手取り10万円のホストからパーソナルジムで独立。独創的なトレーナーが掲げる『フィットネス維新』とは

春木 靖隆

春木 靖隆

2023.08.09

株式会社paradigm代表取締役の春木靖隆(はるきやすたか)さんは、東京・世田谷区の用賀と三軒茶屋にあるパーソナルトレーニングジムを経営しています。トレーナーになる前は、ホストや飛び込みの営業をしていたそうです。「普通のトレーナーは少し苦手」と語る春木さんに、“他とは違う”トレーナーになった経緯を伺いました。

新宿・歌舞伎町で手取り10万円のホストを経験

私は高校生のときに、1年間オーストラリアに留学していました。そのため、高校の卒業が1年間遅れたので、私が卒業したときに同級生は、すでに就職や進学で自分の道を歩み始めていました。「自分は何をしようかな?」と考えたときに、「アメリカに留学したい」と思ったんです。

そこでまずはお金を貯めることにしました。接客業に興味があり、「女性の扱いも勉強したい」と思ったので、ホストをやることを決意。出身が福岡なので中洲で働こうかとも思いましたが、「ホストの本場は、東京の歌舞伎町だろう」と思い、1万円を握りしめて上京しました。すぐに歌舞伎町で働き始めたのですが、現実はそう甘くはなく、まったく売れませんでした。

お金にならない場内指名ではよく声をかけてもらったのですが、本指名にはつながらず、当時の手取りは10万円でした。ホストという仕事柄、気性の激しい人も多く、ケンカや言い争いなど、まるでTVで見るような体験をたくさんしました。ホストが続いたのは1年ほどで、退職してフリーターになりました。

辞めた後は、漠然と「お金持ちになりたい」と思っていました。お金持ちになるには、営業力が必要だと思ったので、思い切って完全フルコミッション制の飛び込み営業をスタート。

最初は飲料関係の訪問販売をしたのですが、これもお金にならず、苦労しましたね。転職して、インターネット回線の営業をはじめ、ここでやっと月に20〜30万円の給与を得れるようになり、人並みの生活ができるようになりました。これが21歳のときです。

接客に“エンターテイメント性”を加える

そんなときに当時の先輩から「加圧トレーニングの店舗を出したいから、そのお店をやってみないか?」と誘われました。これまでトレーニングやフィットネスとは、無関係の仕事をしてきたので、「自分にできるのかな」と思ったのですが、店を任せてもらえるという部分にひかれて、やってみることにしました。

半年間の研修の後、実際にお店がオープン。その後は、独学で色々と学びながら、トレーナーとしての知識を得ていきました。

2年間、そのお店で働いた後に、独立しました。ありがたいことに、用賀の店舗は、今年で10周年を迎えます。そしてスタッフが成長してくれたおかげで、三軒茶屋に2店舗目を出店することができました。三軒茶屋の店舗は、パーソナルトレーニングと個室サウナを組み合わせたもので、幅広い年代の人に楽しんで通ってもらえるメニューにしています。

営業畑出身の私から見れば、普通のトレーナの接客は少し物足りなさを感じます。トレーナーは、どちらかといえば職人気質の人が多く、私のように営業や接客を本業にしてきた人はあまり多くありません。

せっかく来てくれたお客さんが、「また通いたい!」と思ってもらうためには、トレーナーの接客が大切です。接客に“エンターテインメント性”が加われば、ジムに通う人ももっと増えると思っています。

今、私がこれまで営業から学んだ接客スタイルを、マニュアルやカリキュラムにしています。今後は、お客様に「ジムにもっと通いたい!」と思ってもらえるよう、最高の接客ができる人材の育成にも力を入れる予定です。

『フィットネス維新』を掲げ、事業拡大を目指す

独立したときに掲げたのが、『フィットネス維新』という理念です。日本のフィットネス人口は約3%といわれており、アメリカと比べたら、その差はとても大きいです。運動は、身体を引き締めるだけではなく、三大疾病や生活習慣病の予防にもなります。運動する人が増えれば病気の人が減り、社会が元気になり、日本がもっと明るくなると本気で思っています。

経営は、いつも自問自答の連続です。社員が退職してしまうこともあり、その際は、「自分のどこがダメだったんだろう」といつも考えています。「社長の器以上に会社は大きくならない」といわれますが、本当にその通りです。自分の器を広げるためにも、日々、学びながら成長し続けたいと思っています。

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