
株式会社thehideaway
森下 直哉 × 住谷知厚
森下直哉(もりしたなおや)さんは、飲食・アパレル・美容など多角的に事業を展開する実業家でありながら、SNSで30万人超のフォロワーを持つインフルエンサーとしても注目を集めています。もともと表舞台に立つタイプではなかったという森下さんが、なぜ今“発信する側”に立ち、多くの人を惹きつけているのか。その背景には、「人と違うことを恐れない」「嫌われることを恐れない」という明確な美学がありました。
今回のトークセッションでは、ブランディングにおける戦略思考や、飲食店づくりに込めたこだわり、タトゥーやファッションなどを通じて表現する“セルフプロデュース”の哲学について語っていただきました。他人の評価に惑わされず、自分の価値をどう高めていくかという問いに、森下さんならではの視点でお答えいただきました。
飲食業から始まった挑戦と逆転劇

住谷:まずは、東京に出られたきっかけを教えていただけますか?
森下:正直な話、モテたかったんです(笑)。それだけの理由で、当時同棲してた彼女に振られたのをきっかけに、「見返したい」っていう想いで東京に出ました。そこからエアコンの現場仕事をしてた時、向かいのカフェで涼しげに女の子と話してるウェイターの方を見て「これだ」と思って、次の日仕事を辞めて飲食に飛び込みました。中二病だったんですよ。「今の自分、かっこいいな」って思ってて。不動産に騙されて埼玉に住むことになったり、職場が表参道で毎日1時間以上通ってたり。でも、その苦労すら自分の中では「絵になる」と思ってました。
10年ほどいろいろな店舗を出す会社で働く中で、シカゴのデザートをヒントに現地へ行って、そのメニューを自腹で導入したら売上が月400万から1300万に。けれど、給料は3万しか上がらなかった(笑)。30歳までに自分の店を持ちたいと思ってたので、じゃあ自分でやろうと決めました。
丸太と倉庫と、逆張りで生まれたレストラン

住谷:お店づくりもかなりユニークですよね。もともと滋賀県でお店を出そうと思われていたんですか?
森下:実は店も決まってないのに、受付用に巨大な丸太を買ったんですよ。直径1メートル、長さ4メートル。重さ3トン。それを置くには倉庫しかないってなって、結果150坪の倉庫でDIYレストランを始めたんです。ホームセンターの人に毎日聞きに行って、壁の作り方も1から教えてもらいました。資材は3ヶ月半かけて全部自分たちで揃えて、作業も全部自分たち。完全にゼロからのDIYです。地元の方全員に反対されましたね。「駅から遠いし、隠れ家では無理だ」と。
でも逆に、それだけ言われたら「これ成功させたら絶対面白い」って燃えました。失敗しても日本なら死なないし、1回はチャレンジできる国だから。怖くないです。その後、SNSでの発信もスタートして、DIYの様子を何気なくSNSに上げたら、思いのほか反応がよくて。それがきっかけで、SNSは“共創の場”にもなるんだと気付きました。発信することで、見ず知らずの人が「手伝わせてください」と来てくれたり、業者の方が「こうしたらいいよ」とアドバイスしてくれたり、SNSの可能性を肌で感じました。
SNSと“戦闘力”──ビジネスタトゥーと記憶に残るギャップ戦略

