余命1 カ月から大復活したコスプレイヤーがマルチに活躍するインフルエンサーになるまで

男装くん

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TikTokでのフォロワー数が約24万人のコスプレイヤー『男装くん』。インフルエンサーの傍らイベント運営支援システムの開発やSNS運用代行なども行い、精力的に活動を続けていますが、実は余命1カ月と宣告されたことからTikTokでの発信を始めています。現在の活動を始めるきっかけや今後の展望を伺いました。

白血病で余命1カ月…毎日病院からTikTokを投稿

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すべての始まりはコスプレイヤー『男装くん』として主にTikTokで動画を配信したことです。男装コスプレをしているので『男装くん』という名前にしたのですが、そこに至るまで本名から取ったり、ニックネーム見たいなものにしてみたりしたのですが、まったくバズりませんでした。アカウントをつくっては消してを繰り返していたら、どうせバズらないからとヤケになり、男装しているから『男装くん』でいいやと安易な気持ちで付けたらバズったんですよ(笑)。

現在の主な活動は5つあります。1つ目はイベント運営支援システム『イベつく!』の開発。2つ目は人気アニメ『ハイキュー!!』のコスプレイヤーを集めたバレーボールチームの運営。3つ目が子ども向け参加型エンターテイメントチームの運営。4つ目は運営しているコミュニティーのイベントの実施。5つ目が楽曲制作です。

このように多岐に渡る活動をするようになったきっかけは、3年前に白血病を患ったことです。その時、余命が1カ月ないかもしれないと宣告されました。宣告された時、長女は4歳でママにベッタリの子で、長男は10カ月とまだ小さく母乳を飲んでいる状態。そんな2人の子どもと急に離れ離れになり、夫にすべてを託さなくてはいけないのが辛かったですね。子どものことを考えると不安でパニック障害のような状態に陥ってしまい、何週間も眠れない日々が続きました。病院側からこのままの眠れない状況だと生命の危機だと言われたので、子どもたち以外のことで集中できる何かを見つける必要があったんです。まずは好きだったアニメやTikTokを観ることからスタート。その中で「そうだ、発信者になろう!」と思い、TikTokでの投稿を始めました。

余命1カ月なので、1カ月以内にフォロワーを1万人まで増やして発信力を持とうと決意。フォロワーが1万人になれば、そこでドナー登録の呼びかけをしたら実行してくれる人が増える可能性が高くなります。そうすれば、私が生きられる確率も上がるじゃないですか。最初の活動のモチベーションはドナー登録者を増やすことでした。

治療中は抗がん剤の影響で、髪の毛が抜けてしまうだけでなく、全身の皮膚がなくなってしまいます。もともとコスプレが好きだったのもありますが、コスプレをすればウィッグを被っているのも自然だし、ボロボロの皮膚もメイクで隠すことができますよね。病室の中に撮影ブースをつくって、そこで踊っている動画を毎日配信していました。看護師さんたちも「今日はバズりましたか?」と聞いてくるんです。こんな白血病患者はいないと言われました(笑)。食事が摂れない日が続いても、管を付けたまま踊ったり、歌ったりして撮影をしていましたね。毎日必ず2本動画を配信し続けて、3週間でフォロワーが1万人を超えたんです。そこで自分に発信力が付いてきたなと実感。現在は2年8カ月で23.6万人のフォロワーがいます。

人生でやりたいことは全部やろうと決めたことが活動の源

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入院中は育児と家事に追われていた生活から一変、膨大な時間ができました。一人で病室にいて考えるのは残された短い時間をどう過ごすかということです。その時にやりたかったのにやっていなかったことがたくさん出てきました。治療が成功したので今生きることができていますが、やりたかったことをやらずにもったいない時間を過ごしていたんだなと気づくことができたんです。生きられるとわかったので、やりたかったことをすべて始めたら活動の幅が広がりすぎてしまいましたね(笑)。

「やりたい!」「やろう!」と思ったら、行動していないと落ち着かないし、行動していない自分が嫌です。上京した時も、地元でバイトをして貯めた19万円だけ持って「芸能人になる!」と意気込んで東京に来ました。家賃が払えずに野宿したこともありましたね(笑)。昔から考えるよりも先に行動してしまう性格でしたが、余命宣告によってその行動力が加速したのだと思います。

