雅楽の演奏家が語る伝統音楽の魅力「日本の文化を学び人間力を高められる」

山口 創一郎

山口 創一郎

アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 山口創一郎さん

日本に古くから伝わる伝統音楽『雅楽(ががく)』の演奏家であり、雅楽の楽しさを伝える講師も務める山口創一郎さん。「世界で最も古いオーケストラ」と言われる雅楽の歴史から、その魅力や聴き方までたっぷりとお伺いしました。

世界で最も古いオーケストラ

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雅楽は世界中にありますが、各国の宮廷音楽のことを指します。言葉としては2,500年前に中国の『論語』に出てきたのが始まりと言われています。日本には独自の雅楽があり、『古事記』に出て来る神々が舞を披露する『神楽』から派生しました。

古くは飛鳥時代に仏教が日本に伝来した際に、あわせて舞や楽器、音楽が入ってきます。平安時代に舞と楽器、音楽が融合し、雅楽が完成しました。世界を見ても「最も古いオーケストラ」と言われています。今ある楽器の元祖が雅楽では使われているのです。

雅楽に関わっていることで、日本古来の文化や精神に触れることができるのは魅力のひとつです。雅楽と舞はセットなので、音楽でありながら体を動かすダンスの要素もあります。楽器に関しても自分でリードをつくったり、職人が手作りしていたりとアートの側面もあり、芸術が複合的に体験できます。

私たちは西洋音楽を学校で習ってきています。日本独自の音楽史があるのに、西洋音楽史しか勉強していません。西洋音楽は理論的に演奏されるものですが、雅楽は感覚による曖昧なものなので、学問として学びにくいんです。

拍子や音程も、演奏家それぞれの感覚や調和でできています。演奏していると人間性が出てきて、阿吽の呼吸で合わせるという協調生や人間性が磨かれていきます。

雅楽を始めたのは親の影響

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実家が神事に携わる家系で親がもともと雅楽をやっていました。小学4年生の時に、親から「雅楽をやってみないか」と薦められたことが、雅楽を始めたきっかけです。私は5人兄弟なのですが、兄弟それぞれが楽器を習い、奉納演奏をやってみてはどうかという提案でした。

最初は面白いとは感じませんでした。練習の終わりに食べさせてもらえお菓子やジュースを楽しみに通っていた感じですね。本格的に雅楽を始めたのは高校からです。当時、私が通っていた高校は宗教関係の高校で、雅楽コースがありました。座学、実技と雅楽にどっぷりの生活を経て、初めて雅楽の面白さを感じました。

大学ではほとんど雅楽に触れていなかったのですが、高校の時に感じた楽しさを思い出し、大学4年生の時に部活に復帰しました。そこから社会人になって働きながら雅楽を続けていました。

雅楽を通して和の精神を伝えていきたい

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ぜひみなさんに雅楽を聴いて欲しいです。雅楽を聴く時のポイントをいくつかお話しします。まず、曲目を見て、その曲の背景を知るとその景色を思い浮かべながら聴くことができます。曲名の意味を知り、なぜその曲調と展開になっていくのかを見るのもいいですね。指揮者がいないのに、曲が進むとともにスピードが自然と速くなっているのも聴きどころです。

雅楽は必ず龍笛(りゅうてき)から始まり、他の楽器が後から入ってくるという基本の知識もあると、臨場感あふれる演奏を満喫できると思います。

こんなに魅力あふれる雅楽を広める活動を私はしていますが、雅楽をやっている人であればみんな日々行っていることです。私の使命は、雅楽を通して昔の人が感じていた感覚を理解して、自分の価値観を広げていくことだと思っています。

デジタル化で人と人とのつながりが希薄になりがちな時代だからこそ、雅楽が持つ調和の文化にある日本人的な和の精神が役立つはずです。雅楽を通して、人と関わって一緒に何かを創りあげる楽しさを体感して、人生を良くできるということを伝えていきたいですね。

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