アロマテラピーとは?知っているようで知らない歴史と、精油の成分と働きについて徹底解説③
アロマテラピーは世界に広く浸透している自然療法の一つ。植物から抽出した非常に高濃度でパワフルな成分である精油を用います。アロマテラピーやハーブを扱う会社の代表を務める野寄聖統(のよりまさのり)さんのコラムでは、そんなアロマテラピーについて「これさえ読めばわかる」レベルで徹底解説いただきます。
アロマテラピーの基本的なルール
◎精油の使い方
精油は、植物から抽出した天然の物質だからといって100%安全だというわけではありません。植物に含まれるときよりも成分は何十倍~何百倍にも濃縮され、その作用はとてもパワフルなものです。年齢や体格、体調や体質、また使い方によっては皮膚炎やかゆみ等の刺激を感じたり、トラブルの原因にもなります。
(1)精油を試す前にパッチテストをしましょう。目安をつかんでおくために、新しい精油を使用する前に次の①②の方法でパッチテストをしてみましょう。月経前などお肌が敏感な時期は避けてください。本格的なパッチテストは、皮膚科で相談しましょう。
<パッチテスト>
①精油をまぜるキャリアオイル(基材)のみを腕の内側に塗布し、様子を確認する(直後と1~2日後)
②上記①のキャリアオイル5mlに精油を2滴垂らし希釈した後、腕の内側に塗布し、様子を確認する(直後と1~2日後)
特定の精油にアレルギーがあった場合、精油の中には同様の薬効を持つ物が必ずあるので、パッチテストでチェックしながら、自分に合った精油を使うようにしましょう。
アレルギー反応が現れた場合は、すぐに無香料のせっけんでよく洗い流し、そのあとタオルで軽くふいて空気にさらします。精油にアレルギーがあった場合、は、その精油は塗布だけでなく吸入も控えてください。
(2)油のボトルを振らずに、ゆっくりと傾けて1滴ずつ出すようにする(精油は通常1滴0.05ml)。振ると1滴の量が変わってしまうので、使用する際に正しい濃度になりません。
(3)内服は粘膜、内臓への刺激があり体への影響が大きいため原則として行わないで下さい。
(4)肌につける場合は、必ずキャリアオイル(P○○で紹介)などの基材で希釈する。
(5)赤ちゃん、幼児、ペット、妊娠中の方、てんかんをお持ちの方に合わない精油を確認する。今回紹介しているエッセンシャルオイルであれば、妊娠中は、サイプレス、シダーウッド、ゼラニウム、ペパーミント、ヘリクリサム、ラベンダー、ローマンカモマイル、ローズマリー。高血圧、てんかん発作をお持ちの方は、ユーカリ、ローズマリーの使用を避けて下さい。
(6)光毒性のある精油(ミカン科・セリ科)は、日光の当たるとしみになることもある。今回紹介しているエッセンシャルオイルであればオレンジ・グレープフルーツ・レモン・タンジェリン。
(7)目、鼻、口、膣、肛門など粘膜部分に精油が高濃度でつくと刺激を感じるので注意してください。うっかりあるのはエッセンシャルオイルがついた手で目や鼻をこすったりすることがあります。また男性はトイレに行くときは先によく手を洗ってからにしましょう。びっくりしちゃいますので・・・
エッセンシャルオイルの保管方法
①直射日光と湿度を避け、冷暗所に保管する。
②開封後約1年以内を目安に使い切る。ものにより半年以内のもの、2~3年もつものもあります。
③子供の手の届かない場所に保管する。
④精油を基材とブレンドしたものは、1ヶ月以内に使い切る。
⑤プラスティック容器やゴムのスポイトは溶けてしまうことがある。
⑥引火性がありますので火気に注意しましょう。
使い方の提案といいたい所ですが大切な補足があります。使う際に重要になってくるのが分量です。この場合は何滴でこれと混ぜる時は何滴・・・とありますが、基本的には利用する方の感覚に合わせて下さい。
エッセンシャルオイルの種類によってそれぞれの揮発度が異なります。分子量が小さく軽い成分ほど揮発性が高く、重い成分ほど低くなり、空気中に蒸発するスピードに差があります。これを「ノート」と表記しています。
ですから同じ1滴でも揮発スピードの早いトップノートと遅いベースノートでは感じ方が異なります。例え5滴と書いてあっても1滴で十分香りを感じればそれでいいです。無理にその分量に合わせる必要はありません。
・トップノート
最も揮発スピードが速く、滴下直後から感じますが香りに持続性はありません。一瞬力強いインパクトを与えます。柑橘系、草や葉の精油の多くはトップノートです。
・ミドルノート
中間の揮発スピードで香りの持続時間は2~6時間ほどです。
・ベースノート
揮発スピードが最も遅く、半日ほど香りが持続し2、3日残ることもあります。木の香りや苔(オークモス)の香り、樹脂の香りがここに入ります。重厚な感じがします。
エッセンシャルオイルの使い方
それでは具体的な使い方です。
【芳香浴】
一番簡単で効果的な方法は、ティッシュやハンカチにエッセンシャルオイルを数滴落とし、鼻の前でパタパタし香りを嗅ぎます。
