障がいや生きづらさに対して根本的に向き合う”真のインクルーシブ”とは

寺澤 裕太

寺澤 裕太

2023.08.23
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寺澤裕太さんは慶應義塾大学に在学中で、障がい福祉の問題に対して、「真のインクルーシブな社会創造」を掲げて、非営利団体『SFC-IFC』を立ちあげました。組織の立ち上げから3か月で会員メンバーは20人を突破(2023年8月時点で40人を突破)。本コラムでは寺澤さんが、障がいや福祉と真正面から向き合うきっかけや、根底にある思いを語っていただきました。

SFC-IFCを立ち上げたきっかけ

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_寺澤裕太さん_SFC-IFCのきっかけ

SFC-IFC(Solve=解決、Facilitate=促進、Cooperate=協力、Inclusive Future Creation)とは、真のインクルーシブな社会の創造を目指し、2023年1月に結成した組織です。

インクルーシブとは、障がいや福祉に携わっている人に聞き馴染みのあることが多い言葉で、簡単にいうと「受け入れる」です。反対の言葉はエクスクルーシブ、「排除」「排他的な」という意味ですね。

近年ではD&I(=ダイバーシティアンドインクルージョン)という用語を見聞きしたことがある人もいるかもしれませんが、さまざまな価値観や特徴、特性を社会で受け入れるということです。

SFC-IFCを立ち上げたきっかけは、お世話になっている教授の講義で「割となんでも自由にやっていい」という講義があったことです。障がいや福祉についてもともと関心があって少し活動していたので、一緒にやる仲間を集め『障がいの未来を考えるゼミ』というのを始めたのが最初です。

他のワークショップだと、車いす体験とか、目の不自由な体験、就労に関しての問題など、具体的なものが多いですが、それだけでなく、障がいや福祉はもっと根本的に見直す必要があると感じています。

障がいや福祉は、専門家や当事者、その親など、当事者意識を持ちやすい人だけの閉ざされた世界で、「当事者じゃないと、触れてはいけない」というタブー視に近い感覚が社会には広がっています。

センシティブな内容で「触れちゃいけない」「怒らせないようにする」「踏み込んではいけない」など、その問題に関わろうとしない場合がほとんどです。

さらに、ビジネス的に儲からないなど、そこに自分が触れる価値が見いだせないから関わらないという場合も実際に多いと思っています。

でも実際に課題は山積みだし、障がいとか福祉は誰もが関係のある分野。具体的な問題に向き合う必要はもちろんあるけど、それ以前の根本的な部分を考えることもとても大切です。

当事者とか専門家とか、素人とかそういう垣根を取り払って、もっと多くの人が対等に積極的に話し合うべきだと思っています。みんながフラットに話し合えるのが、『障がいの未来を考えるゼミ』であり『真のインクルーシブ』に繋がると僕は思います。

福祉の道に進もうと思った背景

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_寺澤裕太さん_考えや経緯について

元々、障がいについて特別際立って興味が強かったわけではありません。それよりも中学生の頃は経済学や経営学、ビジネス方面に興味がありました。

小恥ずかしい話ですが、中学生の時に初めてちゃんと彼女ができた時に、「経済的に余裕がないとデート代もプレゼント代も絶対困るじゃん!」と、当時中学生の僕がささやかな危機感を覚えたことは大きかったです。

また、社会に出れば会社とかに就職したり、色々活動したりするのに、普通の5科目だけをいつまでも勉強しているのが納得できず、高校は先生と親に懇願して商業科に入りました。

高校生になって、簿記・会計や、マーケティング・商品開発などの勉強をし、文化祭では自分たちがプロデュースした商品を売っていました。そこで出会った会社の社長さんがいて、今となってはもう6年くらいの付き合いになっています。

色々な場面で助けていただいたり、助言をくださったり、語り合ったり、時には同じ仕事で一緒に汗を流させていただいたりと、その方やその周囲の方々には本当に感謝しています。

その方やそこから生まれた多くのご縁のおかげで、高校生の時にフレグランス業界で自分のブランドを立ち上げたり、大学入学くらいのタイミングでいくつかの企業と業務委託契約を結んだり、役員に就かせてもらえたりと、色々なお仕事をいただけるようになりました。

大学との並行ができると思っていたのですが、結局その後1年くらい休学しました。今は一旦大学に戻って通っています。

そんな感じで元々福祉や障がいについて学んでいたり、手に職をつけたいと思ったりしていたわけではありませんが、大学に入学したあたりの頃の自分としては、すでに障がいに対してなんらかの形でアプローチしていくことは自分の中での決定事項でした。

幼い時、祖父の弟に障がいがあり、幼かったので少し話をしたくらいの記憶しかないのですが、そういう関わりがあったことで障がいに対して差別意識や偏見はまったく無く育ちました。

小・中学校に上がると特別支援学級がありますし、障がい者を街中で見かける機会も当然あります。そんななかで、障がいに対して心無い発言をしたり態度を見せる人も色々見聞きして、自分と同じように物事を考える人だけではないということが、分かるようになりました。

障がいだけに限らず、NPO団体にも入ったりボランティア活動をしたりと、とにかく社会や人が喜んでくれることがしたいというのはなぜか小学生の時から思っていて、何かできることはないかと常に考えてきました。

真のインクルーシブを目指して

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SFC-IFCではいろんなプロジェクトを抱えています。そこにいる人たちそれぞれのコミットメントがあり、興味・分野・特性など強みがあります。

何かプロジェクトを立ち上げたいという人は立ち上げるし、組織内の人脈を使ってやるのもいいし、外部からの持ち込みプロジェクトでもOKです。

いろんなプロジェクトが動いていて、多角的にインクルーシブに対してアプローチしています。何かひとつのプロジェクトを成功させれば実現できるというようなシンプルな問題ではないということでもあります。

誰かが笑顔になっているのは自分が嬉しい気持ちになるし、助けるっていうのは側から見たら自己犠牲って思われちゃうこともあるかもしれないですが、本当はむしろ助けられていると感じています。人に喜ばれるとか人の役に立っているっていうことが充実感につながるんです。

その道の専門家や卓越した人、当事者だけでなく、「頑張りたいけど何をしていいのかわからない」「社会のために貢献したいけど具体的にはどうしたらいいかわからない」そういった人も組織で一緒に活動して、多様性からシナジーを生み出して、結果として一人でも多くの人がそれぞれの人生を全うしてほしい。

誰もが著しい苦しみや排除に晒されずに生きることができる“真のインクルーシブな社会”を創りあげる。これが僕のビジョンです。

また、「障がい分野や福祉が儲からない」という概念を払拭し、工夫すれば稼げるし、良いものを生み出せるというような新しいビジネスモデルにもこれからどんどんチャレンジしていきたいです。

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