュースを紹介することになったんです。加えて、YouTubeで人気があるおもしろ動画も流すことになりました。

当時はテレビとインターネットはライバルという認識が一般的で、自分たちで取材したものではないインターネットの情報を放送することに抵抗はありました。しかし、このおもしろ動画が大人気となり、視聴率も1位になりました。

これをきっかけに、インターネットの流れをつかみながら番組をつくるということが、テレビ業界の常識になっていきました。このように、世の中の変化を敏感に感じ取り、順応してきたことも長続きできた理由だと思います。

住谷:世の中の変化を感じ取るために工夫していることはありますか?

笠井:自分の得意な分野に関して掘り下げることですね。すべての分野に詳しくなるのは難しいので、自分が人より秀でていると思う分野についてより情報収集しています。

立場関係なく、優秀な人から学ぶ

住谷:フジテレビ時代に部下の育成をされていたとおっしゃっていましたが、人の育成に関して大事にされていることをお聞かせください。

笠井:上司と部下ではなく「少し経験の長い先輩」という立ち位置で指導するようにしていました。

あとは年齢で判断しないことですね。どんなジャンルで経験を積んできたのかを知り、自分が知識のないジャンルに関してはむしろこちらが教えてもらっていました。特にスポーツはまったく知識がなかったので教えてもらうことが多かったです。

一方で、「事故、事件」に関しては負ける気がしなかったので、徹底的に教えこみました。

現代ではライフワークバランスを大切に

渋沢:趣味が映画と舞台鑑賞とのことですが、どれくらいの頻度で鑑賞されるんですか?

笠井:若い頃は年間で新作映画を130~150本、 舞台を150本、観に行っていました。スケジュールをパズルのようにはめこんで観に行く時間を確保していましたね。

映画を観るアナウンサーは多かったのですが、舞台を観に行くアナウンサーはいなかったので、差別化のために観に行っていました。何度も観に行っているうちに、出演者とも仲良くなり「インタビューを受けるなら笠井さんにお願いしたい」とオファーが来るようになりました。

ただ、テレビの仕事もしていたので、体への負担は相当だったと思います。当時は夜10時に帰り、夜中の2時に起きるような生活をしていました。そしてその結果、癌になってしまったのです。

今の時代は健康やメンタルの管理も大事といわれています。ワークライフバランスを意識することが健康に働くためには重要です。自分はワークばかりでバランスが取れていなかったので、みなさんは自分を客観視して気をつけてください。

日本の病院に患者さん用のWi-Fiを普及させる

住谷:病院Wi-Fiの設置活動も含め、これからの展望をお聞かせください。

笠井:健康を維持して、今まで通り一生懸命働きたいですね。病気をしたことで健康の大切さを実感しました。

新型コロナウイルスにより、なかなか思い通りに生活できない時期だと思います。しかし、いずれは今の事態も落ち着いていくでしょう。そのなかで、いままで通りの生活に戻して精一杯働きたいです。

この時期に入院したことで、さまざまな経験をしました。一番驚いたのは病院に患者さんが使えるWi-Fiがないことでした。

病院にお見舞いの方が来れない状況が1年以上続いていて、オンラインでの面会が唯一のお見舞いの方法となっています。しかし、日本で患者さんが使えるWi-Fiを設置している病院は3割しかありません。

そこで、一つでも多くの病院が患者さん用のWi-Fiを導入できるように、「#病室Wi-Fi協議会」を2021年1月に立ち上げました。そして、政治家の方々に補助金を出してほしいと話しに行ったところ、2021年4月には補助金が出ることになりました。

補助金は税金が財源なので、社会的意義と必要性が認められる必要があります。そのため承認のハードルが高いのですが、今回は国が国民を救うために素早く動いてくださり、とても感謝しています。

ただ、補助金の締め切りが2021年9月30日と設定されていて、これが問題になっています。現在、半導体が不足しておりWi-Fiの送受診機がなかなかつくれない影響で納期が遅れているんです。契約してから納品までに1年ほどかかるケースもあるようなので、期限の延長をお願いしているところです。

自分が経験してきたものを、可能な限り社会に還元しようと思って活動させていただいています。

住谷:以前出版された著書『生きる力 引き算の縁と足し算の縁』もその活動の一つですよね。

笠井:現在、世界で年間100万人の人が癌になっています。さらに、日本人の2人に1人が癌になり、男性は3人に2人が癌になるというデータが出ています。自分は癌になって運が悪いと思っていましたが、実はそうではなかったんです。

「どのような治療があるのか」「どのような態度をとれば最適な医療が受けられるのか」「病院でどう過ごしたらいいのか」などについて、自分の経験を通してお伝えしたいと思い書きました。

