
「多様だけどひとつ」世界中の人々をつなぐ大阪関西万博の魅力と運営の裏側【大阪観光局インタビュー/前編】
2025年4月13日から開幕した大阪関西万博は、158か国地域が参加するパビリオンやギネス認定された『大屋根リング』など、大きな反響を呼んでいます。大阪観光局MICE政策統括官兼万博・IR推進統括官の田中 嘉一(たなか よしかず)さんに、万博の運営裏話や万博の意義についてお話を伺いました。
イベント事業は有言実行の連続。明るく元気に「この指とまれ」で意義を伝え続ける
私自身は23年間、東京ビッグサイトなどの大規模な会場での国際展示会の企画から出展者・バイヤーの募集、運営などを年間300本行ってきました。
展示会の企画というのは、開催を決めた瞬間は目に見えるものが何もなく、企画しかないのです。企画が実現するか証明しろと言われても示せない。それに対して周囲をいかに説得し、情熱と言葉の能力で多くの共感、参加者、来場者を集めるかが重要です。
それゆえ、イベント事業は有言実行ビジネスだと思っています。まず旗を上げ、全力を尽くして結果を示す。この仕事を始めてから、「有言実行」の意味をようやく理解できるようになったと思います。先に「目指す姿」を公言してしまうことでこそ、自分を追い詰め、全力を出すことができるのです。まず願望を口に出して、願望を叶えようとする力が身につく。自分の人生を能動的に作り上げることができる生き方が身につくのがこの仕事の魅力だと思っています。
事実を俯瞰的に捉え、明るいビジョンを描く力もイベント事業には不可欠です。大阪関西万博も「意味があるのか」などいろいろ言われましたが、そのような意見を一つのものの見方として受け入れつつも、一方で、価値を伝える、自分で意義を考えて語る、そして語ったことを実現することに全力をつくすということを繰り返しやってきました。その結果、自分の周りの人の中に、万博の価値を自分で語れる人が新たに生まれ、彼らが実際に万博を訪れて、それが確信に変わってさらに説得力が増す、という好循環が生まれてきています。
どんなことにもプラスとマイナスがあります。100%プラス、100%マイナスということはないですよね。プラスは何か、マイナスは何か、両方を比較して考えるようにしています。万博はいろんな観点でプラスが勝っていると思います。プラスだと思うような事実を整理して丁寧に説明し、マイナスの情報も公開する。この2つをやっていくこと、不特定多数の方に語っていくことが、大型イベントを成功させる上で大切だと考えています。
もともとはこんな性格ではなかったんですよ、人前で話すのは苦手でしたし。場数を踏んだというか、いろんな場面を体験したのです。最初の頃の展示会では、ある出展者からの要望に応えて一生懸命対応した結果、他の出展者にとってはマイナスになってしまってすごく怒られたという経験をしました。一部の参加者の声に応えた結果、全体の運営に影響が出てしまったこともあります。常に全体を鳥の目で見て判断していかなければならないということがDNAとなっています。
万博をはじめ、イベントごとは絶対成功させたいと思っています。有言実行なので是が非でも実行しなければならない。しかし同時に、やって良かったと思えるような結果にしたいという思いが強いです。したがってイベントの進行中でもさらなるアイデアや改善点を思いついたら迅速に実行します。スタッフは皆、大変です。しかし良い結果が訪れればそうした困難は全て帳消しになると確信しています。結果よければ全て良しですね。
そして、やはり基調は明るさが大事。この仕事は「この指とまれ」ビジネスなのです。話している人間が明るく確信を持って「このイベントは参加する価値があります!」と言わないと共感は得られない。これから万博をやろうという人間が、自信無さげに万博を説明しただけでは人は集まらないですよね。明るく元気に言ったほうが人が集まるというシンプルな原則です。
「多様だけどひとつ」文化の違う国々がひとつになる!大屋根リングの魅力
2025万博の最大の意義は、人と人が出会うことだと実感しています。始まってから現場に足を運んで強く感じるのは人と人が出会うこと、とりわけ世界各国の人たちがフィジカルに出会うということにすごく意義がある、ということです
万博に来たら、シンボル建築の「大屋根リング」に是非乗ってみて欲しいです。乗るだけでも感動するのですが、非常にうまい造りになっているのです。森の中でハイキングや山登りするとき、すれ違う人と挨拶しますよね。あれは道が狭いからやることで、広い道だと知らない人と挨拶することはあまりないと思います。大自然の中にいると人間はちっぽけな存在で、お互いの生存を確認しあう存在になる、挨拶することでお互いに生きていることを実感するというのがあると思っています。大屋根リングも道が狭くなっているところがあり、すれ違うことになる。大屋根リングですれ違うときは、相手が海外の方でもハイキングのように「こんにちは!」「Hi!」と挨拶してみてください。私自身も挨拶してみて、波長が合いそうだなという人には「どちらから来られたんですか?」と話しかけてみたりしていますよ。相手から笑顔が返ってくるだけでも、万博にきた価値を実感します。
そして大屋根リングの上から内側を見ると、内側に海外パビリオンがすべて収まるようにデザインされているのがわかります。世界は「多様だけどひとつ」というのはこういうことかと思いました。肌の色も文化的背景も違うけれど、ひとつにまとまっている。それが万博のリングの意味のひとつなのです。 Unity in diversity(多様性の中のひとつ)のコンセプトを感じられます。
コロナを経てオンラインでもコミュニケーションはとれることがわかり、万博に行かなくてもSNSやメディアで情報をとれる、という話もよく聞きます。しかし、万博の大屋根リングを体感すると改めて対面で会えることの大切さを知ることができると思います。オンライン飲み会などに比べ、直接会って会話することの伝わる情報量というものと同じ感覚を実感してほしいです。数百倍の感動があります。
Unity in diversityは「多様性の中の統一」という意味ですが、個人的には「多様だけどひとつ」という意訳がしっくり来ますね。金子みすゞさんの詩のように「みんなちがって、みんないい」という感じです。出展者も民族衣装を着ている方が多いので、とても個性的で国際的な空間になっています。
大阪関西万博が分断された世界をひとつに。158か国地域が出展を決めたその価値とは
今回の参加は158か国地域です。海外では多いと評価する傾向が強いですが、日本の多くのマスメディアは、「2か国から辞退があった」というような減点主義の報道が主流でした。しかし強調したい事実は、国別地域別の出展国数ランキングでも過去の万博に比べると大阪関西万博への参加国数は上位で、国内でも前回の愛知万博より増えているということです。
特に、大阪関西万博はアジア、中南米、そしてアフリカからの参加が多いのです。大阪関西万博は、いわば平和の祭典です。コロナで世界が分断されたり、ウクライナ問題、中東問題、さまざまな問題で世界が分断している今、平和を形にしたような万博だと思っています。
※後編に続きます。


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