経営者対談

株式会社クリーンライフ 代表取締役
大野 宗 × 住谷知厚

今回の対談講演会では、飲食店に特化したゴキブリ駆除事業を展開し、完全駆除率99.5%、契約更新率97.9%という驚異的な実績を誇る株式会社グリーンライフ代表取締役の大野宗(おおの そう)さんをお迎えしました。

在学中にプロのレーシングドライバーを目指して鈴鹿サーキットに通い、その資金集めのために行った桃の露店販売で商売の原体験を得た大野さん。会社員生活を経て36歳で起業し、独自の「完全駆除」というビジネスモデルで業界の常識を覆しました。現在は事業のみならず、60代でレース活動を再開、無人島やホテルの購入、YouTubeでの「ゴキブリ博士」としての発信など、多岐にわたる挑戦を続けています。

「営業しなくても仕事がやってくる」圧倒的な強さの秘密、社員のモチベーションを引き出す独自の組織づくり、そして根底に流れる「社会や人の役に立つ」という経営哲学について、たっぷりとお話を伺いました。

営業マンゼロで2,000店舗へ拡大した秘密

waccel-OhnoSoh2.jpg

住谷:大野さんは学生時代の桃の露店販売や脱サラでの起業を経て、営業マンゼロで全国2,000店舗以上へ拡大する圧倒的なビジネスモデルを築かれましたが、その原点と他社には真似できない強みの秘密をお聞かせいただけますか?

大野:私が20歳のとき、本気でプロのレーシングドライバーを目指していたんです。男の子なら誰しも人と競争して勝ちたい、華やかなレーシングカーに乗って世界で戦いたいという憧れがありますよね。ただ、F1レーサーになるような人たちは5歳くらいからカートに乗って親のサポートを受けて育つのが普通ですが、私の親はモータースポーツに全く興味がありませんでした。20歳で何も知らない状態から始めたのですが、いくら情熱があっても実績のない若者に「うちのマシンに乗ってくれ」なんて声がかかるわけがありません。自分でマシンを用意し、練習費用を稼ぐ必要がありました。

商売の経験も資金もゼロからのスタートでしたが、普通のアルバイトの時給では到底追いつかないわけです。当時はレーシングドライバーとして有名な片山右京さんが走り出しの頃で、同じカテゴリーのマシンに乗っても遥かに引き離される。資金がなくて練習できない悔しさもあり、「何か自分で商売をしてまとまったお金を作ろう」と考えました。そこで目をつけたのが、毎朝山梨から大阪へ運ばれてくる桃の仕入れでした。大学2年生の夏休みに、軽トラを調達して桃の露店販売を始めたのが私の商売の原点です。

最初は簡単に売れるわけではありませんでした。どうすれば人が立ち止まり、買ってくれるのかを必死で工夫しましたね。白い板にピンクのペンで「桃」「産地直送」「8個500円より」と大きく書き、駅前やスーパーの近くに店を広げるんです。桃の甘い香りが漂うと、通りがかりの人が「美味しそうね」と寄ってきます。

ここで重要なのが見せ方と商売の駆け引きです。桃を仕入れると大きいサイズと小さいサイズが箱に入っているのですが、小さい箱の中からさらに青くて小ぶりなものを8個選び、ヘタの側を上に向けて並べておくんです。桃ってお尻を向けると美味しそうに見えますが、ヘタ側を向けるとあまり魅力的には見えないんですよ。そして、あらかじめ熟していて絶対に美味しい大ぶりの桃をいくつか用意しておき、お客さんが来たらその場で短冊状にカットして「まあ食べてみて」と渡すわけです。食べると「すごく美味しい!これちょうだい」となりますよね。そこで「今食べたのはこっちの大きいやつなんです。8個500円のはこの小さいやつで、種類も少し違うからあまりおすすめしないよ」と伝える。そうすると「じゃあ美味しい方の大きいのを箱でちょうだい」となって、単価が上がっていくんです。

もちろん、露店ですからトラブルも日常茶飯事でしたよ。厳しい顔をした怖い人たちが「お前、誰に断って店出しとんじゃ」とすごんでくることもありました。そういうときはすぐに「すみません!」と頭を下げて挨拶に行き、人間関係を作ってしまう。度胸が据わりましたね。警察からも指導を受けたりして大変でしたが、必死で工夫しながら商売をする楽しさを身体で覚えました。当時の初任給が12万7千円くらいだった時代に、桃の露店販売では1日で5万円くらいの粗利が出たんです。3日でサラリーマンの月給分が稼げる世界を経験し、「商売ってこんなに面白いんだ」と強烈に実感しました。

