アロマテラピーとは?知っているようで知らない歴史と、精油の成分と働きについて徹底解説②

野寄 聖統

野寄 聖統

2022.07.25
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アロマテラピーは世界に広く浸透している自然療法のひとつ。植物から抽出した非常に高濃度でパワフルな成分である『精油』を用います。アロマテラピーやハーブを扱う会社の代表を務める野寄聖統(のよりまさのり)さんのコラムでは、そんなアロマテラピーについて「これさえ読めばわかる」レベルで徹底解説いただきます。

エッセンシャルオイルの影響

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ではその植物の命のつまったエッセンシャルオイルがどのように体に影響するのでしょうか?

1.嗅覚・嗅ぐ

香りを嗅ぐことによって体に吸収させる方法です。たかが匂いごときでとおっしゃる方もいらっしゃいますが、実際に香りを嗅ぐことによって、体内器官の血流がよくなったり、体温が上がったりすることは、MRIやサーモグラフィー等医学的なデータで沢山出ています。

2.吸入・毛細血管から

呼吸として空気と一緒に取り込まれた精油成分の一部は鼻、気管、気管支、肺の粘膜から、一部は肺でのガス交換の際に毛細血管を通じて血液に入り、血流にのって全身に運ばれます。

精油を吸入すると、約5分後には血中にエッセンシャルオイルの成分が出現するそうです。そして、成分によって違いはありますが、7~8分で体外に排泄されます。

3.経皮吸収・皮膚から

科学物質が皮膚を通して体内に取り込まれていくという現象はすでに確認されていることですが、ほとんどの場合、医薬品の分野で、ニトログリセリン(抗狭心症薬)、やニコチン(禁煙薬)などはパッチ薬として用いられ、経皮吸収によってその薬効を発揮することは一般的に知られています。

精油成分も有機化合物の集合体ですから、各成分が皮膚を通して体内に取り込まれ、何らかの薬理的効果を発揮することが考えられます。

精油成分には肌の調子を整え、殺菌消毒作用もあるためスキンケアに役立つものが多数あります。また精油成分は分子量が小さく毛穴、汗腺、皮脂腺などから、更には、皮脂膜や皮膚内部の皮質に溶け込むような形で浸透していきます。

そこで皮膚の真皮層にある毛細血管やリンパを通じて体内に入った精油成分は血流にのって全身へ運ばれ、組織や器官に働きかけます。実際に、ガーリックのエッセンシャルオイルを肌にと塗布すると呼気からガーリック臭が伝わってきますよ。

4.内服・経口による吸収 

吸収量がかなり多くなり家庭で行うにはリスクが高い方法です。お医者さんが専門的に取り組んでいるメディカル・アロマセラピーでは、精油を専用の希釈用基材とまぜて内服することもあるそうですが、そのような専門家への相談なしには絶対に内服しないでください。

◆吸収後は排泄

精油成分は様々な経路から体内を巡った後、腎臓・肝臓に運ばれて解毒・代謝され、尿や便、吐く息、汗などから体外に排泄されていきます。

精油の排泄は吸収と同じくらい大切です。溜め込んでもいいものではありません。必要な働きを終えた後は、ちゃんと排泄されるよう温かい飲み物を飲んだり、お風呂や足浴で体を温めて血液の循環と発汗を促しましょう。

エッセンシャルオイルの作用

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実際にどのように作用するのかメカニズムを説明していきます。

ここから結構アカデミックな内容になってくるので、ちょっと気分転換に体年齢チェックをしましょう~♪

両手をまっすぐ前に伸ばしてもらって(「前へならえっ」風に)、その腕を交差させます。手の平を内側に向け、手を組みます。組んだまま手を内側から回して前に伸ばしていきます。ひじがまっすぐのびればOKです。それを元に戻して交差させた腕を上下入れ替えて同じように手を組んで内側から前に伸ばします。

あらっ!!変な音がしていませんか!?大丈夫ですか??
この動作がスムーズにできない方は体年齢が50歳以上です。

アロマテラピーで健康になろう!リラックスしよう!
スッキリしよう!疲労回復だ!美しくなるぞ!

