「それは自分の夢ではなかった」~歯科医師・風嵐俊佑さんのパラレルな生き方~

岡田 慶子

岡田 慶子

2026.06.29
見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_岡田慶子さん連載vol.20

「それは、自分の夢ではなかったんです」

今回、歯科医師であり脳科学コーチでもある風嵐俊佑さんにお話を伺う中で、最も印象に残った言葉です。

夢を持つことの大切さはよく語られます。

しかし、自分が追いかけている夢が「本当に自分自身のものなのか」「心の底から叶えたいものなのか」を問い直す機会は意外と少ないように思います。風嵐さんのお話は、そんなことを考えさせてくれるものでした。

私はこれまで「パラレル活動」をテーマに、多くの方にお話を伺ってきました。

パラレル活動とは、複数の仕事を持つという意味ではありません。
仕事も、家庭も、地域も、趣味も。
一つの肩書きだけでは語りきれない人生を、自分らしく生きていること。

好きなことを追求した結果、活動の幅が広がった人。
興味関心の赴くままに新しい挑戦を重ねてきた人。

そんな人を私は自身を含めて、パラレル活動家®と呼んでいます。

今回の風嵐さんの場合は少し違います。

パラレルな道が「やりたいこと」から始まったというより、自分自身との葛藤や行き詰まりの先にあったからです。

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風嵐さんは現在、歯科医師として医院を経営しながら、脳科学コーチとしても活動されています。もともとは英語や文学に関心がありながら、将来就きたい仕事のイメージはなく、歯科医師を目指していたわけではなかったそうです。

親身に相談に乗ってくれた親戚から「人生は思うように変えられる」という本を渡され、歯科医師を勧められて進路を変更。文系から理系という進路変更ながら、努力の甲斐あって歯科医師免許を取得。勤務歯科医師としてスキルや知識、経験を重ねて独立開業した後は、経営者として厳しい時期を経験されたという話も、なかなかです。東日本大震災の頃には資金繰りに苦しみ、通帳残高が14万円まで減ったこともあったそうです。スタッフも抱えてのこの状況…なかなかの修羅場です。

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歯科医師として患者さんと向き合いながらも、「もっと頑張らなければ」「もっと大きなクリニックにしなければ」と、常に何かに追われるような感覚があったといいます。

努力しても思うように突破できない。
あと一歩のところでうまくいかない。

そんな経験を繰り返す中で、自力だけではたどり着けない何かがあるのではないかと学び続けたそうです。ご本人は当時を振り返って「セミナージプシーでした」と笑います。
その必死さのなかで風嵐さんがした選択は、1冊の本を300回読むことでした。 実際は音声読書だったそうですが、それでも300回です。そして300回を迎えたころ、人生の分岐点が来ます。アタマの中の霧が晴れて、ハッとではなく、深く気づいたのです。

長年追いかけてきた「大きなクリニックを持つ」という夢。
それは本当に自分が望んでいたものではなかったということ。

歯科医師として成功している人たちが目指す姿を見て、自分もそうあるべきだと思っていたが、それは自分自身の夢というより「歯科医師の成功モデル」だったということ。

「それは、自分の夢ではなかったんです」

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自分の人生には自分の物差しを当てる

私たちは知らず知らずのうちに

こうあるべき。
こうなったら成功だ。

という物差しを自分に重ねます。

けれど、その物差しは本当に自分に当てていいものでしょうか。

私自身、幾度かの転身の中で自覚的に「物差しを変えた」自覚があるのでとても共感したところでした。

そんなことに気づいたのと入れ違うように、経営は持ち直しました。

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最近はK-POPダンスに挑戦し、フランス語を学び始め、患者さんに「教えてください」と頼んでしまう。

学びたいと思ったら、まずやってみる。
そして相手が患者さんであろうと関係ない。

その軽やかさと、いい意味での遠慮のなさが、なんとも風嵐さんらしいのです。

普通であることに安心するのではなく、自分らしい生き方を選ぶこと。

現在、風嵐さんは歯科医師として患者さんと向き合いながら、脳科学コーチとしても活動しています。
インタビューの最後に風嵐さんは、「人の可能性を信じたい」と語っていました。
その思いを、まずは自分が長年関わってきた歯科業界で実現したいのだといいます。

特に歯科衛生士をはじめとする医療スタッフの中には、高い能力や経験を持ちながらも、自分自身を過小評価している人が少なくありません。
「私なんて」という言葉の裏には、自ら可能性に蓋をしてしまうセルフイメージがあるのではないか。かつて自分自身も「こうあるべき」という成功モデルに縛られていたからこそ、その姿にもどかしさを感じるからだと。

歯科医師として現場に立ち続けながら、人の可能性を引き出すコーチとしても活動する。
その二つは別々の道ではなく、一つの思いからつながっています。

風嵐さんもスティーブ・ジョブズのスピーチにある「コネクティングドッツ」という言葉が好きだそうです。

そのときには意味がわからなかった経験が、後になって思いがけない形でつながることがある。

そんな風嵐さんは、まちがいなくパラレル活動家。

単に複数の仕事を持っているからではありません。
仕事でも、趣味でも、学びでも。

自分の中にある興味や可能性に素直になり、誰かが用意した成功モデルではなく、自分自身の夢を生きているからです。

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