経営者対談

野球解説者・野球評論家
桧山進次郎×ワクセル



元プロ野球選手で現在は野球解説者・野球評論家の桧山進次郎(ひやましんじろう)さんにインタビューさせていただきました。

桧山さんは1991年に阪神タイガースにドラフト4位で入団、2003年にはチームを優勝に導き、優秀選手賞を獲得されました。2008年からは代打として活躍し「代打の神様」と呼ばれるようになりました。

2013年に引退されてからは野球解説者、評論家、YouTuberとしても活動されています。今回は野球選手時代や引退後の活動について、話を伺いました。



インタビュアーはフリーアナウンサーの川口満里奈(かわぐちまりな)さん、ワクセル総合プロデューサーの住谷知厚(すみたにともひろ)です。最後までお楽しみください。

低迷している阪神タイガースを強くしようと意気込んで入団

住谷:野球を始めたきっかけをお聞かせください。

桧山:父親と2つ上の兄が野球をやっていたので、物心ついたころには野球をやっていました。家の前に公園があり、そこで野球の練習をしていました。体を動かすことが好きだったので、野球ができないときは友達と鬼ごっこやかくれんぼをしていました。

住谷:昔から応援していた阪神タイガースに入団していかがでしたか?

桧山:大学時代は比較的活躍できていたため、プライドも強く「ドラフト3位までに入ったら入団する」と宣言してドラフトに臨みました。しかし結果は阪神にドラフト4位で指名され、正直残念な気持ちでした。

さらに当時の阪神が低迷期であったこともあり、入団するかを悩んでいました。その時に、父から「昔から阪神ファンだったじゃないか。自分がチームを強くしたらええやろ!」と言われ、入団を決断しました。

阪神タイガースに入団してからは、大学野球とのレベルの違いを実感しましたね。トレーニングルームで10歳以上離れた真弓明信(まゆみあきのぶ)選手と一緒になり、自分よりはるかに重いウェイトでトレーニングをされているのを知ったときは衝撃でしたね。

また、新庄剛選手の肩の強さにも驚きました。プロ野球選手でも新庄選手以上に肩が強い人をみたことがありません。加えて足がとても速く、しかもどんどん走りが加速するタイプなので2塁3塁へと走り抜ける姿は迫力がありました。

川口:新庄選手との印象的なエピソードはありますか?

桧山:吉田義男(よしだよしお)監督のときに、新庄選手と3,4番を打っていた時期がありました。お互い感情を表に出さないタイプだったのですが、ある日吉田監督に呼び出され「打てなくて悔しくないのか!もっと感情を表に出せ!野球は心だ!」と怒られました。

このころ僕らはプロ野球にも慣れてきて、なんとなく毎日を過ごしているような感覚もありました。しかし、監督に怒られたことがきっかけで感情を表に出すようになりました。これはとても重要なターニングポイントでした。

上手くいかない時期も「人生の勉強」だとポジティブにとらえる

住谷:阪神タイガースが低迷していた時期、チームはどのような状態でしたか?

桧山:実はわたしが入団した年、阪神タイガースは優勝しているのです。しかし、その後攻撃力不足により低迷してしまいました。選手は他球団との実力差を肌で感じているので、今年は優勝できないなというのがわかります。

優勝できなければ順位はあまり意味がない、そうなるとそれぞれが個人の成績を残そうとして、チームとしてのまとまりがなくなっていました。

川口:チームがバラバラになっていると精神的につらいと思いますが、メンタルのケアはどうされていましたか?

桧山:阪神タイガースではレギュラーとして試合に出られていたのですが、そのことに安心しないように他球団を意識するようにしていました。自分がもし他球団にいたとしたら、レギュラーはとれないと感じていたので、危機感をもって練習をしていました。

野村監督時代に自分の成績が落ち込んでいた年があり、戦力外通告されるかもと思っていた時期もありました。他球団でもレギュラーにはなれる実力はないと感じて、どうしようととても悩みました。

「もう自分はおわった。でもまだ頑張りたい。」という葛藤がありました。野球をやめることも考え、いろいろ考えた結果「自分は野球を通して人生を勉強させてもらっているんだ」と思うようになりました。

このように考えられるようになり、とても楽になりました。自分のことも好きになり、一生懸命野球に取り組めるようになりました。もし一生懸命やってダメだったとしても、後悔なく第2の人生にチャレンジできるなとも思っていました。

住谷:野球でやり残したことはありますか?

桧山さん)ないですね。自分の中では精一杯やってきたので「もっと練習しておけばよかった」などの心残りはないです。しいて言えば、もっと早く「野球を通じて人生勉強させてもらっている」ということに気づくことができたら、もっといい成績が出せたかなとは思います。

若手選手を指導するときも、「実力はあるし、はやく気づけたらいいな」と思うことはあります。ただ自分自身も30歳になってから気づいたので、悩んで自分で気づくことが必要かなと思います。

住谷:野球に限らず、20代の方は頑固になってしまうことも多い気がしますが、いかがでしょう?

