「税務署は見ている。」の著者“おかん税理士“の~調査官目線を知って経営に活かそう!~vol.5

飯田 真弓

飯田 真弓

2022.10.24
アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_飯田真弓さん_税金TAX

ワクセルコラボレーターで元国税調査官の“おかん税理士”こと飯田真弓さんに学ぶ、税務の知識。連載コラム第5回は、「可処分所得を理解しよう!」というテーマです。知っているようで知らない可処分所得について、具体的な例を用いて分かりやすく解説していただきました。

便利な世の中になったからこそ、求められている臨場感

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_飯田真弓さん_セミナー会場

ワクセルのコラムをご覧になっている皆さん。

こんにちは。国税勤務26年、元国税調査官“おかん税理士”の飯田真弓です。

私は講演やセミナーで講師をする際、コロナが発生してからzoomを使うことが多くなりました。講演やセミナーの仕事は、交通事情、天候、自分自身の体調など、話の内容以外にも気を付けないといけないことがたくさんあります。でも、コロナのお陰でzoomを使うようになったことで、そんなもろもろの心配をしなくてよくなりました。

一方で、全国各地の会場に行かせていただいて、ご当地グルメに舌鼓を打って帰ってくるのが楽しみの一つだったので、ちょっと残念にも思っていました。

今年、リアルに会場で講演をさせていただく機会に恵まれました。毎年、行っていたのですが昨年はコロナのために中止になったんです。でも、今年は、コロナも少し落ち着き始め、参加者の方の強い要望もありリアルの開催となりました。

久しぶりにリアルな会場で話をしてみて、やっぱり、リアルな会場で話をするのとzoomとは違うなあと思いました。zoomは大阪のオフィスに居ながらにして発信することができる便利さはあるけど一方通行なんですよね。きちっと時間通りに話すことはできても、それ以上の達成感はなかなか得られません。

リアルな会場では、聞いてくださっている方の反応を見ながら話すことができます。表情や頷きや、その場の空気を感じることができると、ノリノリで話をすることができるんだということを身体の記憶として思い出したんです。

ちょっと違うかも知れないけど、熱烈な音楽ファンの方が、わざわざフェスに足を運ぶのも同じかもって思いました。臨場感ってやつですよね。実は、この臨場感。国税調査官たちも大切にしてるんです。税務調査に出向くことを臨場調査と呼んでいるのも、その所以だと思います。

国税調査官たちは、提出された確定申告書からは読み取れない、その人の生活観を臨場することによって、肌で感じ取るんです。税務調査では国税調査官は、調査対象者の一挙手一投足をくまなく観察するんです。ずるいことはできないと心しておくことが大切かなと思います。

可処分所得を理解しよう!

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_飯田真弓さん_ラグビーボール

では、今回のテーマに入っていきましょう。

今回のテーマは、「可処分所得を理解しよう!」です。まずは可処分所得について広辞苑で調べてみましょう。

”かしょぶんしょとく【可処分所得】
個人が自由に処分できる所得。個人所得から直接税・社会保険料を控除したもの。”

ネットで調べると、もっと他にも色々な説明がされているようですが、ここでは、シンプルに広辞苑の前段で説明されている「個人が自由に処分できる所得」と理解していただければと思います。

「“個人”もわかるし、“自由”もわかるけど、“処分”の意味がちょっとわからへんなぁ…。」

って感じでしょうか。では、ここからは、この“処分”について説明していきます。

“処分”とは、平たく言うと、あなたが1年間生活を維持するためにはどれだけのお金が必要なのか、何に使ったのか、ということです。1年だとちょっとイメージしにくいかなと思うので、1ヶ月で考えてみましょう。

Bさんの場合。

BさんはフリーランスでWebのコンサルタントの仕事をしています。家族は妻と幼稚園に通う息子と昨年生まれた娘の4人。Bさん一家が1ヶ月生活するために必要なのはいくらでしょうか。

【食費】13万円
【家賃】10万円
【教育費】5万円
【生命保険】5万円
【社会保険料】2万円
【積立】5万円

所得税や住民税などこれ以外にもあるかも知れませんが、ざっとこれくらいは必要だろうという感じ。Bさん一家が1ヶ月生活を送るためには、最低でも40万円はかかるんだということですよね。

これを12倍すると480万円。Bさんの1年間の可処分所得は、480万円と計算することができました。どんな仕事をしていても、仕事をしていなくても、Bさん一家は現状、480万円必要だということがおわかりいただけたと思います。実は、この数字が大切なんです。

もし、Bさんの青色申告決算書の所得金額が数字が300万円だったとしましょう。その場合、480万円-300万円で180万円の差額が出ます。この差額は何か、わかりますか。180万円分、本当は生活のための支出だったものが、必要経費に含まれている可能性があるということなんです。

確定申告書の青色申告決算書の所得金額と、処分したお金を合計した可処分所得がほぼ合っていれば正解です。(ここでは減価償却費のことは考えていないのと、貯金を取り崩して生活費に充当したような場合は少し違ってくるので注意してくださいね)

理屈はわかりましたか?わかりましたよね。でも、知っているのと、できているのは違います。

今まで確定申告書を提出してきて、収入から必要経費を差し引きして所得金額を計算したけど、「本当にこれでよかったのかな」ってちょっと不安に思っているという方。ご自身の所得金額が正しいのかどうかを判断する方法として、是非、可処分所得を確認してみてください。

これを機会に税務に対しての苦手意識を払拭するために、実際に手を動かしてみましょう。