聴覚障がい者の悩んでいる心に寄り添い人生を楽しんで欲しい

国友 映里

国友 映里

2023.09.15
アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_国友映里さん_プロフィール

聴覚障がい者コミュニティ『みみトモ。ランド』を運営している国友映里(くにともえり)さん。パティシエを目指し製菓専門学校を卒業。飲食店での5年間の勤務の中で、自身の両耳高度難聴で苦労した経験からカウンセラーの資格を取得。『みみトモ。ランド』を運営するに至った経緯と今後の展望を伺いました。

こんにちは!みみトモ。ランド創設メンバーの国友です。

私は先天性両耳高度感音性難聴を抱えており、現在はフリーランスとして働くために勉強中です。製菓専門学校を卒業したものの、パティシエとしての夢をかなえるのは難しく、就職活動にも苦労しました。結局は企業の飲食店で5年間の経験を積むこととなりました。

今回は、私の自己紹介と現在の活動に至るまでの体験について伝えたいと思います。

難聴によってかなわなかった夢

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_国友映里さん_パティシエ

私の夢はパティシエになることでした。お菓子を作ることが好きで、お菓子を通じて人々に笑顔と幸せを提供したいという願いを抱き、製菓専門学校で学びました。

しかし、難聴であることで学校の授業が聞こえないことによる弊害がありました。

私は、人とのコミュニケーションで口の形を読み取って言葉を理解する「読唇術」を活用しています。実習では先生がケーキを作りながら説明するため、口元が見えず読唇術が使えませんでした。先生の指示を的確に理解することが難しかったです。

指示が理解しにくい状況で、調理を大人数のグループで行う時、全員の口を読み取り、その場で的確に理解することが難しくとても苦労しました。

ですが、私は普通に話すことが出来てしまうため、聞き取りにくい状況であることは忘れられやすく、理解が得られないことも多かったです。

就職活動の壁と克服の努力

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_国友映里さん_転職活動

数社の面接に挑みましたが、難聴がネックとなり、合格を勝ち取ることができませんでした。また、障がい者雇用の選択肢も限られ、情報収集に苦労しました。

難聴者としての課題とは何か、私が直面した困難をご紹介します。

ある会社の面接結果では、私の代わりに電話対応してくれた専門学校の先生に先方の面接官から「難聴だから仕事でのコミュニケーションが難しいのではないか」とお話があったことを知りました。

私たち難聴者のコミュニケーション能力を疑問視するものであり、できないと決めつけられてしまったことに失望しました。

確かに聴覚障がい者の悩みとして、周囲の情報が入りにくくなり、少ない情報から判断をするため行動に移すことが難しいときや、間違ってしまうときがあります。

相手の言っていることが分からない、みんなが知っていることを自分だけ知らなかった、などと一人だけ置いてけぼりになってしまう状況が幾度となくありました。

そうならないように、分からないところをもう一度確認しても聞き取れず、何度も聞き返してしまい、理解したと思ったら聞き間違えで話がかみ合わないといったことがよくあります。

こういったやりとりが日常的に続くと相手には呆れられてしまい、次第に私とのコミュニケーションを避けるようになってしまいます。

このような経験から、「難聴者はコミュニケーションが難しい存在である」という誤解が生まれてしまうことに対して疑念を抱きました。しかし、この問題は聴覚障がい者が直面する課題に限った話ではありません。

聴覚に頼らずにコミュニケーションを円滑に行う方法や、視覚情報を活用する手段があれば、理解は進むのではないでしょうか。しかし、そのためにはコストや手間もかかります。そして、現実では、当事者を雇うことに踏み切ることの難しさも浮き彫りになります。

ですが、これはあくまで聴覚による情報収集に限った話です。そこに視覚的な情報があれば、健聴者と同等の理解をすることができます。仕事でのコミュニケーションでどのように視覚情報を増やしていくのか、またサービスを導入するとしてもコストと手間がどのくらいかかるのかという問題があることが予測できます。

この現実を直視し、解決策が見えない無力感に襲われたこともありました。もし当時、聴覚に頼らないコミュニケーション手段や支援サービスが存在していたら、もっと違う結果が得られたのではないかと思うことがあります。

その後、この経験を生かし、就職や転職活動を行う他の人々が同じような壁にぶつからないよう、オンラインでの仕事の機会を提供することを考え、フリーランスとしての活動を始めました。

難聴だからできないのではなく、難聴だからこそできる

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_国友映里さん_プロフィール

『みみトモ。ランド』の発足は、こうした課題に対する挑戦の一環です。このプラットフォームは、聴覚障がい者がオンライン上で活躍するための場を提供し、新しい可能性を切り拓いています。視覚情報を生かすことで、音による情報に頼らないコミュニケーションを実現し、雇用の新しい機会を開拓しています。

『みみトモ。ランド』は、聴覚障がい者が自身のスキルを最大限に発揮し、社会との連携を深めるための架け橋となることを目指しています。私自身の経験を通じて、障がいを乗り越え、可能性を信じて挑戦することの大切さを実感しています。

私は、「難聴だからできない」のではなく、「難聴だからこそできる」ことがあると信じています。多様性を尊重し、共に挑戦し、未来への一歩を踏み出すことの大切さを伝え、新たな可能性を切り拓いています。

このプラットフォームを通じて、視覚情報を活用し、言葉だけでないコミュニケーション方法を提供することと、コミュニケーションの壁を乗り越える手助けを行っています。そして、これは聴覚障がい者が、その個性と能力を生かし、自分の人生を楽しむための一歩となるようにしたいと思っています。

次回のこちらのコラム配信では、創設メンバーの耳鳴りこさんについて自己紹介を配信していきたいと思います。

みみトモ。ランド公式ホームページ:
https://mimitomoland2023.my.canva.site

みみトモ。ランド公式X(旧 Twitter):@ERI77428
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