「ママ、お仕事がんばって!」ワーキングママのキャリアを支援し“稼げるママ”を輩出
ワーキングママの転職やキャリアアップを支援する株式会社mogの代表・稲田明恵さん。社名のmogは「ママ、お仕事がんばって!」の略です。ワーキングママのサポートをするようになったきっかけ、具体的なサービス内容や今後の展望について稲田さんに伺いました。
出産を機にママの働き方と向き合うように
もともと人材サービス会社に新卒で入社して、15年間正社員として勤務していました。部署が変わることはありましたが、個人のキャリア支援や企業の採用支援に携わっていました。ちなみに転職の支援がメインの仕事なのに、私自身は一度も転職をしたことがありません(笑)
転機は自分の出産前後の産休、育休の時に訪れました。その当時、ママの働き方や女性が活躍する社会といった問題は、世の中的には解決していると思っていたんです。ところが、私の周りを見ると働けてはいるけど、“活躍”というには程遠い状況。
ママの管理職はあまりいないですし、ということは、ママがいることを前提とせず夜にミーティングが入ることもありました。正社員で働いているママの実情をみると非常に大変そうでした。
そこに、人材サービスとしてもっとできることがあるのではないかと感じました。人材サービスは、社会的要請や政治の動きが深く関係します。ママの正規雇用という社会課題については、これから流れが変わっていくかなと思うタイミングでした。
ワーキングママのキャリア形成を支援
育休中に『ママボラン』というサービスを立ち上げました。育休中のママがボランティアという形でベンチャー企業などの事業をオンラインで手伝うというものです。
育休中という忙しい時に、お金がもらえるわけではない仕事をする余裕がないという人がほとんど。でも、なかには「こういうサービスが欲しかった!」と言ってくださる方もいます。『ママボラン』をやりたいという人は、これまで仕事をバリバリ頑張ってきて、出産後の自分のキャリアに不安を感じている方が大多数なので、パワフルなママが集まります。
現在の事業の柱は『ママリブラ』というママの転職支援サービスです。また、『ママノバ』というサービスは、ワーキングママがキャリアを広げるためのコミュニティで、オンライン研修やキャリアカウンセリングを行っています。
『ママノバ』のサービスのひとつとして、先ほどお話しした『ママボラン』があります。『ママリブラ』『ママノバ』を合わせると、登録数が1万人を超えました。登録していただいている方は正社員で働いているママが9割、平均年収は400万円台で、しっかりと稼いでいるママが大半です。
ママたちの多様な自己表現を可能にしたい
今の事業は、人材サービス会社時代の経験がもちろん活きています。転職支援だけをやるなら、もともといた人材サービス会社で働き続ければよかったのですが、そこではできないことがありました。
『ママノバ』を通して、職務経歴だけではわからないその人の魅力や、キャリアの趣向性がわかります。その人のパーソナリティを、転職やキャリアアップに生かせないかと考えました。
人材サービス業界はどんどんDX化が進んで、心理テストのようなものでAIがぴったりな仕事を見つけ出してくれますが、私は敢えて逆を行こうと思ったんです。
『ママノバ』でママボランに参加したり、キャリア研修やカウンセリングを受けたり、イベントに参加したりするなかで、自分の強みや自分に合う働き方について、じっくり考えることになるんです。
手厚いサポートをすることで、ファンになっていただく方が増えています。しっかりと信頼関係を構築することで、ビジネスとしてもメリットのあるサービス設定ができていると思います。
今は育休が取りやすくなったり、保育園が整備されていたりと環境は整いつつありますが、社会のワーキングママに対する理解はまだまだ追いついていません。正社員で時短勤務が可能な求人は、全体の約5%しかないんです。コロナの収束に伴いリモートワークから出勤に戻す企業も増えています。
ママ個人としては、キャリア形成の方法が多様化しているからこそ悩んでしまうんです。能力を生かしきれていない方もたくさんいるし、子育てと仕事のバランスは人によって価値観も選択肢もさまざま。正解がないからこそ、どうして良いかわからず足踏みしてしまう方も散見されます。
出産、子育てをする30代、40代はキャリアを形成するうえで非常に大切な時期。働きたいと思っているママが、モヤモヤと悩みながら大切な時期を過ごすのはもったいないと思います。自己理解を深め、自分に合った働き方を見つけてもらい、“稼げる”ママをたくさん輩出していきたいです。