渋沢:これだけ世の中でWi-Fiが普及しているのに、病院にWi-Fiが通っていないことに驚きますよね。

笠井:政治家の方々にお話ししたときも驚かれていました。入院したことない人はみなさん驚かれますね。また、先進国の病院はほとんどWi-Fi通っているので、外国の方にも驚かれます。

日本の病院にWi-Fiが普及していない状況には理由があります。約20年前に総務省が「Wi-Fiは危険である」と通達し、今もそれを信じている政治家の方々がいらっしゃるからです。技術の進歩によりいまのWi-Fiは安全だということを知ってもらう必要があります。そのためにわたしは「#病室 wifi 協議会」を通じて情報発信を続けていきます。


「表現の自由」や「言論の自由」に付随する責任を意識する

元警視庁捜査一課刑事、古村靖尚さんにインタビューさせていただきました。

捜査一課は殺人、強盗、暴行、傷害、誘拐、立てこもり、性犯罪、放火などの凶悪犯罪を扱う部署であり、古村さんは数々の凶悪事件と向き合ってこられました。

現在は被害立証をサポートする古村事務所を運営され、事件の被害者に親身に寄り添っておられます。

今回は古村さんの経験や知識をもとに、インターネットやSNSを通じた発信について注意すべき点などをうかがいました。

インターネットが普及し便利になった反面、簡単に情報発信、ひいては批判や中傷もできてしまう世の中になりました。自分自身が気づかない間に加害者や被害者にならないために、ぜひ最後までご覧ください。

「表現の自由」や「言論の自由」に付随する責任を意識する

インタビュアー:今はSNSを利用して誰でも自由に情報発信できるようになりましたが、情報発信するときに気をつけるべきことはありますか?

古村:日本では「表現の自由」「言論の自由」「信教の自由」は当然の人権として、憲法で保障されています。

しかし、憲法で守られた「表現の自由」を行使するにあたり、現在の通信技術の発達が弊害にもなっています。SNS等が日常であまりにも簡単に使える道具になったことで、自分が行使している「表現の自由」や「言論の自由」に付随する責任をあまり意識しなくなってきたのだと思います。

ときどき報道されるSNSに絡んだ悲しいニュースは、このような意識の希薄さが原因になっていると思います。

当然、悲しいニュースが報道されるということは、悲しい目にあった人や誰かを悲しい目にあわせた人がいることを意味します。

万が一、誰かを悲しい目にあわせたのがあなただった場合、あなたに自覚がなくても、あなたは刑事から『ホシ』と呼ばれて捜査されることになります。

そうならないために、他人に関する意見・情報を発信しようと思ったときは、送信ボタンを押す前に一度立ち止まっていただきたいと思います。

誰かを傷つけてしまわないように、あなたが『ホシ』にならないために、情報を発信する前に、一瞬立ち止まって考える。あなたが発信する言葉の先には、生身の人間がいます。人間は、身体も心も傷つきやすい存在です。正当な理由もなく人に傷つけられたならば、それは「被害」です。被害は災害や戦争のように突然やってきます。

『ホシ』は漢字で『犯人』と書きます。たった今、被害は突然やってくると言いましたが、実は『犯人』にとっても刑事は突然やってきます。

なぜなら、通信事件の捜査は時間がかかるからです。憲法の大原則で守られた「通信の秘密」という権利の壁、国外のプロバイダ等の法的な壁、日々進歩する技術の壁を、少しづつ積み重ねた証拠をもとに、1つ1つクリアして刑事は逮捕状まで辿りつきます。

そのころには犯人自身、自分がした行為を忘れているかもしれません。SNSでいとも簡単にできた行為だから、記憶に残らないのです。

情報を発信するときは「発信する先に生身の人間がいる」という事実をお忘れなく。

つい批判しただけでも、犯罪者になる可能性がある

インタビュアー:つい批判してしまったり、批判に同調してしまうこともあると思いますが、その場合の処罰などはありますか?