住谷:SNSで30万人を超えるフォロワーを持つのは、本当にすごいです。他にも工夫されていることはありますか?
森下:まず、自分をよく知ることですね。僕、顔は昔からそこそこいいって自覚はあったんですけど、イケメンは世の中に山ほどいるじゃないですか。だから、それだけじゃ勝てないと思っていたんです。そこで考えたのが「掛け算」です。たとえばキムタクは、顔がかっこいいだけじゃなくて、SMAPで知名度があって、ファッションも一流で、演技も上手い。そういう要素を全部かけていくと、戦闘力が跳ね上がるんです。
僕は「顔×背が高い×ちょっと悪そう×タトゥー×複数の会社経営」っていう感じで、自分の戦闘力を作っていきました。タトゥーは特にSNS上で止まらせる力がある。「あれ?何者だろう」って思わせる効果が抜群なんです。まさにビジネスタトゥーです。見た目のインパクトで人を止めて、そこから“ギャップ”を感じさせる。たとえばタトゥーががっつり入ってるのに、SNSで真面目に経営の話をしてると、「え、意外」ってなる。そのギャップが記憶に残るんです。
SNSって「自転車を3秒で起こすゲーム」だと思っています。100人中、誰が一番印象に残るかを競ってるようなもの。喋らずに自転車を起こすだけで一番を取らないといけない。その中で勝つには、パッと見で惹きつける何かが必要なんです。僕は「ジャイアンしずかちゃん理論」って呼んでるんですけど(笑)、普段悪そうなやつが優しくすると印象が倍増する。だから、最初から“いい人”を目指すより、ちょっと“怖そう”“変わってる”と思われた方が、後からの行動が響くんです。
住谷:なるほど。それでいて、サービスの一つひとつに意味づけをしていると。
森下:はい。水を渡すだけでも、僕が渡すと「ありがとう」ってなるように、自分の戦闘力を上げておく。100円の水でも、戦闘力の高い人からもらうと1万円の価値が生まれる。だから常に「どう見られるか」を考えています。僕にとってのブランディングは、「100円のものを1万に見せる力」です。どんな小さな価値も、誰がどう届けるかで全く違う印象になる。それって、すごく“コスパが良い”んですよ。たった100円で1万円分の満足を届けられるなら、それに勝る効率はないと思っています。だから僕は、「与えるコスト」より「受け取る印象」の方が圧倒的に大きくなるように、常に設計してます。ちょっとした気遣いや一言でも、それを発信する人の“戦闘力”次第で価値が跳ね上がる。そこをどう演出するかがブランディングの本質だと思います。結局、記憶に残るかどうかって「想像を超えてくるかどうか」なんですよ。常識に収まらず、「なんで?」と思わせること。そこに“楽しさ”や“意外性”があれば、自然と人の心に残る。だからこそ、僕は今日も、どうやったらコスパよく心に刺さるかを考え続けてます。
「普通の人になりたくない」から始まる思考の習慣

住谷:ここまでのお話を聞いていると、森下さんの行動やブランディングの根底には、「普通になりたくない」という強い想いがあるように感じます。
森下:まさにそれが原点かもしれません。僕、小さい頃から“普通”ってなんか退屈だなと思ってて。周りが右へ倣えで動いてる中で、「自分もそっちでいいの?」と疑問を持つ子どもだったんです。「みんながやってるから正しい」っていうのが、僕はどうしても信じられなかった。むしろ「全員が同じ方向を見てる」ってことは、逆にその方向に穴があるんじゃないか、って思うタイプです。だから、何か新しいことを始めるときも、「それって他の人がやってないか?」「本当にそれが最短距離か?」っていうのは常に考えてます。「考える習慣」はすごく重要です。僕はもう起きてから寝るまで、ずっと何かを考えてます。ビジネスのこと、人の行動、SNSの動き、自分の見え方。全部です。
よく「行動力ありますね」って言われるけど、その前に“思考量”があるんですよ。何も考えずに動くのは、ただの反射ですから。大事なのは「自分で選んだ一歩を踏み出すこと」。そのためには思考が必要だし、考え抜いた結果なら、失敗しても後悔しないんです。それは、ある意味“信頼”を築く基盤でもあります。ブレずに発信し続けられるのも、考え抜いた結果だからこそ。流行りに流されないで、自分の軸を持っている人って、それだけで信頼されるんですよ。「この人、ちゃんと考えてるな」って。
僕が大事にしてるのは“嫌われる勇気”です。SNSでもリアルでも、全員に好かれるなんて無理なんですよ。だったら自分の芯を持って、自分を好きでいてくれる人を大切にする方が健全です。世の中では「いい人」って言われることが正解のように思われがちですけど、実際に人を動かしたり影響を与えるのは、どこか尖っていたりユニークな人間だと思ってます。だから僕は“普通じゃない”人生を肯定したいし、自分が作ったこの空間や考え方を、もっといろんな場所に広げたいですね。若い人に「普通じゃなくていい」と伝えたい。自分の人生は自分でデザインできるってことを、体現し続けていきたいです。
住谷:本日は貴重なお話ありがとうございました。
■森下 直哉さん コラボレーターページ instagram THE HIDEAWAY DESIGN
本記事は、ワクセル会議にて公開収録した森下さんのインタビューの内容です。 ワクセルのCollaboratorの方は、公開収録への参加が可能で、ご自身の事業へのヒントが得られる絶好の機会となりました。 ワクセルのCollaboratorの詳細は下記よりご確認ください。
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