エッセンシャルオイルは非常に高濃度で、脳に情報がダイレクトに届くので瓶から直接かぐのはよくありません。パタパタは非常に安全で手軽に効率よく作用させることができます。
私は満員電車や人ごみが苦手なので、外出するときはいつもハンカチに好きなオイルを落として持ち歩いています。ただ、それで鼻や口を覆ってあまりの気持ち良さにムフムフしてると怪しいので、周りの空気も読みながらほどほどに満喫しましょう。
デスクワークであれば、UFOキャッチャーでゲットしたような小さなぬいぐるみにそのままエッセンシャルオイルを落として置いておくとデスクワーク中にも芳香を味わいながら、空気の浄化作用も期待できます。
車では、フロアーマットに数滴落としていただいても構いません。特に汚れることはないですが、オイルを直接落とすのが気になるようでしたら、ティッシュに落としてエアコンの送風口に詰めておくと、見た目はドンくさい感じですが(鼻血の時みたいです)浄化された心地よい空気で車中が満たされます。
その際に気をつけて欲しいのはラベンダーのように鎮静作用の強いものを使うと眠気を誘うこともありますので、十分にお気をつけください。ペパーミントやユーカリ等のスッキリ系オイル、レモンやオレンジ等のリフレッシュ系のオイルがオススメです。
【ティーカップ】
ティーカップにお湯を注いで、エッセンシャルオイルを1~2滴を落として嗅ぎます。あまり高温になると成分が壊れてしまいますので、暖かい程度でいいです。
その際にバスタオルなどで頭からすっぽり覆っていただくと、揮発し立ち込める精油成分を逃すことなく吸入することができます。これも傍から見ると結構怪しいので、やるときは1人でこっそりやるか家族全員で一緒にやりましょう(笑)
特別な機材も必要とせず効果的に吸入できますので、人ごみの多いところから帰ったときや風邪をもらいそうになった時、花粉症でつらい時、ストレスいっぱいで帰って来た時は特にオススメです。
またちょっとした加湿器として洗面器にお湯をはって好みのエッセンシャルオイルを混ぜておくのもいいですね。
【ディフューザー(芳香拡散器)で噴霧する】
ディフューザーという機械を使って原液を直接噴霧することで広範囲に作用させることができます。アロマポットやアロマランプもありますが、蒸発するほど高温になるのでエッセンシャルオイルの成分が変質してしまいます。
またラベンダーなど安眠を目的として使用している時に、火を使うのでかえって眠れないなんてこともあります。お部屋にはディフューザーがオススメです。
芳香浴や吸入は、朝昼夕それぞれ15分くらいが適当です。1日に使用する精油は芳香浴では10滴までとし、ときどき換気してください。
【バスタイム】
お風呂に入れる場合は好みのエッセンシャルオイル5滴位までとキャリアオイルとを手でよく混ぜ合わせてからお湯に入れます(腕浴・足浴であれば3滴)
混ぜても水よりも比重が軽い分、時間が経つと分離して原液が体につくこともあり、体調によっては刺激になることもあるので十分ご注意ください。特に柑橘系のオイルは刺激が強いのでお風呂に混ぜるのには適していません。
私は全て試してみました。レモンやオレンジ、グレープフルーツを混ぜた浴槽に入ると、まるで紅茶に入っているようで、とんでもなく自分がおいしそうな錯覚になりますが、皮膚に刺激を感じてあきらめちゃいました。
どうしても紅茶気分を味わいたい方は浴槽内ではなく、浴室(体の洗い場)に直接落としていただくと立ち込める湯気で十分吸引することができます。シャワーを浴びる時はちょうどいいですね。
【洗濯機】
すすぎのときに入れると除菌や消臭に効果的。
【掃除機】
掃除機の紙パックに滴下しておくと除菌と空気浄化になります。
【クローゼット】
クローゼットやタンスの防虫にも効果的です。エジプト文明の時代から防腐技術として歴史が防虫効果を証明しています。
以前、カップラーメンから神経毒が検出された事がニュースで取り上げられていました。原因を突き詰めたところ、タンスの防虫剤から成分が移ったものでした。防虫剤や虫除けスプレー等も虫の神経を麻痺させる薬品の塊です。
そういったものにワンシーズン漬け込んでおくとどうなるでしょうか?代わりに自然のエッセンシャルオイルを使うといいでしょう。柑橘系は酸化しやすいです。ラベンダーやゼラニウム、シダーウッドがおススメです。好みの香りでワンシーズンおいてみてはいかがでしょうか。
【オイルトリートメント】
・先ずトリートメントを行う際、自分自身に行うときも他の人に行うときも、まず、深呼吸して心を落ち着けてから始めましょう。いくら気持ちいいからといって疲れるほど実施しなくていいですよ。
・冷たい手で触れられると緊張してしまいますので、あらかじめ手を温めておきましょう。
・照明はやや落として、室温はトリートメントを受ける人の体感に合わせましょう。お好みの音楽があればBGMを流しておくのもいいですね。嗅覚だけではなく、触覚と視覚と聴覚も癒してあげましょう。
