アロマテラピーとは?知っているようで知らない歴史と、精油の成分と働きについて徹底解説①
アロマテラピーは世界に広く浸透している自然療法のひとつ。植物から抽出した非常に高濃度でパワフルな成分である『精油』を用います。アロマテラピーやハーブを扱う会社の代表を務める野寄聖統(のよりまさのり)さんのコラムでは、そんなアロマテラピーについて「これさえ読めばわかる」レベルで徹底解説いただきます。
アロマテラピーは世界に広く浸透している自然療法
アロマとは、『よい香り』『芳香』という意味で、テラピーとは、療法という意味です。すなわちアロマ+テラピーとは自然の良い香りを使った新しいけれども歴史ある健康法と認識していただければ、分かりやすいですね。
アロマテラピーは現在、世界中で注目されている自然療法のひとつで、個人で楽しむのはもちろんですが、エステサロンやリラクゼーションサロンでよく行われています。
最近ではスポーツクラブや宿泊施設、美術館等でのサービスとして、また歯科医院や病院等では、医療従事者が本格的に取り入れている所も多くなりました。海外では医療保険が使えるような国もあります。
一時は歴史から姿を消していたが、近代の事故をきっかけに復活
◆アロマの歴史
ではいつ頃から注目をあびるようになったのでしょうか?
古代エジプト文明からミイラの防腐技術、宗教的儀式やエステの基礎となる香水やハーブオイルにも利用されていたといわれています。
エジプトからイスラエル、ギリシャ、ローマ、地中海地域全体、インドではオイルトリートメントの最も古い形“アーユルヴェーダ”として、現在も継承されています。
それぞれの地域の文化でアロマは発達し人々の暮らしに役立てられていきました。ですが、時代が進み世界大戦などの大量に傷病者が出る中、人々はすぐに「作れてすぐに結果の出るもの」を求めるようになりました。
薬を使う治療などの対症療法です。ハーブを栽培して役立てるにはあまりに時間かかるからです。現代科学の到来と健康保険制度により、医師の治療の恩恵を受けるようになり、何世紀にもわたって蓄積されたハーブやアロマの知識は失われることとなってしまいました。
近代文明で復活したのはフランスの科学者の事故がきっかけといわれていますがそれは1928年?1930年?1932年?と、文献や様々な協会や団体によって多少解釈の違うところもあります。別にテストに出ないのでだいたいそれ位の時期でいいです。
せっかくアロマテラピーを取り入れてリラックスって時にそんな事でストレスを増やしても仕方ありませんから先に進みましょう。
フランスの科学者ルネモーリス・ガットフォセが、研究室で作業中に爆発事故を起こした際に腕に大火傷を負いとっさに冷たい液体の入ったバケツに腕を入れた所、痛みが和らいだ上、赤みもなく、炎症も水疱もできませんでした。
「すげ~バケツだ!!」ではなく、そのバケツに入っていた液体は、偶然にもラベンダーから抽出したオイルだったのです。そこから、アロマテラピーという言葉を造って、研究を開始し近代文明に復活をしたわけです。
精油・エッセンシャルオイルは植物のエネルギーが凝縮された貴重な成分
精油・エッセンシャルオイルとは、植物から抽出した非常に高濃度でパワフルなもので、一言でいうと植物の魂のようなものです。
現在、地球上に存在する植物から抽出できるものとしては約200種類あるといわれています。エッセンシャルオイルはその植物から、数パーセントしか抽出できません。
1kgのエッセンシャルオイルを抽出するのに、ラベンダーであれば100kgの花が必要となります。更に抽出しにくいローズでは2000kgの花が必要となります。ローズの場合、計算すると植物に対して0.0005%しか含まれていません。
基本的に瓶のドリッパー(口の部分)は1滴が0.05mlになるように量られていますので、先程のローズ1滴0.05mlを抽出するのに約50本の花が必要です。エッセンシャルオイルの瓶15mlとすると、30kg・約15000本分の花が必要になります。
抽出しやすいレモンでも1瓶300個分のレモンが必要となります。ですから、非常にたくさんの植物が濃縮されたものとなり高価で貴重なものです。
これほど濃縮されていますから、普段嗅ぎ慣れていないハーブの香りは特に強烈に感じますし、レモン等の親しみやすい柑橘系のオイルはフレッシュで美味しそうな香りがします。でも、決して飲用しないでください。粘膜や内臓に負担がかかりますし、何より美味しくないですから(笑)
エッセンシャルオイルは過酷な環境と戦う植物だけに存在する
このエッセンシャルオイルは、植物にしか存在しないものです。何のために植物にだけ存在するのかは完全には解明されていません。
分かっていることは生き物が生きるために環境と戦わなければならない、そして動物と植物との大きな違いは、動物は生きていく上で自分の意思で動くことができるということです。