古村:「つい」とか「勢いで同調」は、日常ありがちなことだと思います。

あなたの行為を、被害者が被害にあったと認識したら、それは当事者にとって事件です。被害者が警察に被害の相談に行ったときから、この事件を警察が認識することになります。事件の捜査は事件の存在を警察が認知したところから始まります。

まず「被害者の相談、届出により発生した結果、被害であったか否か」「その被害が刑事罰のある法令に触れるか否か」を検討します。そして、法令に触れると判断した場合、行為と結果から何罪にあたるのかが吟味されます。

警察では、これを擬律判断といいます。質問にあるような「批判や、批判への同調」は刑法に該当するとなると

・名誉毀損、侮辱(名誉に対する罪)
・信用毀損、業務妨害(信用及び業務に対する罪)

等にあたる可能性があります。

罪にあたるとすると、次は「誰がしたことなのか」という点に焦点があたります。

「つい」してしまった批判や「同調」は、ほかの誰でもないあなたがしたことなのです。

刑罰法令は、思っただけの「内心」を罰することはありませんが、「行為」とそれによって発生した「結果」(なかには未遂でも)を罰します。

ただ、殺人や傷害、暴行といった身体に対する犯行と違い、名誉、侮辱などの概念、意識に対する犯行は、犯罪として成立するかどうかの段階から評価がわかれます。さらに生活、年齢、環境、境遇、立場、それらから生じる価値観などの要素が大きく関係し、行為と結果に対する評価も違ってくるものであります。

それゆえ、発生した事案の内容を個々に具体的に検討することが重要で、1つの事例を挙げてイメージ化するのは危険だと思います。

ここでは、関係するだろう刑罰法令のそれぞれの罰則をあげて、皆さんの注意喚起に代えたいと思います。

・名誉毀損:3年以下の懲役若しくは禁固、50万円以下の罰金
・侮辱:拘留又は科料
・信用毀損:3年以下の懲役、50万円以下の罰金
・業務妨害:同上

となっており、起訴となって罰金以上(正確には科料以上)の処分を受ければ前科一犯となります。

注意していただきたいのは、事業を起こすにあたって必要になってくる公的な資格や許可の中には、個人であれば本人、法人であれば役員に、過去○年以内に前科がある場合は不可とされるものもある、ということです。

これからさまざまな事業や、起業に取り組んでいかれるだろう若い世代の皆様には「つい」や「勢いでの同調」で、前科者にならないように注意していただきたいと思います。

SNSの手軽さに油断することなく「自分の発言には責任をもつ」という意識が大切だと思います。

被害にあったときは1人で抱え込まず、相談する

インタビュアー:自分の身を守るためにはどうするのが良いのでしょうか?

古村:まずは相談することが大事です。どうしたらいいのか分からないまま、泣き寝入りしている方もたくさん見てきました。

悪質な場合、被害者と認定され、事件にできるケースもあります。特に仕事や生活に支障をきたすような場合、しっかりと正面から向き合って対策を練ることが必要です。

被害を受けた場合は必ず証拠を残してください。証拠を元に、1つ1つ確認しながら刑事は逮捕状まで辿りつきます。専門的なことも多いので、元刑事としてお役にたてることがあれば幸いです。

インタビュアー:夜道や人気のないところで女性が暴行を受けるというニュースも耳にしますが、

具体的にはどう気をつけたら良いでしょうか?

古村:性犯罪は絶対検挙すべき目標として、指定重点犯罪に認定されています。

犯罪は犯人側に主導権があります。事件を起こす時間、場所、人も犯人が自由に選択します。少なくとも犯行の時点で、兵法にいう必勝の法則『天の時、地の利』は犯人側が選択してしまいます。

被害者が常に、奇襲、不意打ちを受けざるを得ないのはこのためです。

『犯罪』、言い換えれば『悪』に強さがあるとするならば、このためなのです。『内心』を現在の法律では罰せられない以上、100%犯罪を防げないのはそのためです。

ただ、災害や戦争と同じ様に、備えることは可能です。

性犯罪の根絶は、犯罪を根絶するのと同義であり、悪と正義の根源的な問題でもありますので、また何かの機会にお話しできればと思います。

自分の発言に責任をもつ

インタビュアー)最後にメッセージをお願いします。

古村さん)古い概念ではあるかもしれませんが

「自分がこれから発信する言葉に、自分は責任がもてるのか」

「自分がこれから言うことで発生する結果に、自分は落とし前がつけられるのか」

ということが大事だと思います。因果は応報であります。

世界中の子どもたちから学ぶ「生きるよろこび」とは

社会活動家の池間哲郎さんに、インタビューをさせていただきました。

池間哲郎さんは、映像制作などの会社経営の傍ら、一般社団法人
アジア支援機構、認定NPO法人アジアチャイルドサポートの代表理事など幅広く活動されています。また、講演家として、命の尊さや日本人としての誇りを精力的に伝え続けていらっしゃいます。

今回のインタビューでは、多くの国を訪れて貧困の実状をその目で見てこられた池間さんに、今の若者が大事にすべき価値観や、トップに立つ人間として必要な覚悟などをお聞きしました。​