・痛いところを過度に押したりもんだりすると、痛みが増すこともあるので注意しましょう。
・トリートメントの後は、老廃物の排泄を助けるために水分を多めにとりましょう。
下記のようなときは、体に負担をかけて症状を悪化させる可能性もありますのでトリートメントをしないようにしてください。
●感染、伝染病の疾患があるとき
●発熱しているとき
●骨折、脱臼の直後
●抜歯や怪我で出血しているとき
●急性の疾患があるとき
●衰弱が激しいとき
●極度に興奮状態にあるとき
●皮膚に大きな傷があるとき
●予防接種の直後(24時間)
●空腹時と食後(1~2時間)
●飲酒後
●作用が強い薬を使用しているとき*
*向精神薬、ホルモン薬、抗てんかん薬などを内服しているときには、専門家に相談してください。
タッチングセラピーについて
触れることで、言葉ではないコミュニケーションがそこに生まれます。親密さや愛情やなんともいえない安心感が伝わります。
それからタッチングには痛みをブロック・軽減する効果があります。指先を切ったり、針で刺すなど瞬間的な鋭い痛みの信号はとても速く伝わり、あまり軽減されませんが、慢性的で鈍い痛みの信号は脳へ伝わるスピードが遅く、タッチングや香りの刺激でブロックしやすいのです。
また、心地よさを感じる触れ合いは、鎮痛作用がある神経伝達物質(脳内モルヒネ)の分泌を活性化すると考えられています。
現代はテレビやパソコンなど圧倒的に視覚と聴覚からの情報にあふれていますが、アロマテラピーでは、エッセンシャルオイルを使ったトリートメントを通して、積極的に嗅覚と触覚を刺激します。
忘れていた感覚を呼び覚ましてくれるかもしれません。心地の良い香りでリラックスすると血管が拡張し、トリートメントによって血流が促進され、細胞の新陳代謝を活性化させます。
また、皮膚と心は細胞誕生と分裂、発達から非常に密接に関係しており、皮膚への優しい触覚刺激は情緒を安定させる効果があります。大切なのは、自分の心身の変化、病気に対して興味を持ち意識を向けることです。
エッセンシャルオイルを数種類備えておくことで朝はこの香りがいい、仕事中はこの香りがいい、前はこの香りが合わなかったけど、今はこの香りが好きだ…など、自分自身の心身の変化に気付く事でしょう。
サロンで癒されたり、病院で適切な治療を受けることは大切で必要なことではありますが、他人に頼りっきりになるのではなく、自分自身にもっと興味をもって本来持っている力を活用しましょう。もちろん、骨折をしたり大量に出血している!なんて時はすぐに病院に行ってください。
エッセンシャルオイルは香りという非常に簡単で身近なツールですが、太古からの歴史ある自然のエネルギーなので、本当に素晴らしいものです。是非これからの生活の中でお役立てください。
●参考文献
「体温を上げると健康になる」齋藤真嗣:サンマーク出版
「アロマテラピーの教科書」和田文緒:新星出版社
「医師がすすめる『アロマテラピー』決定版」川端一永 横山信子 吉井友希子:マキノ出版
「アロマテラピーとマッサージのためのキャリアオイル辞典」レン・プライス シャーリー・プライス イアン・スミス:東京出版堂
「科学が立証した奇跡の香り!風水アロマの超開運術」松永修岳 藤田稔:BABジャパン出版局
「アロマテラピーのすべてがわかる事典」グリーンフラスコ:ナツメ社
「最新版アロマテラピー図鑑」佐々木薫:主婦の友社
「カラーグラフで読む精油の機能と効用-エッセンシャルオイルの作用と安全性の図解-」三上杏平:フレグランジャーナル社
「プロフェッショナルのためのアロマテラピー」シャーリー・プライス レン・プライス:フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー検定テキスト1級」鳥居鎮夫 亀岡弘 古賀良彦:社団法人アロマ環境協会
「環境カオリスタ検定公式テキスト」藤田成吉:社団法人アロマ環境協会
「5つのコツでもっと伸びる体が変わるストレッチ・メソッド」谷本道哉 石井直方:高橋書店
「エッセンシャルオイルブック」スーザン・カーティス:双葉社
「体脂肪を減らす、筋肉をつけるスロー&クイックトレーニング」石井直方 谷本道哉:毎日コミュニケーションズ
「なぜ『粗食』が体にいいのか」帯津良一 幕内秀夫:三笠書房
「人生を変えるフィットネス」山本ケイイチ:ディスカヴァー・トゥエンティワン
「アロマがカラダとココロの悩みに応えます」アロマじかん編集部:枻文庫
「アロマテラピーのための84の精油」ワンダー・セラー:フレグランスジャーナル社
「時間栄養学-時計遺伝子と食事のリズム-」日本栄養・食糧学会:女子栄養大学出版部
「Japan Aromatherapy No24,25」:日本アロマテラピー協会「Aromatherapy Environment No52,53,54」:日本アロマ環境協会