その後、レース費用には到底足りず一度は諦めて会社員になり、13年間サラリーマンとして勤めました。しかし、30代半ばに差し掛かった頃、「やっぱり自分で商売がしたい。あの桃売りのときの楽しさをもう一度味わいたい」という思いが湧き上がってきたんです。週末になると本屋に通い詰め、ビジネス書を読み漁る中で「クリーム状の薬品を隙間に塗ることで飲食店からゴキブリを完全ゼロにする手法」という記事を目にしました。

五反田にあるその会社に通い詰め、現場である銀座の某デパートの飲食店フロアに連れて行ってもらったときのことです。夜10時の閉店後、店長さんたちが走ってやってきて、深く頭を下げて「本当に一匹もいなくなりました!ありがとうございます!」と感謝していたんです。その光景を見たとき、全身に鳥肌が立ちました。ゴキブリの被害に悩む方々からこれほどまでに深く感謝され、心から喜ばれる仕事があるのかと。私自身、実はゴキブリが大の苦手だったのですが、「これこそが自分の人生を懸けて取り組むべき仕事だ」と確信しました。これが1997年、私が株式会社グリーンライフを創業した際の原点であり、今も変わらない弊社の創業精神です。

起業後は飛び込み営業や電話でのテレアポが苦手だったため、「仕組みで仕事を取ろう」と考え、ハガキを使ったダイレクトメールを始めました。ただ無差別に送るのではなく、衛生面に高い意識を持っている飲食店だけに届けるため、本屋でグルメガイドブックを買い集め、そこに掲載されている人気店へハガキを出したんです。裏面にはビフォー・アフターの衝撃的な現場写真を載せました。大阪で300通出したら、すぐに9件の問い合わせが返ってきました。

そうして獲得した最初のお客様を何があっても絶対に逃がさないと決め、徹底的に施工してゴキブリを完全駆除しました。当社ではこれを「木の年輪経営」と呼んでいますが、既存のお客様を大切にして毎年契約を更新していただくことで、売上を絶対減らさない経営を目指したのです。また、当時の駆除業界の報告書といえば写真数枚に手書きの一言程度だったのですが、当社はデジカメとWordをいち早く導入し、写真付きの改善提案レポートを作成して提出しました。お客様は「ここまでやってくれるのか!」と感動し、他店や知人オーナーを次々と紹介してくださったのです。チェーン展開されている企業様であれば全店施工の依頼に広がり、トリドール様やワタミ様、ギフトホールディングス様といった大手チェーン様との取引も拡大し、創業以来29年間一度も営業マンを置くことなく全国2,000店舗以上にご契約いただくまでに至りました。

他社との圧倒的な差を生み出している理由は、業界の常識を覆したサービス設計にあります。日本の害虫駆除業者約5,000社の中で生き残るため、私は「完全駆除率重視のオンリーワン企業」を目指しました。一般的な業者は毎月1回訪問して薬剤をサッと撒くだけで、完全ゼロにしなくても毎月お金が入る仕組みになっています。それに対し、当社は施工を初回と6カ月目の「年に2回」のみとし、その代わり「1年間の完全駆除保証」をつけました。この仕組みにすると、完全駆除できなければ何度でも追加料金なしで駆けつけなければならず、会社の利益が吹き飛んでしまいます。だからこそ、1回目の施工で5時間も6時間もかけて、冷蔵庫を分解し、すべての隙間に薬剤を注入して巣を根絶やしにする強い動機が生まれるのです。さらに2023年8月には、業界初となる「1年以内に完全駆除できなければ全額返金する」という返金保証制度もスタートさせました。実際、2,000店舗以上施工して返金に至ったのは年間でわずか9件です。値段を下げて勝負するのではなく、圧倒的な価値と保証を提供することで高単価・高利益率を実現する。これが当社の尖ったビジネスモデルです。

社員のモチベーションこそが企業の生命線――能力給に頼らない「仲間と誇り」を育む組織づくり

waccel-OhnoSoh3.png

住谷:完全駆除率99.5%という圧倒的な実績を現場で支える社員の皆様のマインドやモチベーションは、どのように育まれているのでしょうか?

大野:技術ノウハウそのものは決して複雑なものではありません。本当に難しいのは、現場で5時間も6時間も妥協せずに施工し続ける「社員のマインド」を維持・向上させることです。もしノウハウとマインドのどちらか一つしか選べないと言われたら、私は迷わずマインドを選びます。現場に行く社員のマインドが高く「何が何でもこのお店のゴキブリをゼロにして喜んでいただきたい」という強い想いがあれば、技術は後から勝手についてくるからです。どれほど優れた技術マニュアルがあっても、それを現場で実行する人間の情熱が伴わなければ意味をなしません。