国際協力の活動を始められたきっかけをお聞かせください。

池間:きっかけは、フィリピンのトンド地区にあるスモーキーマウンテンで、とある少女と出会ったことです。

最初から勢いよく始めたわけではなく、まずは自分にできる範囲でコツコツと活動し、のめり込んでいきました。例えば、学校を作るには約800万円が必要です。私は行動するときにはお金のことは考えないのです。なぜかというと、やると決めたらお金がわいてくる(後から自分でつくりだす)と思っているからです。

自分のレベルというのもあり、最初は300万円程度からはじめました。どんどん楽しみが大きくなっていき、本業でさらに稼げるようになってからは、学校を作るために必要な800万円の全てを自分で出すようになりました。

なぜ、のめり込んだのか?それは、楽しかったからです。貧困で大変な思いをしている子どもたちが、笑顔で生き続けるのが嬉しい。喜びが溢れるという感じです。

貧困で苦しんでいる子どもたちを目の前にして、池間さんが感じることは何でしょうか。

池間:言葉は適切じゃないかもしれませんが、子どもたちは命を懸けた最も最高の生き方をしていると思っています。こんな生き方ができる人はそうはいないと思います。

もちろん、国際協力や支援活動は遊びではありません。ですが、アジアの貧しい子どもたちが一生懸命に生きているのを見ると、嬉しいのです。何回も危ない目に遭っているし、何回も死んだと思った人が生き返る。このまま助けなかったら死んでしまっていたかもしれない人々が、ちゃんと生きて、そして幸せになっている。その価値観は大きいかもしれませんね。この喜びが極端に大きかったから、活動し続けているのかもしれません。仕事も一緒で、喜びがないと続けられないと思います。

ただ、仕事における人間関係は別ですね。みんなから嫌われないとできないこともいっぱいあります。普通の人は国際協力やボランティアについて、表面的な部分しか見えていないことが多いと思います。僕は、生死までも見ています。表面的な部分しか見えていない人と合うわけがないし、よく喧嘩もします。だから敵も作るけれど、一方で応援者も増えていくのです。

インタビュアー:池間さんの覚悟が伝わってきます。

池間:私の会社の職員も、みんな同じ覚悟です。うちの職員は、ドーンとした男たちが集まっています。空手のチャンピオンや、アスリートが多いです。男らしい生き方をしている人が多くて、一般的なボランティア団体の感覚は持っていませんね。

職員の待遇も一般企業並みです。ボランティア団体の多くは、結婚もできないくらい安い給料で働いているので、これはボランティア団体や日本社会への挑戦でもあります。しっかりとした給料を出して、社会保険も休みもある。18時以降に会社にいるのは強く禁止しています。

過去に僕は仕事中毒で、朝から晩まで働いて家族に迷惑をかけたからです。子どもの運動会に1回もいったことないのです。そのような経験をすごく反省して、社員たちにはそんな目に合わせちゃいけないなと思っています。給料や待遇も良くする代わりに、仕事に誇りを持つように話しています。本当に良い仲間が揃ったと思っています。

人間関係について質問です。魅力を高めて人が集まる自分になりたいと同時に、人に嫌われたくないと思っている人にアドバイスはありますか。

池間:トップになる人はだいたい孤独です。孤独に耐えられる人である必要があります。

群れることで安心する人もいる。ただ、群れを好む人はトップになれません。組織を引き連れていくのですから、そういった人は、リーダーをやめた方がいい。自分自身を孤独に耐えうる人に育てていく必要があります。

小さな会社でも何でも、リーダーは誰とも仲良くしないこと。友人関係の方が楽しいので、良い人間関係を築けるに決まっています。ただ、リーダーが社員に対して友達付き合いを求めると、指揮系統が崩れて組織がおかしくなってしまいます。私が喋り出したら、社員のみんなの背筋が伸びる。いい意味で関係性をはっきりさせる、そういった姿勢は持ってた方がいいかもしれないですね。

もちろん、個人の楽しみは別です。個人としては遊んでも楽しんでもいい。だから、私にとっては女房がとても大事です。女房には愚痴も弱音も言うけれど、女房以外の人には一切言いません。漏れてしまいますからね。女房はそこを理解して守ってくれるからありがたいですね。

インタビュアー:会社の懇親会ではどのような振る舞いをすると良いでしょうか。関係性を意識しすぎるあまり、色々と考えてしまうことがあります。

池間:もちろんみんなと飲みに行ってもいいと思います。ただ、トップはある程度時間が経ったら先に帰るのが良いと思っています。トップがいることで、社員が気を遣って話せない話題もあるでしょう。自分でつくり上げた会社であっても、会社は個人のものではありません。みんなが勤めていますからね。

