就労継続支援の常識をITで変える!Webワーク特化型の事業とは?
福祉業界において障がい者雇用はまだまだ発展途上の業界です。その現状を踏まえながら異業種であるIT業界から、Webワーク特化型の就労継続支援B型を運営している『GIF-TECH’s(ギフテックス)』どんな思いを持って事業所を立ち上げたなどの経緯について、副社長の近藤さんに伺いました。
就労継続支援の現状を知り「ないなら自分たちでつくる」
GIF-TECH’sは、代表取締役社長である平山と僕の共同創業ではじめた、Webワーク特化型の就労継続支援B型の事業所です。2021年12月に開所しました。
僕の経歴を少しお話ししますと、大学3年生のときに先輩と麻布十番に飲食店をオープンさせ、25歳まで飲食店の経営に携わってきました。その後、会社員と並行してWebの個人事業として活動し、27歳で独立。タイなどで飲食店コンサルに携わりながら、さまざまなネットビジネスについて勉強しました。
国内外を行ったり来たりしながら活動していた時に、新型コロナウイルスが蔓延し始めました。その頃は主にパタヤを拠点としていたのですが、帰国してみると国内市場は激変していたんです。ビジネスの再構築を考えたときに、日本でやるなら業種を絞った方がいいと考え、福祉に絞りました。
麻布十番でレストランを運営している時に、お店を懇意にしていただいてるお客様の1人に、平山のお父様がいました。医療法人の経営を始めさまざまな事業をされている実業家の方で、出会ってから8年ほど経ちますが、ずっと仲良くさせていただいています。あるとき「息子と仕事してみないか」と誘われたことで、平山と知り合いました。
平山と事業について検討した結果、「グループホームが面白そう」という結論に至り、得意分野であるITに特化して、Webに親しみやすくなれるグループホームをつくれないかと、模索しました。いろいろと調べていくうちに、就労継続支援というものがあることを知りました。
給料についても調べたら、就労継続支援B型の場合は全国平均で月額16,000円前後。「なんでこんなに低いのか」と衝撃を受けました。たとえばサムネイルや動画をつくるのも何千・何万円とかかるのに、なんでこんなに違うのか疑問が浮かびました。原因はWebに特化した事業所がないからではないかと推測しました。あったとしても名刺作成や代行入力などの事務作業です。
「どこにもないなら僕たちでやろう」というのが最初のきっかけでした。世の中のニーズにもマッチしていて、片道2時間かけて通所している方もいます。それは東京だけではなく、関東一円にそれだけ選択肢がないということになります。
目指したのは「自分たちが働きたいオフィス」
この事業所の強みは、フリーランスや個人事業主でも成り立つレベルのWebスキルを提供しているところです。あとは事業所の「見た目」も、他とは違うのが売りですね。
就労継続支援を受けている人は、1日の行動のなかで役所・福祉施設・病院を往復していることがほとんどです。僕らビジネスパーソンも全く同じですが、雰囲気が暗いところばかり行くと気持ちが沈んでしまいます。でも行き先がホテルやきれいなところだと、自然と気持ちも上がると思います。行動範囲のどこか1ヵ所に、非日常的な空間を提供したいと考えました。
事業所の場所も重要なので、決めるときは徹底的に考えぬきました。各市区町村の障がい者の人数、手帳取得数などすべて調べました。交通手段についても、都営電車だと障がい者パスで無料になることもわかりました。みんなが通所しやすいことを考え、都営電車が使える板橋で事業所を構えることに決めたんです。
自己肯定感を高めることのひとつとして空間提供をしたかったので、内装にもとことんこだわりました。ホテルのロビーをイメージしていて、細部にまでこだわっています。
まずは自分たちが、「来たい・使いたい」と思うような場所にしようと心がけました。他企業の訪問をしたときに、きれいなオフィスだと働きたいと思うことがありますよね。シェアオフィスもきれいで使いやすいところを選んで利用すると思います。
デスクは広さがあって電動昇降式、椅子はちゃんと上下するもの、間接照明にして、部屋には植物を置いています。僕がパソコンで作業することが長いので、僕が使いやすいと思うことをひとつずつ実現させました。「テンションがあがる」というのは仕事において重要です。重たい気分になっているときに面白いものなんてつくれません。
他にも、寝れる部屋をつくったり、壁を防音にしたり、ここを利用する人がもう一度頑張ろうかなと思えるような空間になればうれしく思います。
福祉のIT化に立ちふさがる「認可」という壁
関連企業が僕らにあればあるほど、皆さんの選択肢が増えるので、他の企業といろいろとコラボレートをしています。自分たちだけでやっていこうとは全然思っていないですし、会社同士のつながりがたくさんあった方が、人と情報と案件の行き来も増え、さまざまな案件に触れられます。
それでも東京都の福祉において、IT化がまだ十分ではないという現状にはジレンマがあります。僕たちの事業は国の認可事業なので、新しいことをはじめるにしても、東京都が理解を示さないと基本的に認可はされません。全国的にみても東京都は認可が厳しいと言われていて、IT化に関しても同様です。それもWeb1.0で止まっているんです。
実際、今の事業所の認可がおりるまでに4、5カ月ほどかかりました。世の中からしたら新しいことをやろうとしているわけではないですが、福祉の業界でITは新しい試みというだけです。東京都には、ITを活用する施設がまだ少ない理由はここですね。
この現状としっかりと向き合い、利用者の人たちが安心して活躍できる場をつくっていきたいと考えています。