グルテンフリー&オイルフリーのベーグル専門店の店主が語る「おなかに優しいパンを届けたい」
グルテンフリー&オイルフリーのベーグルとシフォンケーキの専門店『いもこめ』の店主である池田百音さん。コロナ禍を経験したことで、将来に違和感を覚え大学を休学・退学。最初は趣味から始まったベーグルづくりは家族を思い、今では多くの人に届けられています。姉と二人三脚でチャレンジし続ける池田さんに、今の活動に至るきっかけや今後の展望について伺いました。
大学院生からいもこめ店主へ
現在、『いもこめ』店主として働いていますが、元々飲食のバックグラウンドがある訳ではなく、おととしの秋までは医療系の大学院に通う学生でした。新型コロナウイルスの影響もあって、zoomでの授業が多く、自分がこのまま学んでいくことに少しずつ違和感を覚え、休学をして実家に戻りました。
さらに遡ると、私は自分が一人暮らしを始めて食生活をコントロールできるようになったタイミングで、米嫌いになっていたことに気がつきました。そこで、米を炊く以外の方法でお米を食べれないかと思い、小麦粉に米粉を配合してパンをつくり始めました
元々姉と父親が大のパン好きで、父親はバケット丸々食べてしまうほど。しかし、姉の体質にグルテンが合わず悩んでいたり、父親も胃腸が弱く胃腸疾患を持っているのを間近で見てきました。
そんな人でも食べられるパンをつくりたいと思って、グルテンフリーの米粉に着目しました。米粉パンのレシピは米粉特有のべちゃっとした感覚をなくすためにオイルをたくさん使うのですが、父親でも食べられるオイルフリーでおなかに優しいパンをつくりたいと思って、オイルを使わずにできないかと試行錯誤しました。
たくさん試したなかで見つけたのがサツマイモの粉です。現在は米粉とサツマイモの粉を配合してベーグルをつくっています。他には、姉が米粉とサツマイモの粉を使用して、シフォンケーキをつくっています。
今、楽しいと思った方に進む
親は、小さい頃からなるべく自然なものや手づくりのものでお料理をつくってくれていました。家族の影響もあり、昔から口にするものに対してちゃんと選んで食事をしたいと言う思いは強いと思います。
ただ、私は元々栄養の知識があったかというとそうではありません。私自身が、誤解をもとに食事選択をするようになり、とても体重が落ちた時期がありました。これではダメなんだろうなと思って見直そうと思った時に少し栄養学を学んだくらいで、栄養士などに比べたら、栄養については初歩しか学んでいません。
医療系のことだけを学んできて、専門職を養成する過程に進んでいたので、退学したことで、描いていた将来像がすべて崩れ、何をしたら良いか分からない状況でした。最初はベーグルづくりを仕事にしていこうとは考えてなく、友達に届けるところから始めていました。
ただ、正社員として英会話関連で働いていた時も頭の中はベーグルでいっぱいです。みんなそういう風に趣味と仕事を分けて両立しているのかなと思っていたんですが、「グルテンフリーやオイルフリーを求めている人はいるよ」という言葉を姉がずっと伝えてくれたので、じゃあやってみようと心が動いたことが開業したきっかけです。
姉はやると決めたらやるし、「今、楽しいと思った方に進む」という考えの人です。見ていて迷うときもあると思いますが、自らの行動で見せ続けてくれています。そんな姉の影響をすごく受けているなと思います。
より多くの方に「おなかに優しいパン」を届けたい
苦労した点は2つあって、1つ目がオイルフリーのレシピがないことです。グルテンフリーの米粉以外の粉で、米粉と相性が良くてオイルフリーでできる粉をずっと探し、コンスターチ・片栗粉・タピオカ粉などいろんな粉を試しました。
そしてようやくたどり着いたのが、さつまいもの粉。さつまいものデンプンによってベーグルの表面が真っ白く焼けてしまうので、それを防ぐために最初はオイルを表面だけ塗っていました。でも、それだとオイルフリーにならないということで、試行錯誤して今のやり方にたどり着きました。
また、パンづくりを専門に学んできていないので、日本の四季ならではの湿度・気温の変化に対応することにも苦労しましたね。今でも日々勉強しながら毎日パンを焼いています。
少しずつ厨房の設備を整えて、もっと多い注文数に対応できるようにしていきたいです。また、InstagramやWEBサイトなども駆使して、より多くの方に「おなかに優しいパン」を届けたいです。
私が描いている理想はまだ明確には定まっていません。シェアキッチンでカフェ・個人店で対面販売・マルシェをやっていくなかで、出会った人やつながりから、おもしろいなと思うことが見えてくるものがあると思います。
そこを信じたいし期待しつつ、自分自身が届けたい・必要とする方にこのパンを届けたいです。日々、おもしろいと思っていることのつながりを信じて楽しみながらやっています。