eスポーツが秘める無限大の可能性
昨今、市場規模が急拡大している『eスポーツ』。子供たちの『なりたい職業』で上位にランキングされるなど、国内での人気も高まっています。本コラムでは、日本eスポーツ連合公認プロゲーマーであるGENKIモリタさんに、eスポーツの現状やこれからの展望について語っていただきました。
皆さま、こんにちは!GENKIモリタと申します。
現在、プロゲーマーとしてeスポーツの大会へ出場したり、イベントやテレビ出演、執筆業など、eスポーツタレントとして多方面で活動しております。
“eスポーツ”って言葉は聞いたことがあるけど、どんなものなのか詳しくはわからないって方もいらっしゃるかと思います。このコラムでは、世界中で愛されている魅力や、eスポーツが秘めている可能性についてお伝えしていきます。
eスポーツとはどんなもの?
eスポーツとは、『エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)』の略称です。電子的なもので、かつ競技性のあるものを指します。世界でのスポーツ競技人口のなかでも、バスケットボール、サッカーに次いで、第3位がeスポーツとも言われています。
数年前には、『eスポーツ甲子園』という高校生の全国1位を決める大会が誕生しました。甲子園で行われる高校野球の全国大会の視聴数を、すでに超えるほどの熱狂ぶりです。
昨今では学校の授業にも、eスポーツを取り入れているところもあります。子供たちが『なりたい職業ランキング』でも、1位のYouTuberに次いで、2位にプロゲーマーがランクインされるほど、憧れられる職業になっています。
新型コロナウイルスの影響で、子供たちが学校帰りの外出を控える状況のなかでも、オンライン上で友達とコミュニケーションが取れるeスポーツはますます活発になりました。今ではNintendo Switchや、スマートフォンでも気軽にeスポーツが楽しめます。
公園にリアルで集まりながらも、オンライン上でeスポーツを楽しむなど、子供たちの遊び方も変化しています。また、ゲームの世界の中が公園になっているとも言えますね。
eスポーツのリアルと現状
プロゲーマーと言っても、国内では賞金だけで生活している人は、ほとんどいないのが現状です。8割近くの方はYouTube投稿や生配信などの活動をする『ストリーマー』と呼ばれています。
ゲームをどうやってプレーしたらいいかってことを知りたい方も多いので、やり方を教える動画は再生数も稼ぎやすいです。それでも、会社員との兼業で活動されている方がほとんどですね。
大会の賞金だけで生活しているトップアスリートもわずかにいますが、他のスポーツ選手と同様に、スポンサー契約に支えられている方が一般的です。他にはゲームの講師や、講演会、テレビやイベントに出演して稼いでいる方もいます。
少し前まで「ゲーマーはオタクで暗い」ってイメージもありましたが、今ではガラリと印象が変わってきたように思います。コスプレイヤーや声優さんも同様に、ゲームを含めた日本のサブカルチャー全体が「かっこいい」と言われるようになりました。デジタルをかっこよく見せるという、デバイスを販売する側のブランディングも影響していると思います。
僕は学校で授業をすることもありますが、学生のなかでも「ゲームが強い」ということがモテる要素のひとつになっているようです。女性でゲームをやる人も多いので、コミュニケーションのきっかけになったり、その縁で結婚につながっているカップルもいます。
eスポーツが抱える課題
eスポーツ業界にも課題はたくさんありますが、大きく分けると3つあると考えています。
1.法律について
景品表示法の問題もあって、国内の大会では高額な賞金があまりもらえません。eスポーツではまだ法律が整備されてないこともあり、賭博法に入ります。
僕が知っているなかでも、国内の大会での賞金は多くても1億円程度ですが、海外では賞金の規制がなく、100億円規模の大会もあります。中国で流行っている『アリーナ・オブ・ヴァラー』というゲームの大会でも16億円の賞金が出るなど、競技人口が多いのもあって市場規模が大きいですね。
2.プロリーグの有無について
ゲームのタイトルによっては、まだプロリーグが設立されてないものもあります。国内にプロリーグがあるかないかで稼げる金額が大きく変わってきます。
お隣の韓国では1990年代初頭からeスポーツが文化として根付いていたので、強い選手がたくさんいます。日本では最近になってブームがやってきたこともあり、ようやく世界大会でも勝てるようになってきました。海外のチームからオファーが来て、世界へ進出するプレーヤーも増えました。
3.タイトル選びが難しい
他のスポーツと同じですが、何の種目を選ぶかによって稼げる金額が変わってきます。メジャーなタイトルで強くなれば年収1億円も夢ではありませんが、マイナーなゲームになるほど稼ぐことは難しくなります。
また、せっかく強くなったゲームでも、メーカー側からのゲームの生産が止められてしまったら、鍛えた能力が活かされない可能性もあります。
基本的には早めに始めた方がうまくなるので、「これが当たるかな」というゲームを見つける先見性と、うまく流行の波に乗っていくことも大事です。
eスポーツで世界に挑戦
今度の展望は、僕自身が世界挑戦することです。サッカーゲームに関しては、リアルなサッカーチームのeスポーツ選手になれるという道があります。
ユベントスやバルセロナといった世界に名だたるチームに所属して活躍することが目標。ビッグクラブに所属している日本人はまだいないので、日本人初を目指しています。そのためにもまずは、いま参加している大会で世界チャンピオンになります。
また、ワクセルでのプロジェクトとしての活動としては、宮崎県でのeスポーツイベントを推進しています。障がい者の方も気軽に参加ができ、年齢・性別などの壁をなくせるのがeスポーツの魅力のひとつです。宮崎県では初の試みですが、すべての人が楽しめる場所を作っていきたいですね。