「あなたの腹筋は板チョコ?ブリオッシュ?」ピラティスで手に入れる“美意識”と“自意識”

TERUMI

TERUMI

2023.08.11

青柳輝美のピラティスワールドへようこそ!ピラティス・トレーナーの青柳輝美(あおやぎてるみ)です。「こうしたい、こうなりたい」という意思を持つことで、チャンスをつかめます。ピラティスを通してチャンスをつかむ人がいるということを知っていただきたいです。今回はコラム第2弾です。

フランス人がスマートな理由

「すごい!あいつは板チョコを持ってる!」

板チョコというと、フランスでは割れた腹筋の代名詞。さすが美食の国らしい表現ですね。一方ふっくら出てしまったおなかはブリオッシュです。

そういえばフランス人にはあまり太った人がいません。あれ?おかしいですね、バターたっぷりのフランス料理や甘いスウィーツは、ハイカロリーのイメージなのですが。

フランスに滞在した時、スーパーマーケットの食材売り場のシンプルさに驚きました。インスタント食品が非常に少ないのです。都市部では日本のコンビニに似た店もありましたが、やはりシンプルで添加物は少ないと感じました。

それは余計なものを身につけないということにもつながるのでしょう。

もう一つ、彼らがスマートな理由はこれ。「美意識」と「自意識」がとても高いことです。

レストランでワインを飲む時はこんな感じです。「う〜んおいしい!昨日のワインも良かったけれどこの〇〇産のワインは格別だ。色も深くて香りもフルーティだ」

どういうことかというと、彼らの頭の中には哲学があるのです。親しければ親しいほど、良いことにも悪いことにも意見を言い合うのです。

当然、身の回りのこともよく話題にします。

「今日の君、その服よく似合うね。これが似合う人は君だけだ」
「まぁ、ありがとう」

褒められてもこの会話は日常茶飯事。挨拶だと捉えておくのです。ではこう言われたらどうでしょう?

「シワのケアクリームは何を使っているの?今度あげるね。フランスには良いのが沢山あるから」

実際にこう言われた時は面くらいました(笑) 

大きなお世話なのですが「今度あげるね」ということは気にしてあげているのだよ、という意味です。美意識の哲学を持っているからこそ、他人にも口を出せるのです。

結局、クリームを贈ってもらったので良い思い出となりました(笑)  こうしたことを繰り返していくと、人に会う時もひとりでいる時も、自分に気を遣う習慣をつくるのです。

どちらかと言うと日本人は論議するのが苦手ですので、フランス人と会話をすると、ひと言もふた言も多いと感じてしまうでしょう。

先日、仕事先の整骨院で院長先生が「お客さんの中には病気のせいで痩せてしまって、気にしている人もいるから、痩せましたね!って言えないんだよ」と言っていました。

日本人は人の身体について褒めはしても、その他のことは面と向かって言いません。自分のことも都合の悪い事は、オブラートに包み込む傾向があるのかもしれません。

腹筋は笑うとやってくる

板チョコ(割れた腹筋)とまではいかなくとも、腹筋があると多少のことは乗り切れます。メンタルを強くするのも身体次第です。

前回のコラムで、「運動はリラックス」だと言いました。チカラは入れますが、リキまないのです。リキまずにチカラを入れるコツを簡単に実践できますのでやってみましょう。

おなかに手を当てて大笑いをしてみます。面白い出来事を想像して口角を上げて「アッハッハッハ」と笑ってみてください。声を出さずに真似だけでも良いです。もうひとつ、突然のハッピー・サプライズをされた場面を想像してみてください。

前者は吐く息と共に、おなかでリズムをとります。後者は「息をのむ」時のように長く息を吸い込みます。どちらも首や肩は緩んでリラックスしています。

スポーツにおいて、このようにリラックスしながらおなかにだけチカラを入れられると、重心が下がるので動きがなめらかになります。また自律神経を整えたり、内蔵圧迫からも解放されるのです。このリラックスの腹筋呼吸は日常にも取り入れて欲しいです。

アスリートが堂々として見えるのは、余分なチカラが抜けて、ゆったり伸びるような動作があるからです。ぜひ真似しましょう。

そうは言っても運動によっては一度にチカラを込める場合があります。ボールを投げる、蹴る、打つなどの瞬間です。また、武道競技などここぞ!という時にチカラを込めることがあります。

そんな時もリラックスしてください。

この時は「瞬発力」を使います。あれあれ?瞬発力とは息を止めて、エイっとリキむものだと思っていませんか?