危険があるとその場から立ち去ることができるし、お腹が減れば食べられるし、のどが渇けば飲み物を飲むことができます。
人間にいたっては暑ければ、服を脱いだりエアコンを入れたり、よく冷えたビールを飲むこともできます。寒ければ、コートを着たり、こたつに入ったり、お鍋を食べたりもできます。会話をしたりデートをしたり様々な表現でコミュニケーションをとることができます。
しかし植物は一度そこで生まれたら、その環境の中、成長し子孫を残していかなければなりません。栄養分や水分が欲しいからといって動き回るわけには行かないので、しっかり根をはり、光にむかって葉を伸ばし成長し続けていきます。
デートもできないような過酷な自然環境の中で力強く活き活きと生存していくわけです。そのような動物と植物との違いの中で、植物が生存し、繁栄していくため、身を守る手段としてこのエッセンシャルオイルが存在するのではないかと考えられます。
芳香成分の5つの働き
では実際に自然の中で芳香成分はどのような働きがあるのでしょうか。
①
種を残し、広範囲に生育していくために媒介者の昆虫が好む精油成分で誘引をして種を運んでもらい、また反対に天敵となる昆虫の攻撃から身を守るためにその昆虫の嫌な芳香成分が役立ちます。またその昆虫の捕食者を誘引することもあります。昆虫だけにとどまらず、他の植物の発芽や成長を妨害したりもします。
②
細菌やウイルスからの防御をし、傷を回復する役割があります。
③
脱水を防止するため芳香成分を発散させ葉を覆い、水分の蒸発を防ぎます。分かりやすいのは松の木ですね。特に日差しの強い時に松の木のそばに行くとスッキリする香りをより強く感じるのはそのためです。
④
生理活性作用もあります。例えばバラの花びらにはあらかじめ、しおれる時期が遺伝子によってプログラムされていて、時期がくると特定の細胞が死んでいくようになっています。精油成分がそのスイッチを入れる役割をして細胞死を促し活性化させる働きがあります。
⑤
植物同士のコミュニケーションの役割を担っていることも分かってきています。シラカバなどは昆虫によって葉を食べられると、精油成分を発散してシラカバ仲間にその危険を知らせます。危険を察知したシラカバ仲間は、その虫の成育を抑制する物質を発散し、被害の拡大を防いでいるといわれています。
他にも解明されていないような働きがまだまだありますが、すべては植物がその環境やストレスと戦っていくためのエネルギーです。
このように動物にはないエネルギーを植物はたくさん備えています。そういった自然のエネルギーを我々の健康のために役立てようというのがアロマテラピーです。
エッセンシャルオイルはたくさんの植物の命が凝縮された、大自然からの贈り物です。自然の恵みに感謝をして大切に活用しましょう。
●参考文献
「体温を上げると健康になる」齋藤真嗣:サンマーク出版
「アロマテラピーの教科書」和田文緒:新星出版社
「医師がすすめる『アロマテラピー』決定版」川端一永 横山信子 吉井友希子:マキノ出版
「アロマテラピーとマッサージのためのキャリアオイル辞典」レン・プライス シャーリー・プライス イアン・スミス:東京出版堂
「科学が立証した奇跡の香り!風水アロマの超開運術」松永修岳 藤田稔:BABジャパン出版局
「アロマテラピーのすべてがわかる事典」グリーンフラスコ:ナツメ社
「最新版アロマテラピー図鑑」佐々木薫:主婦の友社
「カラーグラフで読む精油の機能と効用-エッセンシャルオイルの作用と安全性の図解-」三上杏平:フレグランジャーナル社
「プロフェッショナルのためのアロマテラピー」シャーリー・プライス レン・プライス:フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー検定テキスト1級」鳥居鎮夫 亀岡弘 古賀良彦:社団法人アロマ環境協会
「環境カオリスタ検定公式テキスト」藤田成吉:社団法人アロマ環境協会
「5つのコツでもっと伸びる体が変わるストレッチ・メソッド」谷本道哉 石井直方:高橋書店
「エッセンシャルオイルブック」スーザン・カーティス:双葉社
「体脂肪を減らす、筋肉をつけるスロー&クイックトレーニング」石井直方 谷本道哉:毎日コミュニケーションズ
「なぜ『粗食』が体にいいのか」帯津良一 幕内秀夫:三笠書房
「人生を変えるフィットネス」山本ケイイチ:ディスカヴァー・トゥエンティワン
「アロマがカラダとココロの悩みに応えます」アロマじかん編集部:枻文庫
「アロマテラピーのための84の精油」ワンダー・セラー:フレグランスジャーナル社
「時間栄養学-時計遺伝子と食事のリズム-」日本栄養・食糧学会:女子栄養大学出版部
「Japan Aromatherapy No24,25」:日本アロマテラピー協会「Aromatherapy Environment No52,53,54」:日本アロマ環境協会