『高校生クイズ』など人気番組を手がけるクイズ作家が語る展望「日本発のクイズを世界へ発信する」

近藤 仁美

近藤 仁美

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近藤仁美(こんどうひとみ)さんは、早稲田大学在学中にクイズ作家としての活動をスタートしました。2018年からは国際クイズ連盟日本支部長を務め、日本のクイズの魅力を世界に発信しています。高校生までクイズにはまったく興味がなかったという近藤さんが、どうしてクイズの魅力にハマり、作家として歩むようになったのか、その経緯を伺いました。

クイズ作家になったきっかけは「道に迷った」から

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 近藤仁美さん

私は、早稲田大学に在学しているときから、クイズ作家として活動を始めました。日本テレビ系の『高校生クイズ』という番組では、15年以上にわたって問題の作成を担当しています。

私がクイズ作家の道を歩み始めたのは、本当に偶然の出会いがきっかけでした。上京したての大学1年生の私は、人混みで道に迷ってしまったところを、『クイズ研究会』というサークルの先輩に助けられたのです。恩返しのつもりで参加した新入生歓迎会で、私はクイズの面白さに魅了されました。

それまでクイズにまったく興味がなかった私ですが、出題者、解答者、それを観戦する人たちが一体となってコミュニケーションを楽しむ様子に、大きな魅力を感じたのです。そして、私はそのまま『クイズ研究会』に入部しました。

サークルでは企業からの案件やクイズ制作の依頼もあり、その要望に応えていくとクイズ作家としての評価が徐々に高まりました。ある時、「今度個人でやりませんか?」というお声をいただいて、そのまま本業になったという流れです。

クイズの作成に数カ月かけることも

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 近藤仁美さん

クイズ作家は、テレビ、新聞、雑誌などで使われているクイズの問題をつくる仕事です。単に問題を考えるだけではなく、問題に使われる情報の正確性を確認する『裏取り』も重要な役割のひとつです。クイズは事実を伝えなければならないため、情報の正確性を深掘りするのは時間もかかるし、かなり大変な作業です。

企業の公式サイトに載っている情報が、実は間違っているケースもよくあることです。そのような場合は、1件ずつ企業に問い合わせて、同時に掲載許可も取ります。許可が下りた情報のみを、放送やクイズに使用するようにしています。

印象的な仕事のひとつに、古代エジプトのヒエログリフを使ったクイズがあります。今までにない斬新なクイズをつくりたいと考え、当時の文法や単語を勉強しながら、数カ月をかけて作成しました。絵文字を使用したことで見栄えも良く、大変でしたが楽しい思い出となりました。

他には、『頭脳王』や『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』などの番組の問題作成に携わっています。教科書の内容をクイズにする際は、できるだけ多くの人が関心を持てる内容になるよう心がけています。「これ習ったけどどうだっけ?」と思えるちょうど良い難易度を目指すのがコツです。

日本発のクイズ世界大会をつくることが目標

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 近藤仁美さん

私がこれまでクイズ作家としてやってこれたのは、ある意味、”挫折”のおかげだと言えます。クイズ作家を始めて2年目ぐらいのときに、仕事は回り始めていたものの、何となく行き詰まりを感じていました。

そんな時、新しい番組に呼ばれ、番組作家のディレクターが作家を紹介する機会がありました。「この人は地理の問題が得意」「この人は理系が専門」など、他の作家の得意分野が次々と紹介されるなか、自分はどう紹介されるのかと思っていました。しかし、「近藤さんは女性目線」と紹介されて、能力ではなく属性で紹介されたのは私だけでした。

その日は珍しく落ち込んでしまいましたが、帰宅後に重要なことに気づきました。属性でしか紹介されないということは、「先方に印象に残るものがまだない」ということだったのです。

そこから、他のクイズ作家が手を出さないような問題や、手間のかかる問題などを積極的に作成し、自分のクイズを印象に残るものにするよう努力しました。この経験がなければ、今の私はなかったかもしれません。

今後の目標は、日本発祥のクイズ世界大会をつくることです。現在、クイズの世界大会は主に海外発祥ですが、日本から世界に向けてクイズ大会を発信したいと考えています。その大会に日本に関するジャンルを設け、海外の参加者に解いてもらうことで、日本の文化を広める手段にもなればと思っています。クイズを通して、日本の魅力を世界に発信していきたいですね。