桧山:たしかに多いと思います。ただ、頑固なことが悪いわけではなく、芯があることはとても大切です。人の意見に振り回されるのではなく、自分の芯をもったままいろいろな意見も取り入れていくことが重要ではないでしょうか。

若者の勢いはとても大事です。パワーがあるので、それを活かしながらいろいろな意見を取り入れて、同時にブレーキも使えるようになるといいです。また、最短距離を進むだけではなく、回り道や寄り道することも大切です。

準備していれば失敗しても学べることがある

住谷:代打を通じて学んだことはありますか?

桧山さん)監督の意向で、若手に出場機会を与えて成長させようとしている時期でした。もちろんその気持ちはわかりますが、阪神タイガースの成績も奮わず、自分の出場機会が減ったことに対してストレスはありました。

ただ、レギュラーの選手とはまったく違い、一歩引いたところから試合を見ていて、いざという時に出場するというのはとてもいい経験でした。レギュラー選手とはまったく違う世界なので楽しかったですし、同じホームランでも代打として打ったときの喜びは格別でした。

川口:「代打の神様」と呼ばれていましたが、代打として何を大切にされていましたか?

桧山:代打に限らず、代走や控えのピッチャーは短い出場時間のために入念に準備をしています。「こういう状況になったら出番だからな」と言われているので、そこに向けてコンディションやテンションを上げていきます。

ただ、急に状況が変わって出番がなくなることもあります。テンションを上げた状態でネクストバッターサークルに入ったにも関わらず、出番がなくなると精神的にかなりつらいです。

そのため、テンションは一気に上げるのではなく徐々に上げ、バッターボックスに入るタイミングで最高になるようにしていました。

代打を通して、準備の大切さを実感させてもらいました。もちろん準備していてもうまくいかないことはありますが、準備しないで失敗するほうが嫌でした。また、準備して失敗した場合は、その準備が次のチャンスに活きてくるので無駄にはなりません。

いろいろな挑戦が経験となり、ほかのことにも役立つ

川口:現在は野球以外にもいろいろなことに挑戦されていますが、経験を増やすことにどのような意義を感じていらっしゃいますか?

桧山:いろいろなことに挑戦することで、どうやったらできるかなと工夫をこらしたり考えたりします。その経験がまた別のことに役立つことがあります。

例えば釣りの場合、魚との駆け引きを学ぶことができます。人とのコミュニケーションも同様に駆け引きがあるので、釣りで学んだことがとても役立ちます。また、ライブに参加したり、テレビに出演したりするときは「どうやって盛り上げているんだろう?」と考え、盛り上げ方を宴会の場などに活かしています。

ファン感謝デーで初めてのモノマネを提案したのはわたしでした。当時、的場寛一(まとばかんいち)選手が能力はあるのに怪我で思うように活躍できておらず、モノマネに挑戦してもらったらとても評判がよく、彼の知名度も上がりました。

川口:とても気遣い上手だなと感じるのですが、ほかにも気をつけていることはありますか?

桧山:人に何かを伝えるときは、相手の状態をよく確認するようにしています。アドバイスをしていいタイミングなのか、もう少し悩ませておいて自分で気づいた方がいいタイミングなのかを見極めます。また、怒る場合でも本気で怒る場合もあれば、怒ってるフリをすることもあります。

うまくいってないときこそ、プラスの意味づけをしていく

住谷:これからやってみたいことはありますか?

桧山:今までは団体スポーツで頑張ってきたので、今度は個人の力を試せる ”商売” をやってみたいですね。そのために今はたくさんの人と会ったり、チャレンジをしています。何かやりたいものを見つけたいなと思っています。

川口:素敵ですね。現役を引退されてもなおチャレンジし続けたい、というモチベーションの源は何ですか?

桧山:チャレンジしている自分が好きですし、仮にチャレンジが失敗に終わったとしても自分磨きになって成長できるからです。そして、子供や後輩、友だちが悩んでいるときに「似たような経験したことあるよ」と言って学んだことををシェアできたらいいなと思います。人が一番の宝物ですからね。

川口:人が大好きなんですね。

桧山:そうですね。騙されたこともありますが、それも今ではポジティブに解釈して、そういう経験があったからこそ今があると思っています。

川口:前向きに変換できるところが素敵ですよね。

桧山:うまくいっているときは誰でもポジティブに考えられるので、うまくいっていないときにどうポジティブに変換するかが重要ですよね。

車を擦ってしまったときに「なんだよー」とイライラするか、「擦ったということは運転が雑になっているに違いない。安全運転を心がけよう」と思うかで大きく違います。自分にとってプラスになるように意味づけするように意識しています。

自分の芯をもちながらチャレンジする

住谷:20~30代の若者に向けて最後に一言お願いします。

桧山:20~30代になると、ある程度自分の考えがかたまりつつある時期だと思います。その時期に、いろいろな人の意見に耳を傾けて、新たな自分を発見できるとさらに成長できます。

今までと違った自分を見つけ出すには、チャレンジが重要です。そして、チャレンジすることに対して正直に向き合ってください。向き合ったときにどうしたらいいか迷うこともありますが、そのときはもう一人の自分を置いて客観的に見るようにしてください。




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