リーダーは、自己を見つめるのも一緒で、常に外から眺める訓練が必要です。

落合陽一さんやひろゆきさんといった若者から学んでいるとお聞きしました。そのきっかけや学んでいることを教えてください。

池間:自分の弱いところを見つめたいからです。今の自分では未来が見えない。

これからの時代は、AIの活用により次々と変化が起きます。AI自体は理解していますが、その上で何が大事なのか、僕の勉強不足でまだ見えないのです。AIの専門家と話すと、なるほどと驚くことがたくさんあります。

僕らの世代から見ると若者たちは、ある面で礼儀知らずが多く、力関係でモノを言う人も多いです。でもそれが若者の文化でもあります。そのような文化の流れも見ています。

この前、嘘だと思ったことがありました。速読というのですよね。ぱらぱらぱら~と本をスピード良くめくって読んでる方がいました。この読書方法を教えている人がいて、「理解できているのですか?」と聞くと、理解はできているみたいなのです。

理解するためには、速読と熟読を両方が必要だそうです。情報収集のための部分は、速読で対応する。大事なところは速読を止めて、内容をしっかり熟読するのが大事と聞きました。若い人からも学ぶべきことっていっぱいありますね。

これまでに3724回もの講演を続けられた中で大事にしてきたことをお聞かせください。

池間:初心を持ち続けていることです。

講演というのは、どんなに回数を重ねても、自己評価で100点を取ることはありません。70点を超えることもないのです。自分で話していて、ちょっとおかしいところが必ずあるのです。

これまでに3700回以上の講演をしていますが、この回数以上に毎日練習しています。今日も家に帰ったら、今日の講演の編集機器を前にして、おかしいなと感じる部分を直していきます。

慣れないことが一番大事で、慣れない努力をしています。これが初心を持ち続けることに繋がっているかはわかりませんが、私はこのようにやっています。

「適当」が一番許せません。今日の講演会には1万人近くの参加者がいました。1万人が2時間も時間を使います。人の時間を奪うことは、命をいただくのと一緒だと考えています。だから、中途半端なことは絶対にやりません。徹底してやらないと、聴いてくださっている人の失礼にあたります。

自己との戦いで、どうやったら伝えきれるかを考えている。常に自分との戦いですね。

池間さんの座右の銘をお聞かせください。

池間:私の造語ですが、「一点一歩」です。一点を見つめて、一歩一歩進む。それしかないと、いつも思っています。真剣にやっていくという意思を込めて、一点一歩という事を大事にしています。

今振り返ると、昔の私の一歩は10cmだったと思います。ですが、今は1mくらいになっている。これは影響力が大きくなっただけの話で、私自身が歩いている姿は変わらないのです。

インタビュアー:「一点一歩」という言葉は、どのようなタイミングでつくられたのですか。

池間:常に自分の中にあったものです。

座右の銘は、みんな誰かの言葉を言いますが、私は自分の言葉で言おうよといつも思っています。いつもずーっと見つめて、ずーっと歩いているから。

禅の言葉で、「一点を見つめるとすべてが見える」という意味の言葉があります。これもとても好きな言葉です。突き詰めるというのは何でも大事だなと。とことんやってる人は突き詰めているから、何をやってもできるのです。

私は人にも恵まれたなと思っています。私の生き方に反応した人が向こうから近づいてきています。

最後に、チャレンジしている人に向けて一言お願いします!

池間:チャレンジし続けている人は、やがて目標は変わります。目標が変わる度に。乗り越えるべき壁にぶつかる。壁があるから挫折する。よく聞くけれど、挫折はいい経験だと思います。壁に何度もぶつかったら、はしごをかければいいと思うのです。全て壊す必要はなくて、どんな乗り越え方をするかは個人の自由です。壁にぶつかるほど知恵は出てくるものです。

とにかく向き合い、進む方向性をしっかりと定めて、継続する力と、決して諦めない姿勢が大事だと思います。

若者にはいつも、人間の成長は「不揃いの階段」だと言っています。ちゃんと右肩上がりになってなくて、時には下がる時もある。それに耐えてる人ほど成長します。下がっていて、もうだめかもと思っている時にやり続けることで、右肩上がりになることもあります。上がることが事前にわかっていれば、努力も惜しまないのではないでしょうか。

あまりいい人になる必要もないと思います。人間なので、喜怒哀楽が大事です。怒る時は怒っていい。泣く時は泣いてもいいと思います。常に優しくあろうとしたり、悪の部分を無くしてしまうのは違うと思います。悪い心も自分の一部だからさ。迷惑をかけるのは良くないですが、この部分を大事にして、思いきりチャレンジしてください。