これから100年続く「第二次 大大阪時代」を目指す!「おもろい」「やってみなはれ」大阪の文化が日本を変える【大阪観光局インタビュー/後編】

ワクセル編集部

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2025.05.19
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提供:2025年日本国際博覧会協会

158か国地域が参加するパビリオンやギネス認定された『大屋根リング』など、さまざまな反響を呼んでいる大阪関西万博を牽引する、大阪観光局MICE政策統括官兼万博・IR推進統括官の田中 嘉一(たなか よしかず)さんにインタビューさせていただきました。後編ではこれからの大阪のビジョンについてお話を伺いました。

大阪関西万博は、新しい道を切り開くためのマインドセット。日本全体が元気になれるように

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提供:2025年日本国際博覧会協会

今後、大阪は日本にとって大事な役割を果たすと思っています。

自分は東京から来たので客観的に見ていますが、大阪に住んでいる人には商都大阪の歴史を受け継いだ特徴が表れているなと感じます。今だから言えることですが、実はコロナの時、緊急事態宣言下でもずっと東京と大阪を行き来していました。そのとき東京はずっと暗かったですが、大阪はいつも明るかった。これには理由があって、東京は大企業や中央官庁が多く体力のある企業が多いので、テレワークや出社停止になってもある程度は継続できます。しかし大阪は中小企業が多く、そんなことをしている余裕がなく、何とか経済をまわしていこうという傾向が強かった。その中にこそ「大変だけど何とかしようや」という、エネルギーを感じたのです。

私はこういう大阪の文化が日本を変えるのではないかと思っています。今の日本は若い人が新しいことにチャレンジしない傾向が強い。失敗しない確実なこと、効率の良いこと、カッコいいことしかしない。あるいは、できないような雰囲気があるのかもしれない。今の若い人は非常に気の毒だなと思います。

私が好きな大阪の言葉で「おもろい」があるのですが、結果はどうあれ「おもろい、やってみなはれ」という言葉がある。今、この傾向は大阪でも薄れているかもしれませんが、この言葉を聞くと大阪の人はハッと我にかえります。この万博は、チャレンジ精神あふれる大阪のマインドを蘇らせてくれるのではないかと思います。実際、今回の万博誘致も「やってみなはれ」「おもろいじゃないか」「やってみよう」という流れで始まったと聞きました。突き進む力、打開する力というのはエネルギーだと思います。大阪にはまだ、こうしたエネルギーが湧き起こるDNAが残っていると感じています。

いわば、万博は先行投資で、「やればできるんだ」「チャレンジして未来を切り開こう」という自信を取り戻してくれる、マインドセットになっているのではないかと思います。この元気が日本全体に広がって、若い人に「大阪ってなんだか元気があるよね」と思ってもらえるような街によみがえらせたい。日本全体が自分の力で未来を切り開こうという思いにあふれてくれたらいいなと思っています。

ある雑誌の調査では、若い人が住み続けたい町ランキングで1位は福岡市、2位は大阪市でした。若い人とは近い将来、主要な消費者・生産者になる人です。つまりこのランキング上位の大阪は、数年後に大発展すると注目しています。おもろいというエネルギーを感じる人が集まっているのですよね。鉄道もいま着々と延伸が続いていますし、神戸空港も国際化します。大阪から最も近い国際空港が誕生するのです。海外から関西にダイレクトインする人の数がますます増え、大阪はますます国際的な都市になっていくわけです。この多様性が、大阪の人々のマインドとものの見方を広げ、包容力があふれる誰もが住みやすい街に成長させると期待しています。

2025年は「大大阪時代」100周年。現代も続く商業都市の基盤をつくった100年の歴史

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2025年は、「大大阪時代」100周年の年です。大大阪時代とは何か?今から100年前、関東大震災で首都・東京が壊滅的になりました。だが、このような国難の中でもなんとか維持できた。どこが支えていたかというと、大阪の経済が支えていたのです。「これからは自動車の時代だ」と、100年前に大阪のメインストリートである御堂筋ができました。南下している6車線の道路、その脇に北上する道路があるというユニークな設計で、狭いエリアにたくさんの車を流せる道路システムがつくられたのです。

そしてこれからは鉄道の時代も来ると、その道路に沿って地下鉄が通った。これも100年前です。大阪市立大学ができたのもこの頃。この大阪のかたちをつくったのは関 一(せき はじめ)市長でした。都市計画の先生で自身のイメージをかたちにされたそうですが、御堂筋をつくるときも「飛行場でも作る気か」と多くの人に非難されたそうです。しかし、そのおかげで今も大阪は経済的に発展している。誤解を恐れずに言えば、今の大阪は当時のまちづくりの遺産で食べているようなものです。

万博が行われる2025年は大大阪時代100周年。節目の年として、次の100年を見据え、やりたいことを思い描き、宣言して有言実行して動く、そういう時代をスタートさせる年だと思っています。今の時代を生きている我々には、その責務があると思います。100年後の住民に、「100年前のあのまちづくりのおかげで、今、自分は快適に過ごせているんだ」と感じてもらうために。

たとえば大阪には緑が少ないという課題があります。実は大阪のほとんどが海だったのですよ。大阪が平地なのは、淀川の堆積土がつくった街だからであり、あまり植物が自生しないのです。地盤も良い土壌ではないので、意識的に緑を増やしていかないといけません。ずっと商業都市のため、各藩の蔵を多く置いていた歴史はあっても、緑を増やそうとはしてこなかったのです。東京は参勤交代があって、各藩の人が庭園をつくったりしていたので緑が結構多いんですが。

これから100年を考えたときに、大阪は緑が必要だと考えています。その象徴が大阪駅前にあるGRAND GREEN OSAKA(グラングリーン大阪)です。これも構想が発表されたときに非難されたと聞きます。駅前一等地でビジネス的にはもっと儲かることができるはずなのに、まったく儲からないことをしていると。ただ、できたことで何より住民が喜んでいます。周辺には五ツ星ホテルも進出しました。世界が評価している証です。将来的には御堂筋、メインストリートを森にしたいと考えています。未来の世代に何を残すかを考え、100年後に向けてやっていこうと思います。

「やってみなはれ」「おもろいことやろう」のマインドで、第二次大大阪時代の実現へ

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提供:2025年日本国際博覧会協会

大阪人のマインドセットは、しだいに自信にあふれたものになってきていると思います。「やってみなはれ」「おもろいことやろう」に加えて、万博や様々な再開発プロジェクト、2030年開発のIR(統合型リゾート施設)などの進展により、将来100年を描くビジョンがそこにのっかってくれば、今後10年20年、大阪の発展は確実でしょう。100年前に思い描いて実現した都市が今も続いているように、これから先の100年を支える「第二次大大阪時代」をつくりたいと考えています。