大いに結構ですが、先ず自分自身の心身そのものにも興味をもってくださいね。己の事を知った所(笑)で、そろそろ勉強に戻りましょう☆

アロマテラピーのメカニズムは、脳の仕組みと関連付けて説明されます。香りは、一瞬で心身の状態をシフトする即効性を持っています。

香りの刺激が脳へ伝わる時間はなんと0.2秒以下。歯痛や体の深部の痛みが伝わる時間は通常0.9秒以上かかると言われています。足の小指を強打した時に痛みを認識するまで一瞬、間がありますよね。あれです。

なぜこれほどに脳への反応が速く密接かというと、人は香りと共に生まれるからです。赤ちゃんはニオイでお母さんを認識するそうです。人間には食欲、性欲、睡眠欲…といったように色々な本能がありますが、生まれたてのまだ目もみえない赤ちゃんの場合は、本能の中でも嗅覚だけが活性化しています。

お母さんに抱かれた途端、嗅覚を頼りにお母さんの母乳を求めて乳首を吸おうとします。これには面白い実験がありまして、数枚のガーゼにそれぞれ数名の女性の母乳を染ませて赤ちゃんの前にもっていった所、自分のお母さんの母乳にだけクンクンと反応します。

どのように本能的に作用していくのか?

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香りというのは、分子となって空気中を飛んでいます。その分子を鼻から吸い込むことによって、鼻の奥にある嗅上皮でキャッチします。ここは香りを認識する1000~5000万個もの嗅神経細胞が存在します。

そこで香りの情報は電気信号に置き換えられて、動物の本能を司る脳の大脳辺縁系にダイレクトに情報が届きます。人間の五感のうち嗅覚以外の視覚・聴覚・味覚・触覚の情報はまず、大脳新皮質という“考える”ところを通ります。

嗅覚だけが直接、大脳辺緑系を通り視床下部に到達し、血管や内臓の働きを調整する《自律神経系》、体の機能がスムーズに働くように調整するホルモンの分泌に関わる《神経系・内分泌系》、体を細菌やウイルスから守る《免疫系》、に作用し、全身隅々まで香りの信号が伝達されるわけです。この仕組みには非常に重要な意味があります。

簡単に言うと、今日一日で何か香りを覚えていますか?例えば、朝通ったパン屋さんの焼きたてパンの香りや休憩で飲んだコーヒーの香りなど、フッと思い出せるかもしれません。

思い出せる方は1週間前のこの時間にどんな香りがしていたか思い出せますか?思い出せたら、ちょっとした香りマニアな感じですね。すごいです。でも普通に一週間生活しているだけでおよそ2000種類以上もの香りを嗅いでいるという報告があります。

それだけ多くの香りを嗅いでいるのにも関わらず覚えていないのは、香りの情報は普段、無意識に作用しており思考を伴っていないからです。でも、人間に備わっている五感の嗅覚以外の四感に関しては鮮明に覚えています。

どこかで見た美しい景色や、ドキドキしちゃう異性。どこかで聴いた素敵な音楽やライブでの歌声。どこかで食べた料理の味、お母さんの味、行きつけのラーメン屋さん。どこかで受けたマッサージや温泉に入ったときの気持ちよさ、大切な人とのハグハグ。

そういったものは説明できるくらいに事細かに記憶していますが、嗅覚に関してあの香りをもう一度嗅ぎたいなぁということはあまりないと思います。

ではなぜ、嗅覚は考えるところを通らずに無意識に影響しているのでしょうか。それは真っ先に必要な情報で生死にかかわるほど重要だからです。

嗅覚の重要性

見出し4画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_野寄聖統さん_香り

鼻というのは、どんな生き物でも一番前に付いています。野生の動物でいうと非常に分かりやすいのですが、いつも生きるか死ぬかの戦いをしています。無意識に影響するということは常に機能しており、敵か見方か危険はないかの情報をキャッチしようとしています。

もし、敵の臭いや危険を察知したら身を守るために全力で戦うのか逃げるのかの反応をします。人間は日常生活において、天敵はいないのでせいぜい冷蔵庫をあけて、微妙な感じになってしまったお皿の臭いを嗅ぐくらいでしょう。

しかし、人間も同じ哺乳類としてこの機能がDNAに刻み込まれています。嗅覚は重要で無意識に作用するくらい発達した器官です。

人間の場合単純に嫌な臭いを嗅ぐと体は敵がいる、危険な環境であると反応して血圧は上がり、脈拍と呼吸は速くなり消化機能は低下し戦闘状態になります。いわゆるストレス状態です。逆に心地のよい香りの中にいると、血圧、脈拍、呼吸は安定し、リラックスした状態になります。

反応として分かりやすいのが、車に乗ったときに車の芳香剤の匂いで気分が悪くなってしまう場合や、トイレの芳香剤など長時間匂いがし続ける場合などです。通常、嗅覚は生きていくための重要な判断を即座にできるように、いつもオープンな状態でないといけません。

自然な香り、即ち安全な環境であれば、他の匂いをキャッチするためすぐに慣れて同じ匂いが分からなくなります。匂いがし続けるということは、安全な環境ではない反応です。そこに居続けてもいい自然の香りではなく、体にとっては異物の香りで毒ガス空間に身をさらされているのと同じ状態です。

