女性が自分の気持ちに正直に自分らしく生きる社会を目指す
女性のエンパワーメントやジェンダー平等に関わる活動をされている中尾有希さん。女性が自分らしく生きていくことをサポートするHerStory Japanを立ち上げていて、ご自身の体験や気づきが団体設立の基となり、活動のミッションにもなっています。本コラムでは、中尾さんが辿ってきた道や、どんなヴィジョンを描いているかなどをお話しいただきました。
摂食障害を経験して得た「自分の生き方」
自分の生き方を決定づけた経験はいくつかあります。
1つめは幼少期を海外で過ごしたことです。海外生活の中で、「あなたはどうしたいの?」と聞かれていたことが、物事を取捨選択するときの礎になっています。
また、中学3年生のときに摂食障害になったことが大きな分岐点でした。拒食と過食を繰り返すなかで、自己肯定感の低さや周りと比べてしまうことに悩まされていました。
そのときは自分の価値を必死に追い求めていて、自分の見た目や美しさに価値を見いだせなかった分、それを補うために勉強に力を注ぎました。その結果、望んだ大学に進学することができ、留学もすることができました。
何ひとつとして無駄な経験はなかったと摂食障害から学びました。当時は人生のどん底だと感じていましたが、このどん底がなかったら、これまで私が得てきた色んな経験や知識はなかったと思います。
その経験から、「辛くてもなんとかなる」というマインドセットと、「この経験がなかったら将来自分が得られるはずのギフトは得られない」と思うことが、前に進む原動力になっています。
当たり前を疑い、自分を解放すること
留学や大学での経験から、世間一般から当たり前だと押し付けられているものを疑うという『クリティカルシンキング』の考え方を学びました。
幼少期に教えられてきた「あなたはどうしたいの?」という考え方に通じますし、摂食障害になった背景には「女性は美しくなければならない」「美しいとは細いこと」という、社会通念を打破できなかったことがあったとも思います。
まずは当たり前を壊して、本当にそうなのかと自分の頭で考えることを学んだおかげで、社会的な通念によって自分の生き方や考え方が否定されていることや、そこからどうやって自分を解放できるかという考え方になりました。
それが女性のエンパワーメントの活動につながっています。自分で自分を制約してしまっている考え方から、どうやったら1人でも多くの人が解放されるかを考えることが、女性のエンパワーメントやジェンダーに関する活動のバックボーンになっています。
HerStory Japanという団体は、2020年1月に立ち上げました。この団体のミッションは女性にとってのロールモデルを多様化することです。さまざまな生き方やキャリアの築き方をしている女性を、1人でも多く後押しするコミュニティになるように活動しています。
コミュニティはとても大事です。自分ひとりだけが世の中の在り方に違和感を覚えたとしても、自分だけだと第一歩を踏み出すのは難しいと思うんです。そう感じている人は実はたくさんいるんですが、ひとりだと思っているから声に出せない。
HerStory Japanや、学生時代に立ち上げたWomEnpowered Internationalを通じてメッセージを発信することで、違和感を覚えている人たちにも「自分だけじゃないんだ」と気づいてもらいたいと思っています。
私は考える前に動くタイプなので、大きな挑戦の前にも構えることはあまりありません。始めてみると思ったより大変だったと感じることはありますが、とりあえずやってみることを大事にしています。計画しても計画通りにいくことはほぼないですから。大きな目標と、そこに至るまでのシナリオをいくつか考えて準備はしますが、あとはやりながら考えています。
行動するなかで大切にしているのは、あまり自分にプレッシャーをかけすぎないことと、今までの自分の実績と結果を信じることです。とりあえずやってみてからでも大丈夫だろうというのが経験知としてあるので、きっと考える前に動いてしまうんですよね。だから挑戦に対するハードルは低いんだと思います。
ルールや当たり前に囚われない社会をつくる
世界中すべての女性が、女性であるということを理由に制限されない社会をつくることが私の夢です。HerStory Japanでは、今までのルールや当たり前に囚われない生き方をしている人のストーリーを、より多くの人に届けることが使命です。
これは会社員の仕事の外でやっていることなので限界はあるにしても、着実に実績を積んで継続することが大事だと思って活動しています。
勤務先でも、従来になかった女性のネットワークを立ち上げました。今まではボランタリーの活動をしていましたが、今度は自分がいる組織の内側から組織の在り方を変えていくという挑戦です。
勤務先の会社はグローバルなネットワークを持っている会社なので、テリトリーの違いを超えて、女性が働きやすい職場や、女性の自由なキャリアビルディングについて発信と交流をしていきたいです。
まずやってみることを大事にして、私が当たり前に囚われずに私らしい生き方をしていきたいと思います。