たい焼きを通じて
野寄聖統(のよりまさのり)さんは、医療系の公務員として勤務後、接骨院の副院長とアロマスクールのインストラクターを兼務し、全国のエステサロンやリラクゼーション施設の品質管理や技術指導を担当しました。その後、アロマテラピーやハーブを扱う会社の立ち上げや、オーガニック製品の販売やコンサルタント、飲食事業を展開しています。本コラムでは、野寄さんが経営している「たいやき甘味処おめでたい」を通してお客様や一緒に働く方、そのご家族との関わりにおいて大切にしていることを語ります。
好き嫌いではなく、世の中に価値を提供したい
そもそも甘い食べ物は、そんなに好んで食べません。
でも、「たいやき甘味処おめでたい」を経営しております。
好きでもないのに何でですか?
ってよく聞かれます。
消費者として経営しているわけではありません。
消費者目線で喜んでもらえるように経営をしています。
だから、研究するし、勉強をする。
いいものを提供できるように、スタッフが楽しく仕事ができるように、人間関係の構築や環境整備もします。
そして、たい焼き屋さんという職場を提供する事で、人生が変わる人がいる事です。
最近も素敵なストーリーが生まれました。
まず一つ目は、スタッフのご両親が来店されたことです。
どうしてもオーナーの野寄聖統に会いたいとのことで、ドキドキしながらこちらも気合入れてお待ちしました。
職員室に呼び出された気分です。色んな心当たりがありすぎて、何を言われるんだろうって自然とネガティブになりますね(笑)
来店されたご両親は、障がい者スタッフである息子さんの今までのお話をしてくださいました。
とにかく壮絶でした。ずっと一緒に過ごしている家族だと尚更です。
でも、そんな彼から今年ご両親はそれぞれお年玉をもらったそうです。
初めてのことで、大変感動されていました。
彼よりも年上のスタッフが、
「お給料もらったら一人前。ご両親にお年玉を渡す側になるんやで」
って言われたのを素直に実践したようです。
とは言っても照れくさかったんでしょう。
ご両親には「お店の人に渡せって言われたから」って言いつつも、無造作にお札を畳んで3000円ずつポチ袋に入れて渡してくれたそうです。
お母様は、本当に嬉しくて、不器用に折りたたまれた3000円の束とポチ袋は宝物として一生大事にしたいとのことでした。
お父様は、言いにくそうにしていたので、すでに使っていたようです(笑)
嬉しいです。
一緒に働くことでただ単に、売れるたい焼きを焼けるスタッフを育てただけではなく、ご両親にも喜んでいただけるような職業観も一緒に身に着けてもらえたようです。
現在おめでたいのスタッフは全員障がい者の方です。
でも就労支援施設ではありません。
雇用保険に加入し一般の雇用と同じ時給で、一緒に働いています。
お客様は、たい焼きに価値を感じているからお金を払い、それに見合ったサービスを受けることができます。
こちらが、障がい者であろうが、料理の鉄人であろうが関係ありません。
お客様にとっては、その金額のサービスを期待しているわけです。
1匹230円のたい焼きを喜んでいただける接客と新鮮な美味しいたい焼きを提供することが仕事です。
「障がい者だから・・・。」って言い訳に使った瞬間に、自分の責任ではなくなるので、その正当化によって工夫や改善や成長がなくなります。
仕事だから甘えるなと指導しています。
働く意欲があるのであれば作業ではなく価値を提供できるように働く。
関わる人や家族、皆さんの幸せにつながるよう、たい焼き屋は人生道場として働くことを通じて世の中に価値を提供していきます。
チャンスはすべて自分次第
最近の2つ目のストーリー
視覚障がい者のお父様から直接連絡をいただいて、同じように視覚障がいのある娘さんを雇ってほしいとの事でした。
障がいも人によって度合いが様々、できること、できないことも様々です。
一先ず今回は、体験で来ていただきました。
仕事内容として、たい焼きを焼く以外にも、注文を記入したり接客等、視力が必要な作業もあり採用はできませんでした。
元々甘い物も好きだそうで、一日体験ではすぐにたい焼きを焼けるようになってしまいました。
最後は家族の分も焼いてお土産にしていました(笑)
障がいがあっても、働く意欲があれば、チャレンジできるフィールドはきっとあります。
正直言って障がいがあってもなくても働く意欲がなければ、せっかくのチャレンジできるフィールドも価値がありません。
チャンスはごろごろしてます!
全部自分次第です♪
障がいをものともせず楽しくたい焼きを焼いている姿を見て、なんだか感動してしまいました。
ありがとうございます。