食べ物であれば異物や毒物を口に入れたときは、嘔吐したり下痢になったりして体の外に出そうと体が反応します。

匂いの場合は異物が体の中に入っても外に出すことはできないので、「その環境から逃げ出せ」「安全な空気のある所に避難しなさい」と体が素直に反応しているのです。

石油から合成して作った香水も当然異物です。エレベーターの中で香水プンプンな方と密閉されちゃうと、私は必死で息を止めてしのぎます(笑)

体臭も個性かもしれませんが、特に脇の汗で雑菌が繁殖した匂いは、つらいですね。自分は大丈夫と思っている方こそお気を付けください。自覚がなかったりもしますので。

ちょっとした匂いのことで残念ながら、本能的に敵や異物として認識されてしまうと、考えるところを通らずに、「なんか一緒にいたくない」になってしまします。

これは実際にあった実験データです。100人に「電話代を貸してください」とお願いをすると25人の人がOKをしてくれたそうです。

次に自然の良い香りの環境下で同じように100人の人にお願いをすると、今度は75人の人が電話代を貸してくれました。それだけ優しく穏やかで開放的な気持ちになった行動の現われだと思います。

ちなみに、私が色々とデータ調べていく中で発見した『好みの女性のタイプ』というデータがありましたので、アロマとは全く関係ありませんが紹介しておきます。

えっ!?興味ないですか・・・本当は知りたいでしょ??
でも役立つかもしれないので。

日本人の男性が好む女性のタイプ3つとアメリカ人の男性が好む女性のタイプ3つは何だと思われますか?

日本人は「かわいい・若い・素直」アメリカ人は、「知性がある・ユーモアがある・自立している」だそうです。大変お国柄が出ているなと思います。

アロマの使い方においても、面白いことにお国柄が出ていて、アメリカではビジネスの現場でよく見られます。工場での作業能力の低下防止に、靴屋さんでは、全く同じ靴なのに柑橘系の香りをつけると売り上げが上がるのでエッセンシャルオイルを活用しています。

火災保険のダイレクトメールに少し焼け焦げた匂いをつける事があるそうです。確かに本能的に危機感を感じてしまいますね。

イギリスではオイルを使ったトリートメントを積極的に行っています。ドイツでは、ハーブを使った食事療法と並行してアロマテラピーを行うことが多いです。フランスやベルギーでは、お医者さんが処方箋を出して治療行為として活用しています。

日本は活用することより、世界的にみても成分分析の分野で非常に長けているそうです。

●参考文献
「体温を上げると健康になる」齋藤真嗣:サンマーク出版
「アロマテラピーの教科書」和田文緒:新星出版社
「医師がすすめる『アロマテラピー』決定版」川端一永 横山信子 吉井友希子:マキノ出版
「アロマテラピーとマッサージのためのキャリアオイル辞典」レン・プライス シャーリー・プライス イアン・スミス:東京出版堂
「科学が立証した奇跡の香り!風水アロマの超開運術」松永修岳 藤田稔:BABジャパン出版局
「アロマテラピーのすべてがわかる事典」グリーンフラスコ:ナツメ社
最新版アロマテラピー図鑑」佐々木薫:主婦の友社
「カラーグラフで読む精油の機能と効用-エッセンシャルオイルの作用と安全性の図解-」三上杏平:フレグランジャーナル社

「プロフェッショナルのためのアロマテラピー」シャーリー・プライス レン・プライス:フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー検定テキスト1級」鳥居鎮夫 亀岡弘 古賀良彦:社団法人アロマ環境協会

「環境カオリスタ検定公式テキスト」藤田成吉:社団法人アロマ環境協会
「5つのコツでもっと伸びる体が変わるストレッチ・メソッド」谷本道哉 石井直方:高橋書店
「エッセンシャルオイルブック」スーザン・カーティス:双葉社
「体脂肪を減らす、筋肉をつけるスロー&クイックトレーニング」石井直方 谷本道哉:毎日コミュニケーションズ
「なぜ『粗食』が体にいいのか」帯津良一 幕内秀夫:三笠書房
「人生を変えるフィットネス」山本ケイイチ:ディスカヴァー・トゥエンティワン
「アロマがカラダとココロの悩みに応えます」アロマじかん編集部:枻文庫
「アロマテラピーのための84の精油」ワンダー・セラー:フレグランスジャーナル社
「時間栄養学-時計遺伝子と食事のリズム-」日本栄養・食糧学会:女子栄養大学出版部
「Japan Aromatherapy No24,25」:日本アロマテラピー協会「Aromatherapy Environment No52,53,54」:日本アロマ環境協会