位置について〜、ヨーイ、ドン!を想像してください。

「位置について」で手と膝を着きます。「ヨーイ」で体幹を引き上げると同時に、大きくゆったりと息を吸い込みます。そして「ドン!」で、瞬間的に走り出すのです。

アスリートはある一瞬にエネルギーを溜めても、息を止めたり反動を使うことはありません。そう、瞬発力とは「せーの!」ではないのです。

幸運はおなかで吸い上げる

ピラティスの基本は、どんなポーズをとろうとも腹筋だけに集中します。先ほどの笑顔とハッピーサプライズの呼吸を使うのです。

肩にチカラが入れば肩は持ち上がってしまいますし、首にチカラを入れれば縮みます。ですから、「おなか以外はリラックス」です。

吸い上げるように腹筋を使って、おへそもみぞおちも持ち上げると背骨は長くなります。椎骨と椎骨の間に隙間が生まれるからです。それを維持するチカラがまた腹筋をつくります。

先日、数年ぶりに病気でピラティスをやめてしまったクライアントが来ました。81歳の彼はこう言いました。「あの頃(ピラティスをやっていた頃)が一番良かった。あんなことが身体に良いなんて驚きだよね。またあの頃の体に戻りたい」

久しぶりにスタジオに来た時は、体力は尽き果てて「やっぱり無理だ!もう来ることは出来ないよ」と、言いました。息を切らして苦しそうでした。

彼は歩くこともままならなくなっていました。腹筋力を失うと、歩くことや立ち上がること、階段の上り下りも出来なくなります。背もたれに寄りかからないで座ることも、です。

しかし私は諦めて欲しくないのです。人生はまだまだ捨てたもんじゃないのです。

「さぁ、おなかを引き伸ばして!!」椅子に座りバンザイをしておなかを持ち上げ、椅子から立ち上がってはつま先立ちをし、再び座るという動作を繰り返しました。

これはピラティスのエクササイズではありませんが、背骨に寄り添う筋肉に刺激を入れたのです。同時に肩や腕、お尻、脚、足裏の筋肉も腹筋と共に使えるようにするためです。筋肉は全身で連動するのです。

汗びっしょりになりながらトレーニングを繰り返しました。帰りはなんと、杖を忘れて歩き出しました。そうです、腹筋は使った端から役立つのです。

ピラティスは何歳からでもスタートできるのです。再スタートもできるのです。たとえ病気で身体に支障が起きても、です。

生命力を作り出す体幹部さえ鍛えればなんとかなるのです。肝心なのは脳。つまり「意思」です。「意思」とは「こうしたい、こうなりたい」と思う欲求です。欲求を果たすには、自分が選んだことに集中をするのです。

幸運とは、彼の場合は健康であることですが、そのチャンスをつかむのは自分自身なのだと悟ったのです。素晴らしいですね。

彼はスタジオを出る時にこう言いました。
「また来週も来る!自分でなんとかここまで来る」

脳をだまして女神を呼び込む

私たちの脳は、一度挫折を経験するとそれを記憶します。失敗したらどうしよう、と想像力を働かせてしまいます。何度も挫折するとどうせ無理だろう、と諦めてしまいます。また、頑張らないとだめだ、とプレッシャーを感じてしまいます。しかしこんな時はどうでしょうか。

ちょっと小さめのジーンズを購入したとします。なんとか履きたい。そんな時、おなかをへこませて引き上げます。他人から見れば無理だろう、と思っても履きたい一心で挑戦してみます。本人からすると「やればできる!」なのです。ジーンズを履いてスマートに歩く自分を想像するのです。

脳をだますとはこの方法を使うことです。その気持ちは決して重いものではありません。なりたい姿に意識を集中するのです。ピラティスも腹筋も、人生はすべてこれです。

先ほどの81歳のクライアントも、この「小さめジーンズ」の方法と同じように未来の素晴らしい姿を思い描けたのです。

何事も確実にできるところから、未来を見つめてやれば良いのです。チカラを抜いてリラックスです。思い切り息を吸い込んで、幸せな自分の姿を想像してください。