『野菜寿司』で世界を目指す板前が語るプラントベース食への思い

谷水 晃

谷水 晃

アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_すし職職人

プラントベースのお寿司、野菜寿司を専門に出張寿司板前として、イベントやお宅に伺い握りたてのお寿司を提供する谷水晃さん。なぜ、野菜寿司に着目したのか?そもそも、野菜寿司とはどんなものなのか?これまでの独立するまでのいきさつや現在の活動、今後の展望についてお話を聞かせていただきました。

プラントベース食との出会い

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_谷水晃さん_プラント

私が料理の道に進もうと決めたのは、家族とお寿司屋さんに行ったことがきっかけです。板前の方がお寿司を握る姿や、巻物をつくる姿が子供ながらにとても格好良く見えました。

お寿司は酢飯・魚・ワサビにしょう油とシンプルな材料なのに、握る人で味わいが変わります。そのような奥深さが面白いと思ったことと、日本人として日本の伝統文化であるお寿司をつくりたいと思い、寿司職人になることを決意。高校を卒業してからは、お寿司に取り組む時間を少しでも増やすために住み込みで働き始めました。

『プラントベース食』に興味を持ったのは、私の家系がガンになる傾向があり、何か対策できることがないか考えたことがきっかけです。食生活の書籍を何冊か読むなかで、「動物性の食品が良くない」というものもあれば、正反対の意見があったりと、何が本当か分かりません。

私の場合は植物由来の原材料を使用した食生活が身体に合い、ひとまずプラントベース食を取り入れていこうと少しずつ変えていきました。そこから、お寿司でも野菜をメインに提供することはできないか?と考えるようになりました。

野菜寿司で大事にしているのは『一体感』

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_谷水晃さん_プラント

「野菜のお寿司を試してみたい」と、家の冷蔵庫にあったレンコンでお寿司をつくったことが始まりでした。思いのほか美味しく、魚のお寿司とは違う魅力があると思い、そこからパプリカやブロッコリーなど野菜寿司の研究に没頭するようになりました。

周りは、魚を専門とする寿司職人ばかりですので、そのなかで野菜寿司というあまり前例のないものに挑戦するのはとてもやりがいがありました。使用するネタが魚でなく野菜なので、勝手が違うと思われるかもしれませんが、考え方はほぼ同じで”一体感”が大事です。

通常のお寿司は、口の中でパラッとほどける米の固さとネタの旨味があって、ワサビでまとめるという一体感があるのが美味しいと思います。これに倣って、野菜寿司もシャリとネタの固さ、歯ごたえ、口の中で一体感が出るように考えてつくっています。

野菜寿司と聞くと、人によっては物足りない印象を持たれるかもしれません。しかし、私の握った野菜寿司を味わっていただくとその印象は変わると思います。そのなかで、『トロパプリカ』というネタがあるのですが、見た目からマグロ寿司のようなふわふわした仕上がりにしています。

野菜寿司はヴィーガンにも対応できる

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_谷水晃さん_プラント

野菜寿司という新しいことに挑戦してここまで継続できたのは、この分野が好きであることが大きいと感じています。未知の分野であるので、もちろん批判されることもありました。しかし私は批判に対して「そういう考えもあるのか」とひとつの意見として耳を傾けながらも、「自分のやりたいことを実現する」と思い、今でも挑戦しています。

今後は、野菜寿司を海外に向けて発信・活動していこうと決めています。野菜寿司は、ヴィーガンなど食生活を意識している方にも、日本の伝統文化である握り寿司を楽しんでもらえるのが魅力のひとつです。海外ではすでにヴィーガン寿司として一般的になっていますが、そのなかでも、日本人特有の握り寿司としての野菜寿司を広めていくのが今の目標です。

私の周りでは、魚のお寿司の経験を持ちながら野菜寿司に取り組んでいる人は少ないので、この強みを活かして今後も日本の伝統文化のお寿司の魅力、そして、野菜寿司の魅力を多くの方へ届けていきます。