メタバースを活用して“稼ぐ力”を次世代へ!社会問題に取り組む税理士が描くビジョン
笹圭吾(ささけいご)さんは、17年間の国税局勤務を経て税理士として独立。現在はメタバースを活用して日本の技術や文化を世界に届ける『SAMURAIバースプロジェクト』を推進しています。社会課題の解決に向けて挑戦し続ける笹さんに、その情熱や思いの原点について伺いました。
子育てを機に自分がチャレンジする側へ
私は大学卒業後、税理士を目指して国税局に入りました。税理士になるなら、税理士事務所で働くよりも国税局で経験を積む方が良いと母からアドバイスされたことがきっかけです。国税局であれば安定した公務員の立場が得られ、10年で科目免除もあり、23年を超えると資格が取得できるなど、環境が整っていることも大きな魅力でした。
17年間公務員として働くうちにその環境がとても居心地が良くなり、退職するのが難しく感じていました。そんな時に子供が生まれてから生活の質が一変。「お金・時間・労力すべてを、将来的な成長の可能性が大きい子供に使う方が良い」と思い、教育に熱を入れました。
子供にはたくさん挑戦して色々な刺激を受けてほしいと思い、挑戦する事の意義を伝え続けました。しかし子供には挑戦が大事と言いつつ、自分は何もせずに刺激すら与えられていないことに気づいたのです。子供は親の背中を見て育つので、私自身が新しい挑戦をして初めて説得力が出るのだと実感しました。
それ以来、挑戦し続けることの大切さを私自身の行動を通じて伝えようと心がけました。挑戦が自然とできるような環境をつくることが重要で、リスクを恐れずに挑戦を楽しむことが大切だと感じるようになりました。
リスクを呼吸するように取れる人間になれば、リスク自体が怖くなくなります。「挑戦する人生」をテーマに、リスクを取るうえでの知識も徹底的に学びました。最悪、自己破産があることや、命まで奪われることはないと理解したうえで、挑戦を続ける覚悟ができました。
妻もこの考え方を受け入れてくれたので、本当に助かっています。そして私自身の新たなチャレンジとして、国税局を辞めて税理士としての独立を目指すことにしたのです。
メタバースを活用したコミュニティづくり
税理士としてどのように集客し、競争に勝っていくかを考えた時、競合の税理士法人を分析すると、以前はSEO対策が有効で、それに力を入れることで成功した人たちが多いことが分かりました。
今の時代だとどうかと考えた時に、やはりSNSの方が効果的だと感じたので、SNSを活用して集客に力を入れることにしました。SNSを活用することで集客はうまくいった一方で、仕組みの差で競合との勝負には厳しい面があると感じていました。
業界の価格競争も激しくなっていて、私自身、元国税調査官という付加価値をアピールして他との差別化を図ろうとしましたが、顧客にとってはそれほど重要ではないことも多く、その説明自体がコストになってしまいます。こうした状況から、税理士を含め士業自体の需要がすでに満たされてると実感しました。
それからは需要が十分に満たされた市場にいるよりも、需要がまだ満たされていない市場に何かを提供する方が良いのではと考えるようになりました。日本全体を見渡すと、消費が低迷しているのは消費税が高いからではなく、必要なものが十分に供給されているため、人々が新たに買う必要を感じていないからなのだと思います。
結局、必要なものがあれば買うし、足りていれば買わない、単純に供給が過剰で需給バランスが崩れているだけだと思います。それならば、需要を見つけるために、自分たちが供給できるものを広く発信すれば良いのではと考えました。
私が税理士業界などで少しずつ認知されるようになった背景もあり、税理士のような「先生」と呼ばれる職業が新しい市場を切り拓くべきだと思ったのです。そこで、まだ開拓されていない市場に「道」をつくる役割として税理士を位置づけ、新しい時代に合った働き方として海外に進出し、技術や文化を世界に届ける専門家を増やすことを目指しました。
そのための手段としてメタバースが最適だと考えました。メタバース上では場所に関係なく、世界中の人と情報を交換できます。そこで、メタバースに情報交換の場を設け、必要な情報やサービスを提供する仕組みを作り始めました。これが今プロジェクトとしてやっている『SAMURAIバース』の第一歩です。
メタバースやWeb3に関する情報はまだ広く認知されておらず、暗号資産のウォレットを持っていない、NFTの購入経験がない、そもそも定義を理解していない人も多いと感じます。Web2のSNSすら未経験の人も多く、そうした人たちに知識を共有し、学べる場を提供する教育機関のようなものをつくりたいと考えています。
社会問題を解決するサービスを提供したい
メタバース事業をやっている一方で、TikTokやYouTubeを通じて税金に関する情報発信も行っています。私のフォロワーにはシングルマザーの方がたくさんいて、その方たちが現状から抜け出すのは簡単ではありません。自分で勉強を進めるのが苦手な方も多く、「勉強しましょう」と言っても、実際には時間が取れず現実的に難しいと感じている方もいます。
そんな中で、彼女たちが抱える課題を解決しようとするなら、子供の教育をサポートする空間を提供することが必要だと思っています。彼女たちが自分の負担を減らしつつ、子供が将来へのステップを築けるようなサポート環境を整えることが、私たちの役割のひとつになるのではないかと感じています。
子供たちが高校を卒業した段階で、すでに稼げるスキルを身につけている状態を目指したいと考えています。中学までは学びに集中するべきですが、高校生になれば、アルバイトに代わる形で実際の仕事を受ける経験をしていければ良いのではないかと思います。たとえば、動画編集やデザインなど、十分に高校生でも仕事として請け負えるスキルもあります。
現在、こうした「稼ぐ力」を身につけるためのコミュニティを運営し、稼ぐ力だけでなく、資産を守る力や増やす力も含めて学べる場をつくっています。学びには順序があると考え、まずは「稼ぐ力」を身につけることが最も重要だと感じています。
稼ぐ力を身につけた後は、次に「守る」力を育てるために、節税や社会制度の知識を学んでもらう段階へと進めています。お母さんを通じて子供を連れてきてもらい、無料で教育できる場を提供しているところです。
この取り組みは、現在オープンチャットを活用したコミュニティ運営として始まっていて、お金の管理や節約を学びたい方々が集まることで、スポンサーがつき、経済的な支援やお得なサービスを提供できる環境をつくろうとしています。
現代はまさに変革期であり、80年周期説などもあり、歴史の転換点が訪れているように感じます。この時代に何か新しいものを創造し、社会に貢献するツールやサービスを生み出すことは、非常に意義深いと思っています。明治維新の志士や戦後の松下幸之助のように、今の時代に名を残すための活動を行っていきたいと考えています。
特に、シングルマザーの貧困問題や低賃金、物価の低迷といった日本が抱える課題に取り組み、これらを解決に導くサービスをつくりたいと思っています。こうした挑戦が私にとって大きなワクワクの源です。
私自身、80年周期説には共感しており、この変革期に40代というタイミングで活動できることを「ラッキー」と感じています。今こそ、自分ができることを全力で行い、同世代や仲間と共に頑張っていきたいです。