ドナーの方が見つかったので私は退院することができました。そこから、コスプレイヤーの撮影会の主宰を依頼されるようになります。主宰は会場やカメラマンを手配して、参加メンバーを集めるんです。依頼が多くなってきたので、誰でもイベントができるように仕組み化しようと思ってできたのがイベント運営支援システム『イベつく!』です。2025年6月からこのシステムが本格稼働します。

コスプレイヤーになりたての人は会場やカメラマンを知りません。システム内で会場やスタッフの募集ができるようになっています。暗黙のルールもあったりするので、このシステム上でコスプレ初心者さんが気軽にイベントができるようにしたいなと思いました。このシステムはコスプレイベントに限らず他のイベントでも使えますし、そこにSNSを掛け合わせれば集客もシステムを活用してできるようになるんですよ。さらに、『イベつく!』が地域活性にもつながると思っています。いわゆる『シャッター商店街』になってしまっているところや所有者がわからない山林や廃墟をロケ地として都道府県もしくは市区町村に申請を出して撮影許可が降りていればいつでも撮影ができる場所になるんです。このシステムを通じて誰でもイベントを立ち上げて集客もしやすくなるし、我々の売り上げも上がります。

人気アニメ『ハイキュー!!』のコスプレイヤーでSNSのフォロワーが多い人たちを集めてバレーボールチームを作りました。SNSでの拡散力を持っているので、みんなが投稿すると一気に100万人くらいに拡散される拡散力が強みです。

このチームをつくった時に、企業のSNSの運用代行ができるなと思いました。SNSでの発信の広告効果が大きい時代なので、企業側もSNSで売上アップを図りたいと考えています。しかし、企業側はSNS運用のノウハウを持っていません。私たちはバズる動画や配信のやり方を知っています。そこで、私たちのバレーボールチームのメンバーを使ったSNSの運用の営業活動を始めたところです。その売上が上がってバレーボールチームに参加してくれたメンバーにギャランティを支払うことができるようになれば、ビジネスとして成り立つし、チームメンバーも企業側もWin-Winですよね。

『子ども向け参加型エンターテイメントチーム』の運営は私が最もやりたかったことです。子どもたちに寸劇を見せて、みんなで謎解きに挑戦してもらいます。子どもが通っている幼稚園に電話をしたら、年に1回の課外授業に組み込むことができるという話だったので、日本全国の幼稚園に連絡をしています。子どもの自主性や協調性を育むことができるのでこれは早く広げたいなと思っていますね。これは私のように閉鎖病棟に入院している子どもや高齢者にも楽しんでもらうことができるはずです。人と触れ合えない状況で入院していて、スマホの操作もおぼつかないような方々のために、私たちのエンタメチームが病院を訪問して遠くからでも見られるような環境がつくれたらいいなとも考えています。私は病院にとてもお世話になったので恩返しがしたいんですよね。寸劇の脚本や台本を書いたり、演出を担当したり、出演者を集めたりするのはすべて私がやります。

死より怖いものなんてないので行動あるのみ

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もうすぐリリースされる『イベつく!』は1年以内に登録者を1万人まで増やして、当たり前にみんなが使う環境をつくりたいです。

バレーチームについてはSNS運用代行の売上から発生する給料でメンバーが生活できるくらいまで企業とのタイアップを増やしていきたいと思っています。エンターテイメントチームは2025年中に幼稚園に訪問して実際にイベントを開催して認知を広げていくフェーズです。3〜4年かけて展開を広げていけたらと考えています。

もちろん同時に自分自身のTikTokアカウントのフォロワーも増やしていきながら、すべての活動がリンクして相乗効果で伸びていき、『イベつく!』に集約されると思います。みんなが「これが欲しかった」と思うシステムに成長させたいですね。

病院で先生から「1年後の生存率が70%です」と言われました。それがものすごく怖かったです。『死』が目の前に迫ってきた経験をしたので怖いものは何もありません。だから次々と挑戦できるのかもしれませんね。高卒で特殊能力があるわけでもないので、行動力しか強みがないんですよ。生きていて何かができることがうれしいのでどんどんやりたいことに突き進んで行きます。