多くの経営者は、歩合給や能力給にしてお金で釣るという方法を選びがちですが、私は能力給には絶対反対です。売上に応じた能力給にしてしまうと、社員同士がライバルになり、ノウハウの囲い込みや足の引っ張り合いが始まります。「今だけ、自分だけ、お金だけ」という個人主義に陥り、チームワークが崩壊するのです。日本で成果主義が一般化してからの数十年を見ても、会社への愛着や社内の絆が失われていった側面は否定できません。人が会社を辞める一番の理由は給料の安さではなく「自分を支えてくれる仲間がいない人間関係」だからこそ、当社では能力給に頼らず、3つの要素を徹底しています。

1つ目は「自分の会社を周りに自慢できること」です。当社の大阪本社ビルは劇的ビフォーアフターというテレビ番組のビフォーアフター大賞2011に輝いた関谷昌人先生に設計を依頼した完全木造の建築で、「JCD Design Award2016 ベスト100(一般社団法人日本商環境デザイン協会)」に選出されました。吹き抜けが多く、社員同士がどこにいても「お疲れ様!」と声を掛け合える空間です。有効面積を削ってでもコミュニケーションを優先させた設計は、社員が一体感を持てる居場所になっています。また、全額会社負担での海外社員旅行や、決算ボーナスで7桁の支給を目指すなど「この会社で働いていて良かった」と誇りを持てる環境を整えています。

2つ目は「自分の仕事に誇りとやりがいを持てること」です。当社の害虫駆除は、単なる作業ではなく高度な技術でお客様の悩みを根本から解決する仕事です。店長様から「おかげで安心してお客さんを迎えられる」と涙を流して感謝される経験を積むことで、言葉だけでなく実感として「人の役に立っている」という強い誇りが生まれます。

3つ目は「最高の仲間意識を持つこと」です。手柄を一人占めするのではなく、誰かが困っていたら現場に駆けつけて助け合い、チーム全員で目標に向かって進む文化を築いています。成果給で競わせないからこそ、社内にノウハウが自然と共有され、組織全体の実力が底上げされるのです。現在、当社には手を抜くような社員は1人もいません。私がレースに出場する際も、社員たちが自主的に「グリーンライフ」や「ゴキブリ博士」のノボリを持ってサーキットまで応援に駆けつけてくれます。経営者の最大の仕事は、指示を出すことではなく、社員のモチベーションを最高状態に保つ環境と空気感を作り続けることなのです。

レース復活、無人島購入、そして未来へ!「人の役に立つ」情熱で挑み続ける今後のビジョン

waccel-OhnoSoh4.jpg

住谷:大野さんの今後のビジョンや夢、そして挑戦を続けるにあたって大切にされている想いについて最後にお聞かせください。

大野:当社では現在、10年後の上場という大きな目標を掲げて全社で取り組んでいます。単なる会社の規模拡大ではなく、社会的な信用を高め、社員とその家族により大きな安心と夢を提供するための挑戦です。全国から引き合いが急増している今、決して夢物語ではなく現実に手の届く目標として一歩一歩進んでいます。

また、個人のブランディングや地域貢献としてもさまざまな挑戦を続けています。60歳を過ぎてから学生時代の夢だったレーシングドライバー活動を再開し、2024年にはMEC耐久シリーズでチャンピオンを獲得しました。エントリー名を「YouTube『ゴキブリ博士』VITA」とすることで、レースの華やかな世界と当社の事業を掛け合わせ、強力なブランディングにもつなげています。メディアやサーキットで話題になることで、会社の知名度や社員の誇りにも直結しているのです。

さらに、私のルーツである長崎県の壱岐島での地方創生プロジェクトとして、古い旅館を買い取ったホテル事業や鯛塩ラーメンの店舗開発、そして購入した無人島「にじり島」でのレジャー事業なども進めています。かつては建築業や造園業などにも手を広げましたが、「一番になれる強み(尖り)」を作れなかったため、7年前に一切撤退してゴキブリ駆除一本に集中させました。当時は売上が一時半減しましたが、得意分野に集中したことで利益は何倍にも膨らみ、強みに絞り込むことの大切さを痛感しました。

私は人生の最期を迎えるとき、稼いだ金額の多寡ではなく「自分は21世紀の日本に生まれて、これだけ世の中や人の役に立ち、多くの人に感謝された」と思いたいです。どれほど資産を築いたとしても、人を騙したり不誠実な商売をしていては自分の人生に胸を張れません。だからこそ、自分の仕事を通じて社会に貢献し、お客様に喜ばれる商売を愚直に追求し続けています。

「やりたい仕事が見つからない」と悩む若い方も多いですが、大切なのは「やりたいか」ではなく「やりがいのある仕事かどうか」です。自分が関わることでお客様が笑顔になり、困っている人が救われる実感が最高の原動力になります。当社が提供しているのは単なる駆除ではなく、オーナー様が安心して商売に専念できる環境です。これからもワクセルさんのような素晴らしいコミュニティとともに「人の役に立つ」という創業精神を胸に、社員という最高の仲間たちと共に突き抜けた挑戦を続けていきます。




トークセッション一覧にもどる